第44話 攻城戦

044 攻城戦


1564年 (永禄7年)

九十九軍10000は明石方面に展開していた、一方、阿波に上陸した津田監物の部隊5000は、阿波国の三好勢を撃破掃討していた。


摂津の諸城は攻略され、必要な城以外は破却されていった。

あまりにも、城が多すぎるのである。

但馬、山城方面の三好勢がときどき、後背をつこうと攻め寄せるが、金鵄城は鉄壁で何ともなかった、というか逆に大量の死人を発生させている。


城は無理なので、九十九軍に攻撃をかけてきたが、九十九側は忍びの情報から敵が城から出陣した時から情報を得ることができているので奇襲にはならず、完璧な防御で逆に被害が盛大に発生する。


三木城には別所氏が陣取っている。

三木城の干殺ひごろしで有名になる堅城である。(羽柴秀吉が攻略)

「城を引き渡すように、使者を送ましたが、断固拒否の様です」と副官望月。

「そりゃ、ただではくれんでしょ」

「では、大砲とバリスタの用意、馬防柵の設置を始めます」

「頼む」

「他の者は、食事の準備をせよ」

「はい」

戦場に到着した時に、一番忙しいのは、工兵師団である。

馬防柵、逆茂木、簡易の堀、土塁などの製作とバリスタの組み立てである。

大砲部隊は、城に打ち込めるように、砲の角度の調整はもとよりや砲撃用の陣地を作る必要がある。

そのほかの兵士は、鉄砲で周囲の警戒と食事の準備を始めるのである。

とにかく、この軍は食事を大切にしている。

驢馬と牛が食料を運んできている。


とにかく、物資輸送の効率化をめざしているため、人間以外のものを多用する。

もちろん機械化師団など論外なので、牛馬輸送隊と大八車などの装備を充実させているのだ。

驢馬が荷物を積み、牛が車を引く、日本種の馬も荷駄馬として利用される。

物資輸送隊列が遠くまで続いている。


工兵師団は工作が終わると、この輸送隊に早変わりする態勢となっている。

工兵師団は、そのように早変わりするわけだが、戦闘訓練もある程度はこなしている。輸送部隊は敵に狙われやすいので自衛戦闘の訓練もされている。


三木城の守りは堅い、そして城内の者は、いずれ救援が来ると考えていた。

姫路城などに味方が存在していたからである。

味方のいない籠城は地獄となるのである。(実際に起こった)


