第6話 イケメンな弟はブレザーで生徒会!?

扉を開けたらブレザーなイケメンがいた。


いや、これだと何言ってるか分からないか。


まずはファーストコンタクト、と思ったら向こうが先に動いた。

「おはようございます。姉さんに言われて手伝いに来ました」


だよねー。

そも最初から他の可能性とかナッシング。

でも一応……


「おはようございます……えっとすみません、どちら様でしょうか?」

「ああ、名も名乗らず失礼しました。僕は天照の弟で月読つくよみと言います」


あれ? あの方じゃ……ない?


って言うかちょっと待て私!

このイケメンさん、あの有名な月読さまだよ!

……ってあれ? 月読さまって女神さま――つまり弟じゃなくて妹、じゃなかった?


私が頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、月読さまが優しい笑顔で教えてくれた。

「ああ、僕は弟なんですよ」


逆に謎が深まっただけだったけど。


「普段は……って?」

「何と言いますか……月を司る神なんてやってると、女神として祀られる事も多くって……ほら、昔は今みたいな情報網とか無かったでしょう? なので、土地土地で男神だったり女神だったりと統一されてなかったんですよね」


なんてリバーシブル。


「私の場合は昔見たアニメやゲームで女神として登場していたので、月読さまの事ずっと女神さまだと思ってました」

「僕としてはもう『どっちでも』って感じなんですけどね。女神信仰の土地では姉さんとデュオ組んでた事もありましたし」


何だろう超見てみたい。

――なんて月読さまと和やかに話してたら、その後ろからちょっと低めでハリのある声が響いた。


「……なあおい、さっきから俺の事忘れてないか?」

「ああ、ごめん。今紹介するよ」

で、月読さまがすっと横によけると……


イケメンの後ろからイケメンが現れた。

そしてまたもブレザー。

「――ったく。話すなら中に入ってからでいいだろうが」

「ごめんスサ、この子が鉄板の話題振ってくれるものだからさ、つい盛り上がっちゃったよ」


親しげに話す眼福イケメンたち……からの、紹介フェーズ!

「で、こっちが僕の弟のスサノオ」

はい、ついに日本神話界屈指の暴れん坊さんのご登場ですね。


「ああ、俺はスサノオだ。スサって呼んでくれ」

「スサ様?」

「……無理に様とか付けて欲しくないんだが?」

「じゃあスサさんで」

「それ、逆に呼びづらくないか? 俺の方は別に構わないが……」


さて、いい加減入口での立ち話ってのも失礼なので――

「とりあえず中へどうぞ」

部屋の中に入ってもらおう。


「じゃあ遠慮なく」

「はい。スサさんもどうぞ」

「ああ。邪魔する」


そして部屋に入る二人を追って視線を動かすと……あ、この部屋のテーブルって二人用だった。

えっと、どこに座ってもらおう……


「ああそうか。昨日まで姉さんと二人きりだったからね」

私が何に困ってるかすぐに気付いてくれる月読さまイケメンさま。

そしてその後ろでスサさんが指をパチンと。おお、いい音じゃない。

なんて見てたら、テーブルの隣に八人掛けのソファーセットが現れた。

ほほう、これも概念の実体化ってやつか。


高そうなソファーに並んで座るイケメン二人……あれ? なんだろう、この既視感。いや、イケメンに知り合いはいないんだが……


「ブレザーとソファーとイケメン……んー、何だっけ? 出てきそうで出てこない……」

「ああコレ? この間姉さんに付き合って観てた生徒会アニメの制服だよ。今日は姉さんの指定で着てきたんだ」


ああ、天照さま……


「ああ思い出した! そうかアレか……じゃあもしかしてこのソファセットも?」

「そう。そのアニメから」

「あれ? でもソファってスサさんが出しましたよね?」

「そりゃまあスサも一緒に観てたからね」


それは……何て神々しいほほえましい……




私も向かいに座ると横から紅茶が。

「あ、ありがとうございま……す?」

今日はセーラー服でした。


「ああ、キミも姉さんの指定どおりだね」

「はい、天照さまに今日はこの服装でと」

「なるほど。キミは書記の子って訳か」


何だろう、わたしだけ浮いてないか? 大丈夫か?

いまさら学校の制服を着たい訳じゃないけど……まあ他に誰の目もないし、別にこのままでいっか。

「皆さんアニメとかお好きなんですか?」

「姉さんは好きだね。僕はそれなりかな。スサは……プフッ!」


え?何?


「昔、年神さんが姉さんに某長編シリーズのブルーレイボックスをプレゼントした事があってね」

「おいっ! その話はっ!」

「姉さん、一気観するんだって言って部屋の神棚に置いておいたんだけど、スサがそれを持って天岩戸あまのいわとに引き籠っちゃってさ」


ん? それって……


「姉さん怒っちゃって岩戸をガンガン叩き出すし、スサは全部見終わるまで出てこないし、いやーあの時は大変だったなあ……」

「あの、神話だと天岩戸に引き籠ったのは天照さまって事になってますけど……?」

「あーそれね。最終話まで観切ったスサが岩戸を開けたところで姉さんが中に突撃してったんだよ。なんだけどさ……」


まさか……大事なブルーレイに何かあったとか?


「実はスサ、観賞用にってあの中をシアタールームに改造していてね、岩戸の微妙な反響が何だかいい感じだし、それに閉ざされた空間での没入感といったらもう……」


あ、何だかオチが……


「今度は姉さんがそのまま引き籠っちゃったって訳。たぶんそこが伝わったんじゃないかな?」


スサノオさまが原因で天照さまが天岩戸に籠る……うん、神話通りだネ……ってオイ!


「ハハ……何だか神様って……」

「俗っぽいでしょう? でもそれくらいじゃないと神なんてやってられないよ? この業界結構大変なんだから。真面目な奴ほど闇落ちするってね」



神様って……神様って…………業界とか言うなっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る