第14話名もなき亡霊の生まれた日

「待ってくれ!ソウタいや、ボス!」

振り返るボスの顔は、来るのがわかっていたかのような柔らかい表情だった。

「その…あんたに聞きたいことがある。メイが最後に言った言葉で…」

「そうかなら少し話をしよう。ライコフ先に言っておいてくれ遅れると伝えておいて欲しい。」

「あん?そんなに長話するきか?というより面白そうなんだが?」

「行ってきなさい。」

「へいへい」

そう言って少佐は廊下を進み俺とソウタはそのまま話すことになった。

俺はメイが言ったことをそのまま伝えた。

疑問は多くあるがそれよりもなぜ慕っているはずの人間を信用していない言い方をしたのかもしかしたら伝えないほうがよいのかもしれないけれど俺は知りたかったメイの言葉の意味を。

ソウタは少しだけ窓の外を見て考えていた。

それは言い訳というよりも話すべきかという悩みに近い気がした。

「…メイの言っていたことは正しいよ。しかし、あの子以外に鋭いよね?」

「じゃあやっぱり…」

「私はね平和てのが何かほんとはわからない。嫌というほど戦闘訓練をしたりして実戦にでた時、私は地獄を見たんだよ戦争という名の地獄をそして帰ってきた日本はそんな地獄とは違った。」

戦争?たしか十何年前に大国が対テロ戦争をおこなっていた気はするがそもそもその頃は彼だってそれこそ子供だったはずだ?

「待ってくれつまり、あんたは少年兵だったのか?なら日本国籍はあとからなのか?」

「いいや、最初から日本国籍だよ。家がわけありでね色々な国家の軍部にツテがあったのさ本来なら条約違反なんだけどね。」

「それに私は戦争に望んで行ったんだから戦争に巻き込まれたり生きるためにやるしかない子供達とは本質的には違うんだよ。」

俺はメイの言ったことを確かめたかっただけだったでも彼の話を聞くうち自分が生き残る必要はなかったと思った。日常生活に戦争も平和もましてや殺し合いなんてのはすべて他人事で夏の風物詩とすら考えてる人間だ。

俺に見届ける資格はなかったんだ。

「メイが君を守ったのは私のことがあったからかもしれない。けれどそれを聞いてその意思を継げるのは君だけだ。」

「そんなそれなら、あんたこそメイの意思を」

「私の行く道はいずれ地獄に行く道だ。すべてが終わった後に君に見届けてもらいたいてとこかな?メイの代わりに…」

「…お断りします。俺もあんたに…ボスとご一緒します。地獄のそこまで」

「そうかならついて来なさい。ゴースト。」

「ゴースト?」

「君のコールサインだよ。ふさわしいだろ?日本で死にこの世界にきた存在しない亡霊君」

「イエッサー…ボス!!」

ここから始めよう再出発としては不恰好だが亡霊には関係ないのだから

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