翌日、早速、「やあやあ我こそは、前田慶次郎と申す、我と思わん者はかかってまいれ」

一騎打ちを要求している。

ここらへんは、かなり普通とは違う。


すでに、一騎打ちは過去のものとなっているので起こることはなかったのである。

だがしかし、このように挑発されれば、出てくる武辺者はどこにでも存在するらしい。

門が開き、騎馬武者が飛び出してくる。

「別所何某見参、参る!」

別所何某の馬は日本産の馬でありやはり小さかった、そして、前田慶次郎の馬赤兎馬(本人命名)は大宛の名馬(後のアラブ種などの祖先らしい)であり大きいのである。

前田慶次郎は身長6尺(約180cm)の大男に育っているので大きな馬でないと乗れない。

そして、九十九は、馬をすでに大型化させるべく、馬の輸入を行い、繁殖を各地で行っていた。そして、大型馬の品種改良を開始していた。


因みにこの馬は汗血馬であった。

黒い馬(大宛馬)もいたのに、なぜか汗血馬を選んだのである。


「慶次郎は黒い馬を選ばんのか」と九十九。

「殿、赤兎馬でしょう」

「松風は?」

「何ですかそれは?」と返されたのである。

内心怪しからんと怒ったのは内緒である。


槍はハルバートを作り渡してやるとその槍を「この槍は方天画戟と名付けましょう」

「嘘つけ!ハルバートじゃ」とやはり心の中で叫んだのである。


城内から見ると遠近感の問題でよくわからなかったのであろう。

別所何某は、前田とその馬が巨大であることに気づいたのであるが、逃げ帰る訳にも行かず青い顔になってしまった。

自分がかなり無謀な事をしてしまったことに気づいたのである。


「参る!」

前田の赤備えが動いた(馬が赤いので鎧も赤く塗るようになった)。

「うお~」すでにやけになった別所何某が突っ込んでいく。

ズドンという音がしてハルバートが別所氏の胸を突き破った。


「別所何某討ち取ったり!」前田慶次郎が呼ばわると、九十九側が歓声と勝どきを揚げる。


「私も行ってまいります」そういったのは、青年将校に育った本多平八郎だった。

「いかんぞ平八郎、亀丸、平八郎を止めよ」

血のつながりは無くてもすでにほぼ親子である。

「父上、私こそ行ってまいります」

「いかんぞ、源五郎止めよ」

「父上、平八郎は大丈夫でしょう」

「私も生きます」今度は本当の子供マキシム(重牧しげまき)まで名乗りである。

金髪碧眼の青年将校に育った息子であった。


「狙撃猟兵の決闘は認めん」

そもそも、鉄砲隊は戦闘服しか着ていない。

マキシムは狙撃兵種である。

そのようなことをやっていたのだが、すでに一騎打ち3回がおこなわれ相手側は出てこなくなった。

首に興味はないので、死体はお返しした。


初日はそれで終了した。

二日目には、降伏の使者を出したが、やはり拒否。

よほど、城の防御力に自信があるのだろう。

「これより、攻城戦を開始する、者ども気を引き締めよ!」

「お~~~~~」


「佐々木隊、稲富隊、攻撃開始!」

「撃ち~方始め!」ド~ンド~ンド~ンド~ン。

佐々木隊10門、稲富隊10門の青銅砲が火を噴く。

石垣がはじけ飛び、土塀が土煙を巻き上げる。

「各砲座修正始め」

「発射準備!」

「準備よ~し」

「撃ち~方はじめ!」

「て~!」

ド~ンド~ンド~ンド~ン。

佐々木隊10門、稲富隊10門の青銅砲がさらに火を噴く。

金鵄八咫烏城には、天守閣を作ったが、この時代の城にはまだ天守閣はなかった。

天守閣は安土城以降の文化である(らしい)。

城内には、平屋の建物や木組みの櫓などがあるだけである。


「佐々木隊、稲富隊、バリスタ発射準備」

青銅砲の射撃にどれだけの効果があるかは不明であるが、今度はバリスタである。

射程は約2丁(200m)は飛び、太い竹の矢を打ち込むのである。

但し、竹の中に信管付きの爆薬の陶器の筒を入れている。

着弾の衝撃で信管が作動し、陶器の中の爆薬が炸裂する仕組みであった。


「て~」

ブシュという音をたてて、竹の矢が飛んでいく。

ドカ~ン、城内で爆発が起こる。


こうして、攻城2日目は終わる。

三木城の石垣は砕け、大門も破壊されていた、それに各所で爆発が発生し、城内では負傷者、戦死者が多数発生していた。まさに地獄のような様相が呈されていた。


九十九軍の攻城兵は一切まだ攻撃を行っていない。

すべてが射程圏外で行われている。

城内からの銃も弓も届かぬところからの攻撃で反撃ができないのである。


城内ではこのような会話が行われていた。

「こんな馬鹿なことがあってたまるか、明日は打ってでるぞ」

「無茶です、相手は待ち構えています」

