第7話 ワイルド系?残念系?
「スーさんって……」
「誰が釣り好きの建設会社社長だ!」
うわ、ついてきた。
「んんっ、スサさんってどんなアニメが好きなの?」
「む、普通に流したな。まあいいんだが……で、そうだな、好き嫌いなく何でもよく観るが……」
考えるスサさん。案外真面目だな……
「ロボットをスーツって呼ぶ作品は全シリーズ観たな。あれ『スーツは戦闘服』って意味だったんだろうか? あと不真面目な警官が色々やらかす奴は全話観たし、船で冒険する海賊のとか、猫と言い張る妙なロボットが小学生を甘やかす話とか、同じ小学生でも中の人が高校生探偵のとか。ポケットに入らないサイズのモンスターのも最新シリーズまでコンプしている。魚介家族は年代によって絵や声だけでなくキャラの性格まで随分変わって、歴史を感じるあたりも実によかった」
うわぁ、ボリュームお化けがノージャンル過ぎ!
「あとこの間観たサッカーの奴も面白かった。飛んだり燃えたり、最近の子供はすごいな。あー、でもそのあと見た実写版はなんだか地味だった。普通に走ってボール蹴ってただけでCGとかも無かったし、予算が付かなかったのだろうか?」
いやそれ絶対普通のサッカー中継観てただけだろう……って突っ込んだら負けな気がする。
「もの凄いですね。観る時間足りなくなりませんか?」
と訊くと、スサさんは少し困ったような表情で、
「人としての感覚ではそう思うのも当然だろうが、神の身としてはな。そもそも我々には時間という縛りが無いのだよ」
そうだった……そもそも寿命の概念が無いうえに時間の上流下流すら飛び越えられる神様までいるんだった。
「まあそうですよね、神様ですもんね。じゃあそうすると一クールものなんかは一瞬ですね」
「そうなんだ! だから続きそうなアニメはあえて暫く放置する!」
おっと、握り
「『面白そう=人気が出そう=続きそう』だからな。これだけ観てくれば続きそうな作品は何となくアタリが付く。しかし! 面白そうな作品ほど後回しというのは正直辛い! だが先のシーズンの作品を年神から貰うのは違う! それは何かを冒涜する気がする! というか負けた気がする! なれば……なればこそ! 涙を飲んで待つのだ!!」
うわあ……
ワイルド系イケメンの筈が残念キャラに見えてきたよ。
「そもそも! 神作を神作たらしめているのは!」
「ねえスサ」
勢いよく立ち上がるスサさん!
――の横から掛かる絶対零度の声!
そして……
冬山で遭難した人みたいになってるスサさん。
――の横でうっすら笑みを浮かべた月読さま。
あれ? 室温は下がっていない……よね?
「ちょっと熱くなりすぎじゃない? その話まだ続くのかな? 僕たち何しにここに来たんだっけ?」
「う……あ……すまん」
「うん、いいんだよ。実花ってなんだか話しやすいしね。僕も楽しいおしゃべりは大歓迎だよ。」
「あ、ああそうだな」
「でもスサ、熱くなり過ぎて気付いてないだろう? 君を見る実花の目付きがだんだんと残念なものを見る目になっていってるって。このまま続けるとスサ、取り返しがつかないレベルにまで逝き着きそうだよ?」
月読さまの言葉に、ギギギギとこちらを向くスサさん……うん、ドンマイ。
「あーすまないな実花。どうやら少しはしゃぎ過ぎたようだ」
おっと、復活のワイルド系。しかしさっきから二人とも自然に呼び捨てだな。
神様だからって訳じゃなさそうだし、どっちかと言うと距離が近付いたって感じ?
「構いませんよ、私も嫌いじゃないですし最初に話を振ったのも私だし。でももう少し落ち着いてお話ししてもらえると嬉しいです」
そういうと凄くほっとした表情になるスサさん。何だかかわいい……かも。
いや、フラグは立ってませんよ? 流石にそこまでチョロくはありませんって。
「さて、じゃあそろそろお店の準備を始めようか。姉さんが帰ってくるまでにある程度は進めておかないとね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
諸君、お仕事の時間だ……っていかん、この『私』は自身の奥底に封印したんだ。
神様たちに引きずられて封印が緩んだか……って私も大概業が深いな!
さあ、気を取り直してお仕事お仕事……っと。
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