第6話 柳生一族
006 柳生一族
「貴様!無礼にも程があろう、表へでろ!」
少年は大激怒状態に・・・。
「ねえ、兵衛、彼めっちゃ怒ってるけど」
「だめだよ、ただでさえ、家が追い込まれてるんだから」とさらに油を注ぐ霜氏。
「貴様ら、まとめてたたっ切ってやる」
兵衛、火に油を注ぐの巻。
「ちょっと、待って、剣術ならいたいだけ、なんですけど」
「体で教えてやる、あの世で復習するがよい」
表ですでに抜刀状態の柳生?氏。
「真剣なんですか?」
「うちの稽古は真剣だ」(嘘だけど)柳生氏。
「だめだよ、逃げよう九十九」
「逃がさんぞ」
どうやら窮地に追い込まれた模様。
「よし」自分で作った刀を抜く俺。
「ええ、剣術素人なんでしょ」と霜。
だが、猪相手には、無敗の俺。
「えええい」気合とともに振り下ろされる一太刀。
剣術は素人だが、動きは十分追えている。
此方も刀で受ける。
ガキンといういやな音ともに火花がちる。
「刃で受けるとは!」
左下方から二撃目、左上方から三撃目と攻撃を受ける。
カキンという音ともに、柳生氏の刀が折れる。
「くそ!刃で受ける馬鹿がいるか」
「え?」
あとでわかったことだが、鎬で受けるらしい、刃同志でぶつけたりしないようだ。
「せっかくの俺の刀が」しょんぼりする柳生氏。
スウェーデン鋼が勝った模様。
「早くどこへなりと行け」立ち上がった柳生氏。
「いやいや、剣術の修行にまいりました」
「お前の方が強いじゃないか」
「刀が折れただけですので」
「そうだ、私は鍛冶なのですが、これを差し上げましょう」
といって、スウェーデン鋼の偽日本刀を渡す。
「これをもらってもいいのか?」
「どうぞ私は、これからも作れますので」
「すまん、正直ありがたい」と柳生氏は頭を下げる。
「いえいえ、此方こそ、剣を折ってしまい申し訳なかったので」
「今うちは門人などとれる状態ではないが、少しは某がお教えできると思う」
俺には明らかに、剣術の片りんはなかったのだ。
その晩、柳生屋敷では、「俺」が歓迎用の料理を作り、柳生一族にふるまったのである。
「この、ボタン鍋という料理は本当にうまい、初めて食べる味ですな」
帰ってきた柳生父がいう。
「たいしたおもてなしはできませんが、ゆっくりとしていってください、新次郎しっかりと剣術の稽古つけてあげなさい」
「はい父上」
こうして、一か月修行をさしてもらう頃には、スキルのおかげで、剣術(中条流)を取得した。
そのおかげで、普通に殺陣を行えるようになった。
「それにしても、ツクモは本当に剣の才がある、この短期間にこれほど上達するとは」
柳生新次郎は驚きあきれる状態である。
ちなみに兵衛も割とやれるようになったのはご愛敬だ。
「それで、新次郎殿、うちで働かないか」
俺たちは、すっかり仲良くなっていた。
「すまんが、ツクモ、私は武士の子だ、鍛冶屋をすることはできん」
「おお、そうっだった、違うぞ、新次郎殿、わしは、鍛冶屋だが、そもそもはおぬしと同じ、豪士だ。雑賀衆の鈴木九十九重當という名を持っている。これから雑賀は力を伸ばす、お主に力を貸してもらいたいし、活躍する場はいくらでも訪れる」
「紀州の惣領か」少し考え込む新次郎。
「これからは、鉄砲の時代、新次郎殿!雑賀ではもう鉄砲づくりが始まっているのだ」
「鉄砲?なんだそれは」
「はは、新次郎殿、明日鉄砲の威力をお見せしよう」
こうして、夜は更けていく。
・・・・
「この筒のようなものが鉄砲か?」
はじめから、兵衛は背負っていたのだが、興味がいかなかったようである。
「ところで、これはどこから出てきたのだ」俺が鉄砲を持っていることに不信を覚えたのであろう、もちろん収納から取り出したのに決まっている。
「では早速、山に向かおう、猪か鹿がよろしかろう、鹿だけに」
「九十九、鹿はだめだ、大和では鹿は神の使いだぞ!」
