第47話 上洛

047 上洛


上洛するのには、芥川山城、勝竜寺城などが三好家の敵陣として障害となる。

三好三人衆(三好長逸・三好政康・岩成友通)が山城の実権を握っていた。


松永弾正はこの三人衆ともめることになるはずだったが、この世界ではその前に、鈴木に降伏しているのでもめた事実はない。


しかし、必ず戦う必要があるのかと問われると、どうなのだろうか。

姫路城は普請ふしんを開始している、孫一、松永弾正が普請奉行となって指揮をとる。

また、星型城郭である。


「3万は動員できますので、安心して上洛できると思われます」参謀総長の戸次道雪。

参謀には、竹中半兵衛、黒田官兵衛(旧姓に復帰)、息子の真田源五郎がいる。

「この際、摂津、山城の市街地は、占領されるがよかろうかと」

「将軍家問題が解決していないのにか?」

今、京には将軍が存在しない。


実は1565年に永禄の変が起こり、足利義輝が惨殺されるのだが、この世界では、すでに起こっていた、次期将軍候補、義昭は、現在近江にいるらしい。


「ですが、山城を押さえれば、畿内の覇者となり、形勢が我らに有利になりましょう」と道雪。

「そうです、父上、覇者となれば将軍となりえます」と源五郎。

勝手に上洛すると、自分の知る歴史が大きく変わりそうな予感がひしひしとする。

1565年といえば、織田家がやっと尾張一国を統一するのである。


摂津のほとんどは占領済みで残るは芥川山城のみであり、此処を突破すれば山城国である

京市街に進むすには、勝竜寺城が存在している。


「この際だから、少し痛い目にあわせてやろうではないか」

「さすが父上」

「全軍に進軍準備にはいらせよ」

「は」


鉄砲隊3000(銃手1000、補助2000、鉄砲3000丁)と狙撃部隊500(狙撃手250観測手兼護衛250)

