第11話 お茶会の天照さま
「こんにちは、マイヤ・マイヤさま。ご招待ありがとうございます」
「いらっしゃーい、ようこそ天照さま」
久し振りに会うマイヤ・マイヤさまは、今日もまたいつもと同じようににこやかにお出迎えしてくれる。ふんわりとした雰囲気の優しいお姉さんって感じのこの
この雰囲気と態度……これ狙ってやってる
「今日はこちらのスイーツをお持ちしました。ふふ、何と今回は期間限定のもあるのですよ」
「まあ素敵っ、天照ちゃんありがとう! エイミースちゃんお願い、これ早速出してくれるかしら」
ふふっ、この喜びようったら。この笑顔見ただけで『ああ、持って来てよかった』って自然と思えちゃうんだから、やっぱり天然さんって凄いわよね。
というか、いま『天照ちゃん』って言った? うん言ったわね、ナチュラルに。この方、もはや天然さんっていうより天然様と呼ぶべきかしら。
そして……あら、マイヤ・マイヤさまったらやっと自分の言葉に気付いたみたい。
「あら私ったらついうっかり……ごめんなさい、他世界の
「ふふふ……ちょっとくすぐったい感じですけど、そんな呼ばれ方されたことなかったので、新鮮で特別な感じで……それに何だかとてもうれしく感じます。だから、いいですよ『天照ちゃん』で」
「まあっ! 天照ちゃん、私もすっごく嬉しいわ。このうっかりは本当にうっかりだったけど、でもとても素敵なうっかりだったわ!」
本当にもうこの天然様は! なんて可愛らしいのでしょう!
「そうだわ! だったら私の事も『マイヤちゃん』って呼ん――」
「すみません、それはお断りさせてください」
すみませんマイヤ・マイヤさま……
「私としては『マイヤ・マイヤさま』のほうがしっくりきますし、それに距離も近く感じられるので」
「そう? なんだかちょっと残念な気がするけど……でもそうよね、『感じ』って大事だものね」
私にはあなたを『マイヤちゃん』って呼ぶ事が出来ないん理由があるんです。
何というか……
あなた『マイヤちゃん』ってキャラじゃないんです!
溢れる違和感に溺れそうになっちゃうんです!
ちょっと微妙な空気が漂う中、戻ってきたメイドさんがテーブルにスイーツと紅茶を並べてくれた。
「――お待たせいたしました」
スイーツは当然パッケージに入ったまま開けてはいない。そう、それこそが私が推奨するコンビニスイーツの出し方だから。流石はマイヤ・マイヤさま直属のメイドさん、よく分かってらっしゃる。
「ありがとう、エイミースちゃん」
笑顔のマイヤ・マイヤさまに軽く会釈を返して下がるエイミースさん。
このエイミースさん、実はここのメイド長でありこの神殿内のすべてを取り仕切る黒髪の天使。
ちょっとかわいい面もあるけど、技術能力ともにもの凄くレベルが高い。
何というか、できるメイドのテンプレに嵌ろうとする努力家、って感じかしら。
「あら? これって……?」
マイヤ・マイヤさまがエクレアを手に取り小首を傾げる。
「何か気になる点でもありました?」
異物混入とかしてないわよね?
「このエクレアから天照ちゃんの神力を感じるわ。もしかしてこれって天照ちゃんが実体化させた物なのかしら?」
「ええ、実は。先日新しい眷属ができまして、今回のは全部その子と二人で作ったんです」
よく気付いたわね。違いを感じ取れる程の差はないと思うんだけど……
「まあ! まあまあ! それじゃつまり、このエクレアは天照ちゃんのお手製って事じゃない!」
「……なるほど。確かにそういう言い方も出来なくはないですね」
「お友達とのお茶会でお友達の手作りのスイーツをいただけるなんて! もう、今日はなんて素敵な日なのかしら!」
ええと……それってどうなんでしょう。
その理屈はまあ分からなくもないですが、だからといって私の手作りですなんて言ったら各方面から苦情が殺到しそうな気がするんですけど……
でも……
うん、マイヤ・マイヤさまがこんなに喜んでくれてるんですから……ね。
はい、今日のスイーツは私の手作りという事で。
文句言う人がいたらお仕置きです。
ふふふ、一週間くらい岩戸に引き籠って日食週間やっちゃいますよ。
それともちょっと大きめなフレア出しちゃおうかしら? うっかりくしゃみで電子機器止めちゃいますよ。
「天照ちゃん、何だか悪い顔してない? もしかして何か怖い事とか考えてる?」
「ふふふ、そんな事ないですよ」
「そう? だったら私の気のせいかしら……。うん、きっとそうよね、気のせい気のせい」
にっこり微笑み、それから急に瞳を輝かせる……もしかして話題が変わるのかしら。
「でも新しい眷属が出来るなんて珍しくない? あ、もしかして素敵な出会いとかがあったのかしら?」
「そうなんです。実は今回のお茶会用のスイーツを買いに人界に降りてコンビニへと行った時の事なんですけど……」
私はあの時の事――実花との出会いの様子を包み隠さずマイヤ・マイヤさまに語る。
それを聞くマイヤ・マイヤさまはとても楽しそうに、そしてとても微笑ましそうに……。あ、でも事故で私が疑似的に死んだくだりだけは、凄くびっくりしていた。まあそれはそうよね。神が事故死とか……
「……という訳で、今日持って来たのは全部これから実花のお店で売る商品なんですよ」
「まあ、何て素敵なんでしょう! 実花ちゃんとの出会いも素敵だし、お店も素敵! 開店したら私もお買い物に行きたいわ!」
「ありがとうございます。実花と二人でお越しをお待ちしてますね。ああ、その際には是非ノーラ・ノーラさまも一緒に」
「ええもちろん。ノーラちゃんってば、あなたの事が大好きですものね」
「ふふっ、私もノーラ・ノーラさまのこと好きですよ。何だか凄く真っ直ぐな
「そうね。ノーラちゃんってすっごく真面目だから。今は勇者探しの間に溜まった仕事を一生懸命片付けてるのよ」
それは大変そうな……
「そうなんですか。お会い出来ないのは残念ですけど、だからと言ってお仕事の邪魔する訳にもいきませんね」
「そうね。多分もうちょっとで終わると思うから、それほど掛からないうちにはお店に行けると思うわ」
ふふ、楽しみが増えました。
……ああそうだ……折角だからあの子の事を……
「そう言えばあの子が勇者としてこちらに転生してもうすぐ4年ですね。どうです? 元気でやってますか?」
「ええ。優しい家族のもとで幸せに過ごしてるわ。ノーラちゃんが派遣した天使がずっと側で見守っているのよ」
それ、例え星が消滅したとしても生き延びられるくらいのセキュリティ体制じゃない・・・
いくら世界を救うための勇者だからと言っても何もそこまで……
ノーラ・ノーラさまって実は結構過保護なのかしら?
そのあともマイヤ・マイヤさまと色んなお話をしてスイーツを食べて……
次はノーラ・ノーラさまのお仕事が終わる日にお茶会しましょうねって約束したら、今日のお茶会は終了。
さて、そろそろ帰りましょう。
実花のお店はどうなってるかしら……?
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