第45話 ダンジョンに潜むモノ
ロベリー師匠は小さくふっと微笑むと、遠い目をして語り始めた。
「あれはそう……私とピノ様それにミレアとベルベルさんの四人で、最近発見されたセントラルダンジョンの探索に行った時の事だったわ……」
新しく発見されたセントラルダンジョンについて主人公から報告を受けた『チーム』の皆さん。その中からロベリー師匠達四人が探索チームに選ばれ、師匠達は報告終了後にそのまま探索に出発したそうだ。
主人公から聞いていた通り第五階層までは初心者レベルの魔物しか出て来なくてアッサリと踏破、そして訪れた第六階層にて――
「それはダンジョンの恐るべき罠だったの。その地に降り立った私達にダンジョンは容赦が無かった。コボルトチワワ、コボルトマメシー、コボルトテリア……ちっちゃくてかわわなモフモフが私達に次々と襲い掛かって来たの。そんな彼らに刃を向けるとか出来る訳なんてなく、私達は呆然とその場に立ち尽くしたわ。そこはね、小型犬種の亜種コボルト達が棲む地だったのよ!」
ふむふむ、犬も可愛いから無理も無いか。
「攻撃を封じられた私達に出来る事と言えば、彼らの攻撃を時には受け止め時には躱し、ただひたすら先へ進む事だけだった。受け止めた時にたまたま抱き締めたように見えたかもしれない。躱す時にたまたまモフったように見えたかもしれない。その私達の技術によってたまたま通り過ぎた後のコボルト達がピクピクしてるように見えたかもしれない。でも! それは全て彼らを傷つけずに先に進もうとした私達の優しさと心の弱さが産み出した幻……」
成程、つまり近寄ってきたコボルト達を散々モフり倒して先に進んだと。
「そして第七階層、そこで私達を待ち構えていたのは、大型犬種の亜種コボルトだった……」
ああはい、それで同じ光景が繰り返されたんですね。その辺りは巻きでお願いします。
「何とか下層への階段に辿り着いた私達は、迷わず下へと突き進んだ。そして第八層、そこは……」
つっ……遂に!?
「ケットシー……にゃんこ達の階層だったの」
「フォォォーーーーーーーーウッ!!」
「っ!?」
突然奇声を上げて拳を振り上げた私にビクッとしたロベリー師匠、おっと目が合っちゃった……コホン――
「続きを……」
「あ、はい……そこで最初に出会ったのはケットシニアン。その顔付きは何処と無く野生を感じさせ、そのゴールドの毛並みはまるで目の細かい絨毯のよう。でもね、ケットシーの最大の特徴は――」
ゴクリ…………特……徴は?
「二足歩行で可愛らしい服を着ている点。物静かなこのケットシニアンは、赤色のジャケットに緑色の膝までのズボンを合わせていた。そして腰に下げた
にゃんと……
「――それから何やかんやあって無事その子と和解できた私達は、蕩けた顔で気持ち良さそうに転がるその子を残し、先へと進んだ」
……それ絶対
「その先でもまた戦いは続いたわ。ケットスコティ、ケットアメショ、ケットマンチカン、ケットシアンブルー、ケットペルシャ、ケットベンガル、それから……」
……師匠それドコの猫カフェ?
「次に私達が訪れたのは第九階層。そこで私達を待ち構えていたのは大型猫種のケットシー達だった。ケットジャガー、ケットヒョウ、ケットカラエル、ケットサーバル、ケットオセロット、ケットクーガー、ケットチーター……そして最後に私達の前に立ち塞がったのが、最強種ケットラだったの」
ソレ猫チガウ、猛獣……
「そんな彼ら彼女らの服装は、Tシャツと短パン。露出度の高いその服装から
……あ、とうとう取り繕うのを止めちゃった。
「でね、彼らを一体も倒さずに第十層まで到着すると、そこはボス部屋ではなくコボルトとケットシー達と思いっきりふれ合える天国に変化するの。ああ、あの至福の空間。大きなモフモフから小さなモフモフまで部屋の全てがモフモフに包まれて私達もまたその一部、やがてモフに
ええと……うん、以上ここまでっ!
こうしてロベリー師匠からの訊き取りは終了した。それにより分かったのはセントラルダンジョンに私の追い求める
そっか、初めて会った時のバステト様と店長ズは私を見てこんな気持ちだったか。今度会った時にちゃんと謝って――え? あれ? 私…………あ、お店…………あま、て……ら…………
◇◇◇
「ほんとビックリだわ。まさか猫が記憶の封印を破る最後の鍵になっちゃうなんてね……でもコレ一体どうしたら――」
「えっと、天照さま? 何かありました……?」
「あっごめんなさい実花、今私ちょっと考え事してて――って実花!? どうしてここに!?」
「どうしてって……あれ? そう言えば私ロベリー師匠とお話してて……ってあれ? ロベリー師匠、って誰? あれ? 何で私……あれ?」
「もしかして記憶が戻った衝撃であちらに魂を残したまま意識だけがここに? はっ、まさかこれがバステト様が予告した事故なの……?」
「私どうしちゃったんだろう……あの天照さま、何かちょっと変なんです。私が私じゃないみたいって言うか――」
「実花、また会えてとても嬉しいわ。でも……まだ早いの。お願い、もう少しだけ向こうで頑張ってきて。私、あなたの事ずっと見守ってるから。だから……ゴメンね」
「えっ、あまて……ら…………す………………さ……」
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