第3話 お金の話

さて、売り物には当然値段をつける必要がある。

で、神界の通貨ってなんだろう? 円? ドル? それともペソとか?


「それで、神界のお金ってどんなのですか?」

「お金? 無いわよ?」

「え? お金が……無い?」


それじゃあどうやって? まさか……


「物々交換?」

「うーん、それに近いかも。他の神に何か頼むときって、自分の神力しんりきを相手に注ぐ事が多いかな」

「しんりき?」


……って何?


「神の力と書いて神力。使っても神界ここにいれば割とすぐ回復するから、それだって別にもらう必要も無いんだけどね。まあ誰の神力かってのは簡単に分かるから、有名神ゆうめいじんから神力をもらったらちょっとした自慢にはなるかな」

「私が神力をもらうのは大丈夫なんですか?」


だって神様の力だし。


「そうねえ、直接実花の体に注いでもらったら、結構早い段階で神格を得るんじゃないかしら」


う、やっぱり……


「それって私が神様になっちゃうって事ですよね」

「ふふっ、そうしたら実花は寄せ集めの神力から出来た神……って事ね」


寄せ集め、かあ……


「うーん、何だか他力本願で何のご利益もなさそうな神様ですねー」


私の言葉に天照さまは苦笑気味に、

「とは言っても、親が神だから子供も神なんてパターンとあまり変わらないかもしれないわね」

「そんな事あるんですか?」


蛙の子は蛙……はちょっと違うか。


「あるわよ。神だって結婚とか子作りとかするしね。神同士の子供って、同意を得た二柱の神力の交わりで出来るから」


神力の、交わり? え、それって……


「神様は神力から生まれるって、事?」

「正解。そのあたりは神話に書かれていないのかしら?」

「うーん、どうなんでしょう? 神話とかはアニメや物語の元ネタくらいしか知らないので」


古事記とか日本書紀を完読した事ある人って絶対少数派だと思う。


「まあ最近ならそうよね。昔は自分の権威付けのために神話を利用したりしてたけど、今となっては単なる昔話とそんな変わらないんでしょうね」

「好きな人は半端なく好きみたいですけど。素養のある人は10代前半くらいからハマるみたいです。特にギリシャとか北欧とか日本の神話が人気みたいですねー」


あれ? そう言えば……


「それで思い出したんですけど、商売の神様とか言われている神様いるじゃないですか」

「そうね。結構いるわね」

「それなのにどうして神界にはお店がないんですか?」


だって『商売の神様』だよ?


「んー、あのひと達って商売とかしたことないし、そもそも商売の事なんて全然知らないわよ?」

「ええぇ……あちらでは商売やってる人達って、そういった神様の事結構気合い入れて祀っているみたいですよ」


毎年でっかい熊手買ったりとか。


「うーん、そう言えば前に『なんか俺の信者って商売繁盛とかの願いが多いんだけど、今から経営学とか勉強したほうがいいのかな?』なんて相談受けた事もあったわね。経緯いきさつはともかく一度イメージ付いちゃうと、訂正するのって難しいわよねぇ」


何だか神様も大変そうだ。


「それで話を戻しますけど、そうすると私のお店、お代はどうしたらいいんでしょうか」

「そうね、だったら神力を受け取る器を用意しましょうか」


器……?


「同じ形で同じ大きさの透明な石をたくさん用意して、品物を買ったひとは空っぽの石に神力を満たすの。概念の実体化はコストに差が出ないから買い物一回石一本って感じかしら。ふふふ、なんだか食べ放題とか詰め放題のお店みたいね」


コンビニでアンテナショップで詰め放題かあ……まあ明朗会計ってことでいいのかな?

ところで、さっきから何かが頭の隅に引っかかってる気がするのよね。

何だろう……うーーーむ……あ、あれだ!


「ところで天照さま、コンビニでスイーツ買った時に払ったお金って、どうやって手に入れたんです? まさか概念の実体化? それって贋金になるんじゃ?」

「そんな事はしませんよ。神様ですから」

「ですよねー」


「あれは、お賽銭です」

「え? 私達のお賽銭って、神界に届くんですか?」

「さすがにここには届きませんよ。あれはやしろの運営維持費ですね。でも少しくらい私のスイーツ代にしたってバチは当たらないでしょう」


「いやあなた神様ですから、誰がバチを当てるんですか」

「ふふふ、小粋な神様ジョークです」

「はいはい……」


支払い方法は確定っと。

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