第18話 鳴らない、電話?
おかしい……店長が来ない。
「そうねえ。結構時間が経ったけど、どうしたのかしら?」
「まさか、あれからみんなお店に来るのが嫌になったんじゃ……」
「そんな感じには見えなかったけど……それに連絡もなしに『やっぱやめまーす、うぇーーい』なんてないでしょう」
ああ、前世のコンビニでそれやったバイト君いたなあ。あの時は急にシフト頼まれて大変だったっけ。夜勤から帰って寝ようとしたところに「午後から入ってお願いします助けて」って店長から電話で……仕方無いからその日は体に鞭打ってシフト入ったけど、あれから暫く夜勤明けは携帯の電源切るようにしてたっけ……
「ねぇ天照さま……冷静になって考えると、『こたつ用意するからウチで働かない?』とかあり得ない、ですよね……大体そんな労働条件とか騙されなさすぎて詐偽にすらならないし……それに考えてみたらお給料の話とか一切してないし、第一通いなのか住み込みなのかも…………あれ? もしかして決まってる事って何もない? あれ? ……私って猫さん達とどんな話してきたんだっけ? あれ? …………あれ?」
「実花! 気をしっかり持って! いい、悪い方に考えちゃダメよ。大丈夫、ちょっと時間かかってるだけだから。きっとみんなあなたの熱意に心を打たれたに違いないもの!」
「バステト様、あの時私に『愛が重すぎたにゃ』って……」
「…………あ」
可愛らしく口を開けたままフリーズした天照さま。ナルホド、これが「二の句が継げぬ」萌えバージョン……
「大丈夫……そう、大丈夫よ実花! ええっと……ほら、寒い日にこたつに入って食べるアイスって最っ高に美味しいじゃない!!」
天照さま……だんだんフォローがずれていってる気が……って、あれ?
「そう言えば、この辺りって四季とか寒い日とかってあるんですか?」
「…………え?」
今度は「え」の口でフリーズする天照さま……
この流れだと、もう一度くらい続くかな?
「だだだ大丈夫よ! ほらここって私の神域だし、えいってやれば寒くなるから。えいって!」
「いや、急にそんな事したら皆さん迷惑なんじゃ……」
「…………う」
天丼おかわり三杯め入りました!
って、あれ一杯二杯なんて数え方しないけどね。
て言うか、今の「えいって!」のトコむっちゃ可愛いかったな!
……そういえば、店長が来なくて不安だった筈が、一連の天照さまとのやり取りでいつの間にか普段のペースに戻ってたよ。
こういうとこは、流石神様だなあって思う。
狙ってやったか素でやったかはともかくとして。
「そうだわ、ここで色々思い悩んでても仕方ないし、今から様子見に行きましょうか?」
「そう……ですね」
不安だし心配だけど、結局それしかないのよね。
うん、ここは度胸一発!
「バステト様のところに連れて行ってください」
ひとつ深呼吸してから天照さまが差し出してくれた手を取る。あったかな天照さまの力に包まれて一緒にバステト様の神域に転移、そこで私が見たものは……
ええっと……何でオール猫大運動会(十匹だけど)やってるの!?
これ一体どういう事? もう私のお店の話は忘れちゃったの? それともやっぱりホントに嫌だったの? 何なの猫の運動会って!? 可愛いけど! ずっと見てたいけど!
でも!!
「皆さん!いつになったら来てくれるんですか!私あれからずっと待ってるんですよ!?」
ほっとかれてムカつくんですけど! ムカ可愛いんですけど!!
でも……やっぱりそういう事なのかな……
「私の事ほっといてみんな楽しそう……やっぱり本当はみんな、お店になんて来たくないんだ!」
「ちっ、違うのにゃ。分かって欲しいにゃ、これは神聖な戦い……店長を決める戦いなのにゃ!」
慌てたように叫ぶバステト様。
戦い? ん? それってどういう事?
顔を上げて猫達を見る。
「店長を……決める?」
何それ?
「そうにゃ。店長と副店長、席は二つだけにゃ。これは誰が行くか決めるためのバトルにゃ!」
何を言ってるんだろうこの神様は。
確かに店長と副店長って言ったけど!
説明足りなかったかもしれないけど!
全員自分が行きたいから、譲れないから、戦って決めるとか!
ホント可愛くて腹が立つったらもうっ!!
「……みんな……で……」
「にゃ?」
そうだよ!!
「みんなで来ればいいじゃない!!」
何で自分達だけで決めようって事になってるの!?
みんな一緒でいいじゃないの!
「ずっと待ってたのに! すっごく楽しみに待ってたのに! 二人しか来ちゃダメとかなんて無いのに!」
みんなきっと喜んでくれるって、頑張って色々作ったのに!
やっと全部出来上がったのに!
待っても来てくれないから、すっごく不安で心配だったのに!
「全員来ればいいじゃない!!」
こっちはもう全員受け入れる覚悟と準備が出来てるのよっ!!
「「「「「!!!?(にゃ、にゃんだってーーー!?)」」」」」
こっちが「何だってー!?」だよ。もうっ!
ホントにもうっ!!
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