勇者もどきとJK

第20話 勇者もどき

クーデターが失敗に終わったことでドーイ王国は連合による実質的な支配を完全に認める方針になり小規模ながら改革が行われていくことが決定した。

俺は正式に『Null』に編成され東部にある地下基地へと移動することになりガイアとサーシャとはしばらく会えることはない。

そもそも秘匿性の高い部隊であることとボスと常に行動を共にするため連合国軍本部以外に部隊専用の施設はなく停留することになった基地にて部屋を間借りすることが当たり前の状況らしいということを聞いたが俺は聞き流しそれほど多くない荷物をまとめ飛行艇に乗り込んだ。

飛行艇には他の部隊員はすでに搭乗しており席は一席しかなく残っていたのはライコフの隣だった。

「坊主きたか?てことはこれで全員か。ボス?」

「えーと…うん全員いるね。んじゃ出発しよっか。」

まるで引率みたいなこと言ってるが見た目が相変わらず子供の姿で違和感しか感じない。

「んじゃ寝るか。」

「だな。」

なお引率される側は睡眠を優先してる。

理由としては寝れるときに寝るべきというスタンスだからだそうで。まぁ着くまでの間は何かするわけではないので寝るしかないのも事実なので寝るか…



地下基地には離着陸用の滑走路がわざわざ開閉式で隠されて降り着陸後すぐさま隠蔽の為に格納されるがなんだろうもったいないとおもうのは俺だけなのだろうか。

「よぉーし降りたら部屋いって荷物整理してこい。それ終わったら射撃訓練な。」

「了解です。」

「「うぃーす」」

気が抜けた返事をおれ以外がする。とボスが

「気が抜けてるんなら私が特別訓練組んであげようか?ライコフ?」と言うと他の部隊の連中は顔が一瞬でひきつる。

そんなに嫌なんか…

「冗談だよ。さっさと準備しなさい。タクヤは明日の朝に私のところに来てくれ。渡したいものがある。」

冗談はともかく渡したいもの?聖剣は壊れたまま保存されてるがなんだろう。とりあえず期待しないで目下のところは射撃訓練に集中するとしよう。



射撃訓練施設での射撃訓練はハンドガンから始めロケットランチャーまで一通りさせられるが当然向き不向きがある。

例えばライコフ少佐はすべて使いこなせるが

オートマチックのスナイパーライフルは苦手であるとか。

ちなみに俺はハンドガンとスナイパーライフルでありスナイパーライフル特に苦手だ遠距離に狙うのはほとんど当たらない。

ハンドガンは近接戦を今まで聖剣使ってたからか射撃訓練はよくてもペイント弾での対人訓練ではホルスターがないほうに手を伸ばしてしまう。

「まあこういう癖は早めに克服しないとな。まぁお前は若いからそこまで深刻に考える必要はないかもな。」

「はい。治しておきます。」

「…なんつうか自信満々過ぎるのも問題だったが謙虚になりすぎるのも調子くるちまうなぁ?」

「二度とメイを失ったときの様なことはもう嫌なんです。だから謙虚というよりも未熟な部分を無くしたいだけですよ。」

もっと強くなる。方法はわからないが聖剣がない今はどんなことでも吸収していかなければメイに顔向けできない。

「その心意気だけでもこいつらは作戦以外でもやってほしいもんだな。」

まだ本格的な作戦には参加していないがここにいるのはボスが選んだ一流な人達なので心配ないと思うけどね。

「姉御なら重機関銃片手持ちで撃てそぅヒデェブ!」

ライラ中尉の右フックがきれいに決まったが誰も介抱しないあたり日常風景のようだ。



次の日、早朝からボスがいる武器整備室から呼び出しを受けて向かうと部屋にはボス以外に初老のおじいさんがいた。

「おはようタクヤ。」

「おはようございます。」

「この子が勇者もどきですかな?」

間違ってはないけど初見で失礼では?

いや、ボスがつけたのか?だとするとちょっと悲しいな。

「コジマ老師そんな言い方はいけませんよ?

「ホッホ、老師といわんでくれ?お前さんに教えてもらうことが多い若輩者じゃよ。」

よくわからないが優れた技術者なのだろう

か?と老人を見ると片手に一振の日本刀を持っていた。

「さて坊主よ。この刀お前さんにやるわ

い。」

老人から刀を渡されながら見てみろと言われるまま抜いてみた。

「これかなりの名刀なんじゃ?」

「うんにゃなまくらじゃからいい鍛練になるよ。」

刀の良し悪しはわからないが気を使ってくれたんじゃ無いだろうか?

「ありがとうございます!大事に使わせてもらいます!」

俺はその刀を持って部屋を後にした。

「あの坊主、なまくらもらってなんで喜んでるんじゃ?」

「最近まで剣の近接が基本だったから嬉しいんですよ。それに剣技を極めておけばいずれ役立つんで。そのうち聖剣が戻ったときにね。」

「絶対違うと思うぞ…」



その後、訓練中にライラ中尉に一撃で壊されてしまい慌ててしまったのは俺だけだったのは言うまでもないだろう。




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