「むむ、そうであった、忘れておったわ」
この男は生来の嘘つきである、もちろん知らなかったのである。
「では、猪一択で」
山に入ると、すぐに鹿を発見!やはり鹿県である。
狙撃体制に入るが、「だから、やめろ」不穏なものを感じたのだろう柳生新次郎が止める。
「おお、そうじゃ神の使いだった」
この男の記憶力は鶏並みである。
ぬたばでゴロゴロする猪を発見。
「おい!ピー」と口笛を吹く。
猪がこちらを視認する。
「ピギー」激怒して突進体制の猪。
ドーン、ドーン2発の銃声が森にこだまする
「いや、兵衛早すぎやし」
「いい狙撃だったよ、ツクモ」
猪は眉間を打ち抜かれていた。
剣の腕はそこそこだが、銃撃は一流の兵衛だった。
解体から肉までは、俺の
「なんとも恐ろしいものだな、鉄砲とは」
「20間であれば、鎧を貫く威力があります」と兵衛。
「それでは、剣術はもういらんではないか」
「そこが違うのです」と俺。
「何が違うのだ、圧倒的ではないか」
「銃はそんなに万能ではないんです」
「どういうことだ」
「まあ、簡単にいうと、撃った後はどうなりますか?」
「次を打てばいいのではないか」
「その間を狙われます」
「そうなのか!」閃いたとばかりに新次郎。
「そこですが、まあ、私の用兵では、銃は二人一組のツーマンセルを基本としたいのです」
「つーまん?」
「二人一組です」
現代の狙撃は基本二人一組となっている。
「一人が撃ち、一人はその間の護衛を行うわけです」
「そうなのか」
「そうなのです」
・・・・・
こうして、肉と皮にした獲物を担いで柳生屋敷に帰る。
今日は昼から、牡丹鍋で酒盛りである。
といっても、どぶろくであったが。
騒いでいると、一人の坊主がやってきた。
坊主といっても、頭を丸めているわけではない、頭巾で巻いているだけである。
僧侶には、
学侶はいわゆるお坊さん、行人は僧兵である。
そして、その少年僧は行人であろう。
「これは、これは、
「新次郎様、師匠よりお届けものです」と文を取り出す。
「まあまあ、よいところにこられた、一緒に食いましょう」と俺。
「九十九、お坊さんだから酒はだめじゃない」と兵衛。
「おお、そうか」
「加留羅殿は行人故問題なかろう」
「おお、しかし、猪肉は生臭では」
「先ほどからうまそうなかおりが漂っているのですが」と加留羅。
「うまいですよ、ではご一緒に、卵があればとんかつにできたのですが、残念です」
少年僧は、木の椀によそってやると、がつがつと食いだした。
基本的にこの世界の食は粗食でなおかつ量が足りない、もっと食わねば良い兵士になれないぞと、元帝国軍人は考えている。
・・・・
「ところで、僧兵というとやはり、興福寺ですか?」と俺。
「ええ、興福寺の坊の宝蔵院です」
「確か、槍術の権威の」
「よくご存じですね」
「ええ、これから行くつもりでした」と俺。
「そういえば、我々は武者修行中でした」と兵衛。
「ですが、ツクモは良いとして、兵衛はまだ早いですよ、終わっていない」
「新次郎殿、そこでお願いなのだが、我らとともに旅をしてほしいのだが」
「うーん、そう来ますか、ツクモといれば、腹いっぱいうまいものが食える、しかし私はいずれ、家を継がねばならぬ」
「家を継ぐのはまだ先でしょう、それに、我が鈴木家に仕えるのもありなのでは?」
「しかし、ツクモは次期当主の家来でしょう?そんなことが決められるのか?」
「それは、大丈夫です、私の言葉はあるいみ尊重されますので」
柳生家は、戦に敗れ、筒井家に臣従している状態である。
「では、旅をしながら考えさせてください」
「無理な時は、誰か門弟を派遣してください」
「心得た」
こうして、柳生一族をゲット?した。
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