4
息を吸って気をとりなおし、私はカラスに言葉をかけた。
「ねえ、カラスさん。ていうかさ、なにが
カラスは、少しだけ目をほそめると顔をさげた。
つられて私も顔をさげる。
そこにはクルミが転がっていた。
クルミを見つめているらしい……かと思うと、カラスはすぐにまた、私に視線を戻した。そして、ひとつまばたきをしてから、口を
「おまえの『
「テツガク? ……テツガクって、あのテツガク? テツガクってあれでしょ? あのほら、あの……えーっと、……あれがあれするやつ……」
「そうだ」
「……えぇ」
「
カラスはなんか知らないけど、『言ってやったぜ』みたいな表情をしている。
いや、カラスの表情なんてあんまりよくわかんないけどね……。それでも注意して見ていると、なんとなくわかってくるような気がするから不思議。思い込みって大事かもね。
「……つまり……クルミが食べたいの?」と私は言った。
カラスは答えない。
「テツガクってわけね……よくわかんないけど……」
……ま、いいよ……。クルミの
……そんなんで帰してくれるなら安いもんだよ。お安い。
……このカラスもお腹がへってるのかもね。
私は右足をおおきくあげて、クルミに
右足をあげすぎたのか、一瞬バランスを
「――ぅわっ――!? いったあー! ……っ……!」
痛さがすごくて立っていられなくて、私は地面に倒れこんだ。
「……つつつ……痛たたた……痛い……いてて……このクルミ、なにさまだよ……痛い、よ……うぅ……」
……ぺらぺらの
ていうかクルミの
そこらに大きな石でも転がってないかなって、体を起こしてあたりを見渡すけど、それらしいのはなくて、あるのは石ころばかりだった。
じゃあどうすればいいんだよ、と頭を
チューリップは、木でできた三段の段々にきれいにならんでいて、なんだか
私はそっとその場に立ちあがり、まだ痛い右足をひきずりながら、ゾンビみたいな歩き方でチューリップに近づいた。
チューリップはいろんな色のものがあって、同じ色のものでも
チューリップたちはどれも
赤、オレンジ、ピンク、……
チューリップを
……これはいけないこと……というか
たぶん、こういうのを
「はっ」と気がついたときにはもう、私は
『……いまの私は、熱中症でおかしくなってるだけ……そうだよ……』って頭のなかで
この
私はクルミの前で
「……なんかごめんね。……こんなことに巻きこんで……、……でも、すぐにみんなのところに帰してあげるからね」
私はそうチューリップに話しかけると、すぐに口をぴったり閉じて、鼻から、
そして、
「ああ!! ……そんな……ウ、ウソでしょ……!」
……
…………チューリップは、そのすぐそばで……ぐったりと横たわっていた……。
「……ご……ご、ごめんっ……ごめんね……」
チューリップの
「……どうしよぅ……」
…………ホントにどうしよう……とんでもないことしちゃった……、……ぜんぜん知らない人の家のチューリップを……こんなにしちゃうなんて……、……終わった…………私の人生、おしまいだっ……。
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