第42話 人それぞれ
042 人それぞれ
「師匠久しぶりですね」紀州に帰った九十九を出迎えたのは、酒造りに精をだす元坊主(?)の覚禅坊胤栄であった。
「おお、九十九よ久しいな」
すでに少し入っているのか顔が紅い。
「師匠もう飲んでいるのですか?」
「うむ、仕方ないのじゃ、儂は仕事をせねばならぬ、出来を検査するのが大変なのじゃ」
「ところで、そこの少年は?」
胤栄の側に、小僧が立っている
「おお、そうじゃな、この子はな小さいのに、槍の修行にきたのじゃ」
「宝蔵院の寺の方がよいのでは?」
胤栄は酒ばかり飲んでいるので、修行にならないのではと思ったのである。
「寺に、儂がおらんと聞いて、この紀州くんだりまできたのじゃ」
「そうですか、少年、よくぞ此方まで来ていただきました」
「可児才蔵と申します」少年は育ちがよいのであろう、ちゃんと返事ができた。
「望月、
「は」望月はどんな時も、いう通りに実行する。
「それ見ろ、才蔵よかったな、これで槍以外も修行できようぞ、淡路で待っておれ」
ちなみに、淡路には、宝蔵院流の槍使いが何人も講師として赴任している。
「有難き幸せ」
本当に幸せなのか?と考えないこともないそんな今日この頃であった。
こうして、可児才蔵少年は、井伊虎松と一緒に淡路行きが決定した。
一方、竹中半兵衛とは、尾張で別れたが、その時には、すでに、鈴木家に仕える話がまとまっていた、後は、自分の縁戚に当たる西美濃衆をどれだけ受け入れられるのか、または、ついてくるのかの調整を行いに美濃に帰っていった。
「これを、毎日とってください」
「何ですか?」
「半兵衛殿は、少しやせすぎでしょう、滋養が足りていないようなので、兵糧丸です、特に蜂蜜や砂糖をたくさん使っているので美味いと思います」
「ありがとうございます」
「早く、うちに来て、食事改革から始めないといけません、できるだけ栄養をとるようにしてください」
「まるで母親の様ですね」
「いえ、父上です」と榊原亀丸が真顔でいうので、皆が爆笑した。
大阪城(仮)はほぼ完成?していた、そもそも、完成があるのかわからない。
本城ができれば、支援の砦などを作る必要があるのである。
さらに外側へと堀などが作られていくに違いない。
星型(稜堡型)要塞の主要道を進むと周囲の壁から圧倒的な射撃を受けることになるであろう、左右から堀越しで射撃の的になるようにつくられている。
「立派な要塞になりました」
「うむ、世界初ではないかと思う」
「日ノ本の火縄銃では、向こうには届かないでしょう」
「おお、誰か攻めてこないかな」
「此処は悲惨なことになりそう」
皆が、架空戦闘を開始していた。
セメントでできた櫓からは、此方を一望できるがそのような櫓が何か所も存在する。
基地機構はほぼ地下に存在するため、大砲を打ち込まれても問題がない。
ただし、今現在、日本国中で大砲を装備しているのは、鈴木家だけである。
もっとも警戒すべき、曲射砲であるが、炸裂砲弾が作りだせないのでやはり此処数百年は安心であろう。
各所にその大砲(青銅砲)が外側に向けて装備されている、因みに此方の砲弾は炸裂砲弾を使えるし、開発を完了している。
製鉄技術が完成すれば、鋼製大砲に入れ替えればOKとなる。
しかし、この時代では溶鉱炉(高炉)はおそらく無理であろう。
一応、狙いとして狙われるべき天守閣は造営されている、戦時は、皆地下に潜る訳だが、ダミーとして、きれいな造形を作り出しておく必要があったのである。
「よくぞ参った」大阪城(仮)の現場監督の雑賀孫一である。
「兄やん、ようもまあこんなもん作ったな」
孫一の趣味は、今や城づくりである。
「おお、九十九、儂これできたら、次何しよか」
「兄やん、次は姫路城やで、ちょっと今侵攻中やさけ、待っといてよ」
「そうか、姫路城か、ええな、次はどんなことしちゃろかな」(どんなことしようかなという意味)すでに半分妄想に浸りつつある中年オヤジだった。
「ところで、本国の連中が何とか、出番くれいうてうるさいんや、どっか戦場紹介してくれよ」
戦争はすべて、九十九傘下の軍団が取り仕切っている状態であり、本国の重臣たちは出番がない状態である。平和でよいと思うのだが、人間という者は、そういう者であるらしい。