「しかし、このままでは、手も足も出ないではないか」

「ですが殿」

「何か策があるのか」

「・・・・」

誰もが、好手を思いつくことはできなかった。


観戦武官として、竹中半兵衛はこの地に来ていたが、驚きに満ちていた

一騎打ちにあきれていたが、次の大砲、バリスタ攻撃と今までの戦闘法を真っ向から否定するような戦い方であった。


「明日は、敵が打って出てくるのでないでしょうか」と半兵衛は言った。

「そう思うか?」

「はい」

「出てくるなら、楽でいいのだが」

「あれを用意しておきます」と副官の望月が言った。

「うん、頼む」

「あれ?」

「ああ、明日わかるのでは」


・・・・

「よいか!目指すは敵本陣である、それ以外は無視せよ、鉄砲は一回打てば次までに時間がかかる、耐えて突撃せよ」

「は」


馬防柵や逆茂木など存在するが、九十九本隊は城の正面におり、距離10丁(1KM)ほどに八咫烏の幟旗が多く立っている、決死隊がこの本陣に突撃を敢行する計画であった

城包囲のため各隊は分散して配置されている。


払暁ふつぎょうまさに、人々が起き出さんとしているとき、大門が静かに開き、騎馬隊と足軽隊が静かに出撃する。


「発光信号、敵出撃した模様」

城の中の忍びが城の後方(城門の後方は、谷になっており通常の部隊では攻撃できない地形)に情報を灯火で知らせたようだ。(灯火や手旗などの通信手段の訓練が行われているということである)


「鉄砲隊射撃準備」

すでに、鉄砲には紙早合が詰められている。

そして、鉄砲射撃手3千に対して、鉄砲自体は9000丁が用意されている。

射手は厳しい訓練で選抜されたものだけがなることができる。


「うお~、敵将を討ち取れ!」

すでに、相当な音が聞こえている、さすがに3000もの兵馬が動けば音が立つ。

九十九本隊は1000程度の兵士であるから、直撃できれば形成を逆転できる可能性があった。

「撃て撃て!」

「撃てーい」

「攻撃せよ!」

各隊長が射撃の命令を出す

正確には見えないが、目の前を敵が通っていくのはわかる。


天まで届くような轟音と火炎が闇を切り裂く。

鉛玉が鎧を砕き、肉に食い込む音がする。

「耐えよ、今こそ好機ぞ!」

しかし、好機はなかったのである。

第2斉射が別所軍を襲う。

「ぐは!」

第3斉射終了までの時間は、ほんの20秒であった。

「ぐは!」

9000発の面制圧射撃が別所軍を襲った。

決死隊のほとんどが倒れていたか、重傷をおっていた。

生き残っていた者は、馬に乗っていた者が多かった、致命的な射撃は、馬が受けてくれたからである。射撃は人間の胸の高さで撃たれるからである。

撤退命令を出すべき司令官は戦死していた。

生きのこった兵士は血まみれになりながら、本陣の馬防柵に向かっていく。

「鈴木!ぐは」

今度は本陣の鉄砲隊が銃撃を行った。

完全に行足を止められた決死隊だった。


生き残った数百名がやっと後退を始める、辺りに朝日がさし始める。


「慶次郎まて!」

騎馬隊を指揮して、後を追う態勢の前田慶次郎が止められる。

「殿!」

その時、辺り一面に爆発音が響く。

対人地雷が爆発したのであろう。

「よし、行け」

「突撃するぞ!」


赤備えの騎馬隊が城の大門までの1kmを1分で走破する。

「続け!前田ばかりに手柄をとらせるな!」柳生新次郎が絶叫する。

「行くぞ!興福寺の力見せる時である!」宝蔵院胤栄が叫ぶ。

「狙撃隊は、支援射撃を行う」滝川一益が指揮をとる。

全身に草をかぶった男たちがわさわさと動き始める。

彼らは、城の狭間さまに銃弾を打ち込み、櫓の上の弓兵などを始末するかかりである。


城内は乱戦になっていたが、さすがに、別所側は城壁の後ろから援護が可能であった。

鉄砲は少ないが、威力を発揮する。

「手りゅう弾を使え、ウェポンフリー」

歩兵隊(足軽)は、槍、刀以外にも手りゅう弾を持っている

火縄で導火線に火をつける、シュワシュワと燃え始める。

壁塀は登ることはできないが、その向こうに、手りゅう弾を投げ込むことはできる高さである。

短い柄付きの鉄製手りゅう弾を次々と壁の向こう側に投げ込むと、爆発が巻き起こる。


「門も吹きとばす、蝶番の部分に仕掛けよ」バリスタ用の筒爆薬を仕掛ける歩兵。

ドッド~ン轟音が扉の蝶番部分を吹きとばす。

扉が砕け倒れる。


「吶喊せよ!」

「うお~~~~」



一度突撃を開始すると、恐るべき攻撃力を持っているのが、九十九軍であった。

その日、三木城は陥落した。




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