騎馬隊500 近衛部隊(歩兵)1000の5000で編成される。


後詰として2万が金鵄城に準備される。

「しかし、5000では、すくな過ぎませんか?」と心配性な望月がいう。

敵がでてくれば邀撃ようげきする、来なければスルーする段取りになっている。

そして、狙撃部隊に装備されている銃は後送式ボルトアクションライフル銃であった。

今までの火縄銃などくらべものにならない射撃速度である。

それに、設計を一新し、実包も大型化し、射程距離も5町(500m)である。

銃兵は皆、迷彩軍服を来ており、鉄兜をかぶっている、愛という漢字や鹿の角などはない。

現代の兵士にほぼ近い形になっている。

銃兵の護衛役は、今だ鎧武者姿だが、最低限の防御しかしていない。


騎馬隊の馬はすべて輸入種を繁殖させたものである。

体重500Kg超える大型馬であり、銃声に驚かないように訓練されている。

いわゆる軍馬である。


狙撃隊には、後に鈴木銃勇士(九十九銃勇士)と呼ばれる名人がすべて含まれている。


「これより、上洛する、諸君の奮闘を期待するものである」

「全員、金打きんちょう!」

全員が刀を少し抜き、カチンと音をたてて、鞘に戻す。

銃兵もナイフ程度(ほぼサバイバルナイフ)は持っている。

「出撃せよ」

「おおお~」

金鵄城から5000名の兵達が、続々と吐き出されていく。


・・・・


芥川山城は山城である、遠くまで見渡すことができる。

もちろん5000もの兵士が縦列で進軍していることを発見することは容易い。

そもそも、鈴木家が近々上洛するのではと、巷では噂が広がっていたのである。

「あの旗印は間違いなく、八咫烏!」

物見は八咫烏の旗指物を発見する。


この日のために、三好三人衆の一人三好長逸はこの城に兵を集めていたのである。

残り二人は、勝竜寺城に駐屯している。

三好家をあっという間に没落させた鈴木九十九は不倶戴天の敵である。

「敵の種子島は何人か?」

「おそらく1000です」

「よし、我が方は10000だ、初撃だけ耐えよ」

「殿、奴らは速射するともっぱらの噂です」

戦場から逃げて来られたものは少ない、しかも、状況をつかめているものはもっと少ないゆえに、噂程度しか残らない。

火縄銃の常識で行けば、一発撃てば、その間に相手の懐に飛び込むことができる。

火縄銃の有効射程は半町(50m)であるので、初撃を外せば混戦に持ち込むことができる。

しかも、火縄銃の命中精度はそれほどではないので、面射撃を行う必要性が生まれるのである。

10倍する兵力で総攻撃を行えば何の問題もない。はずである。


問題は、相手が常識から大きく外れているということだけであった。


芥川山城では敵発見の狼煙が焚かれる。

「来るぞ!攻撃準備」狼煙を見ながら道雪が檄を飛ばす。

鉄砲隊の隊長は、滝川一益であった。

「皆、落ち着いて、狙え、八咫烏様は貴様らに加護を与えるであろう」

「おお~」若い鉄砲隊はことのほか、八咫烏信仰が深い。

彼らは、孤児として拾われてきて、紀州で訓練された者たちである。

八咫烏が彼らの神であり、鈴木九十九が父であり神の代理と教え込まれているのであった。


山側からドンドンと太鼓を打ち鳴らしながら、歩兵たちが突撃してくる。

「おおおお~~~~」絶叫と足音が怒涛のように響いてくる。


桶狭間の戦いの例もあり敵は、本陣を強襲する計画である。

九十九軍本陣の両翼に鉄砲隊が開傘する、膝立ち撃ちの姿勢をとる。

銃手は1000名であり、その後ろには助手が二人、代わりの銃を用意して待つ。

彼らは、いざというときは、近接戦闘の要員となる。


本隊の前には、火縄銃ではない銃を持った部隊が展開する、近接戦闘になれば彼らは、後方に引っ込むようになっている。

それを援護するのが観測手を兼ねるパートナーである。

今回の場合は、近衛隊が前に出てくる予定である。

「殿はあぶのうござれば、下がっておられるがよろしかろう」と戸次道雪。

「心配いらぬ、今回は儂の腕を見せてくれよう、九十九重當の名は伊達ではないぞ」

重當(しげとう)重は重ねる、當は当たるの旧字体であるつまり、九十九(99回)連続して当てると言っている訳である。


ちなみにこのころ伊達という言葉がつうじたのかどうかは不明だが、文脈で流されている模様。


もちろん、此処にいる連中はこの男の銃の腕を知っている?

いや、この男が撃っているところを見たものは少ないので、皆は半分冗談だと思っている始末である。


そもそもこの男の才能はぶっ壊れなところがあり、見えもしない何かの赤い線が勝手に照準を合わせたりするので、現実から想像もできないことをやってしまうという秘密が存在する。


霜兵衛、加留羅蓮国、諏訪賀利一、竜堂未来、ザイツエフ(和名、財津六郎)、荒部芳富、佐々木義国、稲富直秀、そして、滝川一益を加えて銃勇士(十と銃をかけている)とされている。

彼らは、迷彩柄の軍服に鉄兜、革のブーツに小銃という恰好をしている。


「大丈夫なの?」付き合いの長い霜が聞く。

「霜よ何を言っているのだ」


山側から三好軍がほぼ全軍で走りおりてくる。


「負けることはないぞ!突撃突撃!」

三好の部将が叫んでいる。


鉄砲隊の射程は1町(100m)である。

狙撃部隊の射程は5町(500m)である。


「撃て~」滝川が軍配を振るう

ドドッドドン、爆音と豪炎と黒煙が吹き上がる。

風が煙を払っていく、「撃て~」

ドドッドドン

「撃て~」ドドッドドン

3連斉射が始まった時、本陣にある狙撃隊が発砲を開始していた。

今までは存在しなかったが、主だった敵将のみを狙撃していくという戦法。

この時代の武将は目立つ兜であるため、見分けるのは簡単だった。

7.62mm口径(後送式ライフルはこの口径に定められた)の弾丸が武将の兜を簡単に貫通し、即死させる。

ガチャガチャと一挙動でボルトで排莢しながら弾丸を装填し、狙いをつけたのかどうかも怪しい早さで、速射する男がいた。


すでに、主だった武将で無事な者はいなかったが、とにかく連射する男。

次々と足軽がもんどりうって倒れていく。


「殿!殿!」

揺さぶられて、やっと正気に戻る男。

「おお、どうした」

辺りは硝煙と血と死体の臭いで満ちている。

「追撃命令を!」と道雪。


「よし、そうだな慶次郎に伝令せよ」

しかし、後方に備えていた騎馬隊は命令の前に追撃を開始する。


突撃部隊は横殴りに銃弾の嵐をうけてよろめき、それでも前に進もうとしてた時に、前方からも銃弾の精密射撃を受けることなる。

これで完全に勢いをとめられてしまった。


一発目だけたえれば、突破可能という考えは全く通用しなかった。

銃手一人に3丁の銃が用意されていた、紙早合により、4発目も途切れることなく撃つことができたのだ。


「馬鹿な!」というべき主将三好長逸はすでに、鎧を打ち抜かれて即死していた。

何とか、生き残った者たちは、必死で退却していたが、「この呂奉先の方天画戟を受けてみよ!」500Kgの巨馬にのった騎馬部隊が、襲い掛かっていた。


一人、頭のおかしい人がいたようだがな。







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