「ほいたら、四国討伐に軍だしたらええんちゃうか、四国の三好を殲滅して、四国統一するようにいうて、輸送は九鬼君にいうたら手伝ってくれるし、領地になったら、こっちにもある程度回してよ、家臣に一万石の大名の約束してる子多いんやさけよ」
「おおわかった、ほな、津田
「はいはい」
「まあ、今日はじっくり見て遊んでって」まるでどこかの親戚の叔父さんみたいな孫一だった。
この大阪城(仮)は、畿内攻略の中心拠点となる、ゆえに、兵力も九十九軍の主力海兵隊以外の陸軍兵が常駐することになる。
そして、摂津の平野部に対して大変な圧力になりつつあった。
大阪城(仮)大広間、
城主名代:鈴木九十九大和守重當
正室:織田犬
参謀総長:
側近:親衛隊長:望月出雲守(甲賀忍者組頭)
九十九銃勇士:霜兵衛(白い死神)、加留羅蓮国(ブラックフェザー)、諏訪賀利一(釘打ち:馬の世話人)、竜堂未来(側室:金髪の死神)、財津(ロシア名ザイツエフ:未来の従者:金髪の死神2)、荒部芳富、佐々木義国(国崩し)、稲富直秀(国崩しの弟子)
九十九親衛隊:(通称息子達)
吉弘鎮理(高橋紹運)、真田源五郎昌幸、本多平八郎忠勝、榊原亀丸康政、海野才蔵(真田昌幸従者)、柳生厳勝(新次郎の息子)、井伊虎丸(赤子)、可児才蔵
本当の息子娘:鈴木マキシム(男)、ソフィア(女)、ソロモン(男)、ナディア(女)
九十九四天王:柳生新次郎宗厳、宝蔵院胤栄、滝川彦右衛門一益、前田慶次郎利益
剣豪:戸田勢源、川崎
武将:島左近、松永弾正久秀、服部半蔵正成(保長の息子)
忍び組頭:服部半蔵保長(伊賀)、百地丹波守正永(伊賀)、藤林長門守(伊賀)
海軍:九鬼浄隆(海兵師団長)淡路国主
職人:芝辻清右衛門(鉄砲鍛冶)、信楽刑部(陶器職人)、百瀬甚五郎(大工:建設師団長)、神屋伝兵衛(杜氏)、九鬼嘉隆(真珠養殖)(浄隆の弟)
太田左近(農業大学頭)
人質の息子:北畠具房、筒井順慶
与力:真田昌輝(昌幸の兄:鈴木家が隆盛であるので、武田は兄に任せやってきた)
商人:今井宗久
などが大広間に座り、九十九の話を聞いている、今日は、大阪城(仮)の完成パーティーである。
天守閣の外でも、陸軍兵、海兵隊員などが、大勢、集まっている。
「であるからして、我らの目指す地は、姫路城となる!」
なぜ、京を目指さないのか?→面倒だから、其れよりも生野銀山制圧を目指している男であった。
今、この鈴木家というか、鈴木九十九家は莫大な利益を上げている。
米の相場、銅の灰吹き法、真珠、酒、綿関連、絹関連、陶磁器、漆器、各種の食品、南蛮貿易、堺からの税徴収、石鹸、鉄砲販売、海運事業、そして、人には言えない海賊事業などまさに、日本の富をすべて吸い上げてやろうというくらいで儲けを上げている。
その富が城や南蛮船に変わっているのである
そして、領国は農業改革と食文化の改革により、安定して暮らすことが可能となっている。
そのことは、人々を宗教に駆り立てることがすくなくなり、急進な宗教の普及が抑えられている効果を生み出している。諸行無常の世界感が人々を宗教に駆り立てるのである。
さらに、孤児救済事業を行っているため、孤児も減り、浮浪者が減り、世間が安定化している。
そして、その孤児たちは今や、大阪城(仮)の2の丸、3の丸の広場で鍋をつつく立派な兵士へと変換されているのであった。
領国の犯罪者は懲役労働を各地で行わされる。
特に、火薬作りに回される犯罪者は死亡率が高い。(世間には知らされていないがな)
一揆の定番の一向一揆も大将の本願寺顕如が紀伊鷺ノ森御坊にいること、また、領国内では、あまり浸透しないことで、鈴木家領国内では発生しない状況を作り出している。
もちろん、本願寺側にたいしても、決して無理なことを強いたりはしていない。
きわめて友好な関係を築いている。
「とにかく、今日はめでたいからの、腹いっぱい食って楽しんでくれ」と男は締めくくった。
それから、ほぼ一昼夜に渡り大宴会が続いた。
メインイベントがなぜか、九十九のつくる牡丹鍋やすき焼きというのは何とも奇妙なものであったが、ほぼ全員からリクエストされるため、あちこちで鍋を作らされる男だった。
また、あちこちで鍋を作ってやって回る世話焼きな面も見せる男であった。
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