第10話 コンビニってほんと凄いよね

さて、ここまでアニメ語りと序破観賞しかしていないスサさん、出番ですよー。


「む、何か酷い事を言われた気がする」

「もう、突然何言ってるんですか。さあ、陳列を始めましょう。スサさん力が強そうだから超期待していますよ」

「ああ、任せてくれ。実花の期待を軽く越えて見せよう」


チョロいのかノリがいいのか……その両方って事でいいのかな?


「はい、じゃあお店について説明しますね。お二人ともよろしいですか?」

「ああ、頼む」

「僕も大丈夫だよ。実花、説明よろしく」

ふむ、言葉よりも見て理解してもらった方がいいかな。

「ではミニチュアで説明しますから、そちらのテーブルに集まって下さい」


今回椅子は使わない。だって上からミニチュアを見下ろしたいから。

と言う訳で三人とも立った状態でテーブルを囲み、そして上からミニチュアを覗き込んだ。

思ったより頭同士が近付いて……ううっ、平常心平常心っと。



「ええー、まず入り口付近には生活雑貨の小物類を並べます。もう少し具体的に言うと、便利グッズとか面白雑貨なんかですね」

店に入ったお客様への軽いジャブ。最初の掴みはこれでオッケー、かな。

「その次……その流れでおもちゃとかゲーム類を置きます」

「ふふっ、なるほど。何となく実花の意図が見えてきたよ」


ニヤリとする月読さま。

人畜無害系キャラの貴重な悪役顔、ご馳走様です。


「からの家電コーナー。目玉商品はもちろんこのマッサージチェアですっ!」

ひとを駄目にする罪深き椅子、ってやつだな。いくつかの作品で見たことがある」


相変わらず情報ソースがサブカルチックなスサさん。逆にもう安定感って感じだよ!


「せっかく実物があるんだから、あとでぜひ試してみてください。きっと体験する事でそれらの作品への理解も深まりま――」

「是非!試させてもらおう!」


食い気味で実にいい返事が返ってきた。

マッサージチェアへの興味か、はたまた「作品への理解」が響いたのか……うん、後者だな。


「さて、ここからは食べ物コーナーですよ。まずは駄菓子とスナック菓子から」

「……沼は入り口からすでに沼ですね。いきなり深い」


月読さまの感想がコワイよ。

まあ、私の目論見もその感想の通りなんだけど。


「塩気のある袋菓子から乾物ときて常温お酒コーナー。から壁の冷蔵ドリンク棚に目を向けるとそこにはよく冷えたお酒が目移りする程に並んでいるじゃあないですか。そこからさらに蟹歩きしていくと……おや? これはおつまみに最適じゃないか! の、お惣菜コーナー」


はい、どうですか大人のお客様!


「ちょっと待て。食べ物を置き始めたあたりから某コンビニのレイアウトになっていないか?」

「おや気づきましたかスサさん。というかよくご存じで」

「ああ。以前姉さんに付き合って買い出しに行ったことがある。というか何度も行ってる」


ああなるほど。毎回天照さま一人で行ってた訳じゃなかったのね。

ああ、それはそうか。アニメに登場する場所って実際に見てみたくなるからね。

コンビニあたりはさながらプチ聖地って感じ?


「ええ。あれは実に洗練された導線です。反対方向から入ると夕食→お惣菜→お酒と、それはそれで魅惑のルートに嵌るんですよ」

「うーむ、これまで何気なく通り過ぎていたが、こうやって説明されると、いや凄いものだったんだな」

「コンビニは人類の英知の結晶のひとつだと思っています。……あくまで個人の感想ですが」


感心しきりの月読さまとスサさん。

でもまだ終わらんよ。


「そして満を持してのスイーツコーナー!」

「まあ姉さんが一枚噛んでるんだから当然そうなるよな」

「ふふふ、しかもただのスイーツコーナーじゃあないですよ。なんと! ここには代表的な全コンビニのスイーツが一堂に揃ってるんです!」


「「それは本当にすごい!!」」

「でしょっ? 人界のコンビニじゃあ絶対に見られない素敵光景が……ここにはあるっ!!」

「好きなひとからしたらきっと天国に見えるでしょうね」


まあ実際ここは神界だけどね!


「そしてそして、スイーツと言えば忘れちゃいけない! ……アイスコーナー!」

「うんうん、つい買っちゃうんだよねー。甘いもの+甘いものの筈なのに、片方がアイスになると、ああ何ていう魅惑の組み合わせ……」


ここに来て月読さまのキャラが……もしかして実は大の甘いもの好きだったり?


「テーブルで食べていくお客様は熱々のコーヒーや紅茶なんかを注文出来たりとか」

「「それはまた素晴らしい!」」




「さて、それでは皆さま、こちらをご覧ください」

「ふむ、ちょっとした空きスペースがありますね」

「ええ。じつはこここそがこの店最大の売り『店長のおすすめ』コーナーです」

「「店長のおすすめ?」」


「はい」ニヤーリ


「天照さまと取り扱い商品について相談していた時に決まったんです。驚かせたいものとか流行らせたいものなんかをその時々で展示販売する、それこそが『店長のおすすめ』コーナーなんです」


どどーん!


「へえぇ、それは面白そうだね。最初は何を置くかもう決めてるの?」

「これから天照さまと決めるんです。いくつか候補はあるんですけどね」

「なるほど。じゃあそれは後のお楽しみ、だね」

「ふふっ、ご期待くださいっ」



そして陳列。

スサさんは宣言通りに私の期待を超えてった……とだけ言っておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る