第17話 来客
017 来客
そんなこんなで、芝辻師匠にライフル銃身の製作を依頼した俺は、後装式銃の設計に
そもそも、ライフル銃は、丸い鉛玉を撃つための機構には向かない。
椎の実型の銃弾を発射するための機構である。
いわゆるミニエー弾を発射するわけだが、今までの
さらに言うと、前装式だと、ミニエー弾を入れるのが大変難しかった、ミニエー弾は発射と同時に、下部が圧力により開いて、銃身に張り付く形になりそこで、回転運動を与えられながら前進して、銃口から飛び出ていくので、大きさはほぼ銃身と同じ大きさになっている。
後装式も初めは、いわゆる紙早合のように火薬と弾をセットにしたものが使われていたようだが、俺はそれをすっ飛ばしていく。
実は、内緒なのだが、アイテムボックスの中には、雷三水銀が入っていたりするのだ。
転生特典でほしいものリストの中に入れておいたものである。
カラスは高価なものはダメだといっていたのだが、これは、現代社会では高価なものには当たらない。
じゃあ、M2重機関銃はと聞くと、オーバーテクノロジーはダメと言われてしまった。
しかし、タングステンの粉末はよかったらしい。
カラス基準は謎な部分が多い。しかし、できるだけ楽をするために、思いつくことをいろいろとお願いしてみた結果である。
まあ、とにかくスウェーデン鋼だけはできるだけ多く入れてもらっている。
この鋼の優れているところは、日本の鉄に多く含まれる硫黄分が少ないところである。
日本は火山国であるため、どうしても硫黄分が多いらしい。
それになんといっても、クルップの砲身はスウェーデン鋼によりつくられていたらしい(受け売り)。
そんなわけで、銅から真鍮を作り、それを利用して薬莢を作成する、器具の製作にも取り掛かる、鍛冶の修行をさせてもらったので、自分でいろいろとできるようになってよかったな。
話はもどるが、薬きょうは発射とともに広がり、ガスを銃身の前方のみに集中させる役割を持っているため、爆発エネルギーを弾頭に効率よく与えることが可能になるため、射程を伸ばす効果を持っている。
雷三水銀で雷管を簡単に構成できるため、火縄から撃針にできる。この撃針が雷三水銀の入った部分を叩くと、その衝撃で雷三水銀が爆発し火薬に点火させるという仕組みである。
火縄や火打ち石とはおさらばできるのはありがたい。
そんな妄想じみたことを考えていたその時。
「ごめんください」
玄関先で声が聞こえる
「どちら様ですか」未来が対応しているのが聞こえる。彼女も少しは日本語を使えるようになってきた。
「拙者は、滝川彦右衛門と申す」
「同じく、前田慶次郎と申す」
「わたくしは、佐々木義国と申します」
鴨がネギしょってやってきた!
「ミラ、入ってもらいなさい」と奥から声をかける。
「初めまして、わたくしは滝川彦右衛門、此方は、甥の前田慶次郎です」
二人の大男である。
「おお、あの有名な、お二人ですな」もちろん、この世界で有名なはずはない。
「いえいえ、あなた様こそ有名な、九十九様ですな」と
おそらく皮肉で返したのであろう。
「失礼、なんといいますか、私は神、いや八咫烏様を信仰しておるのですが、八咫烏様からの神託により、お二人のことを知っているので、つい有名などといってしまったのです」
嘘である。
「そうでしたか」と驚きの二人。この時代の人間は迷信などに非常に弱い。
常に命をかけているため、まさに、藁にもすがる思いというのがあるのであろう。
「すいません有名ではありませんが、某は、佐々木義国と申します」
「いえいえ、もちろん、佐々木殿も神託で名は聞いておりますぞ」
嘘である、初めて聞く名であった。
「それで、今日はどのようなご用件でしょうか」
「はい、まずは、わたくしから」こういったのは滝川彦右衛門であった。
簡単に言うと、滝川は、甲賀の里で、紀伊の鈴木が人材を求めているという噂を聞いて、同じく浪人?をしている甥の慶次郎を誘ってやってきたようだ。
いわゆる就活にきたのである。滝川は甲賀の忍びの流れをくむ。
佐々木義国の方は少し違っていた、浪人ではなかったが、近ごろやってきたという種子島なる武器を勉強したくて、芝辻のところにいったらしいが、根来にすでになく、この平井にたどりついたらしい。
先に、芝辻に行ったが、企業秘密の守秘義務があるため、先に俺のところで許可をとるように言われたらしい。
「拙者も、種子島を勉強したい」と滝川。
「まず、この種子島ですが」一丁の銃を取り出して見せる。
「売ることはできますというか、堺の納屋、今井さんの店で買えると思います」
此方の銃は、今のところ、堺の納屋(今井)の店に卸している。
「しかし、それ以外のことになれば、当家に士官した者にしか、お教えできかねます」
「では、某は、士官できるのでしょうか」と滝川。
「すいません、今、私が出せるのは、一人100石相当程度しかありません」
俺が、知行地をもらっていないせいで、皆には、何石相当の賃金しか払えないのである。
ただし、この何石というのは、土地であり、この○○石を生産できる土地という意味である。
そういうことなのだが、仕組みとしては、その○○石は実は5公5民(税率)なので、収入としてはその半分しか懐に入れられない、つまり300石相当というのは、実質150石を支払えばよいのだが、俺はそのことを知らなかったので、300石を支払っていた。
つまり、もらう方からすれば、土地600石相当の給料となっていることになっているのであった。皆はそれを正してくれなかった・・・。
「いきなり、100石もいただけるのですか」と驚く滝川。
誰も、俺の相場観を正してくれるものもいなかった。
周りの人間は、太っ腹な
「すいません、わたくしも家臣になれるのでしょうか」と他家の家臣のはずの佐々木氏がつぶやく。
「内通しないのであればですが」
「もちろんでございます、わたくしは、種子島を勉強できればよいのです」
その目はまさに、執念に焦がれていた。趣味のためなら、すべてをなげうつタイプの人間なのかもしれない。
「わかりました、では契約書をご用意いたしますので、少しお待ちください、契約書は八咫烏様への起請文の形式になりますので、破られたときは、神罰が下りますので、それだけはご了承ください」と簡単に恐ろしいことを言ってのける男。
一応そういうことにしている。
神罰なのか、魔法なのか、自分でもはっきりしない部分もあるのだが。
何も起こらない可能性もあるが・・・。
契約書(起請文)に各自サインし、血判を押すと、ふわりと青い光がかすかに発生する。
やはり、何らかの力が発生しているに違いない。
前世ではギアス(強制力)の力は圧倒的だった、死ぬほど苦しむと書かれていると本当に死ぬほど苦しんだのだからな!
この契約方式により、日本国中のヤクザが百瀬組の傘下になってしまったほどだった。
しかし、これだけの光が発生しているが、本人たちは、何の反応も示さないので何も見えていないのかも知れない。
それにしても、早く領地をもらわないと、家臣を食わせられなくなるな。
そして、この時代では、家臣の家臣は
しかし、この男はいわゆる家臣でありながら、次々と家臣(陪臣)を増やしていくという常識からかなりはずれた存在になりつつあったのだが、周りの者はそれを止めなかった。
止めるべき主君、孫一は鉄砲の訓練と城づくりが面白く、それに気づけなかった。
だがそれは仕方がない事なのかもしれない、孫一の側用人のこの男は孫一の側にまったくいなかったのだから。
責任はこの男に帰することになるのである
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