第38話 訓練所
038 訓練所
1559年(永禄2年)
淡路国は、海兵隊の島になったのである。
そこでは、海兵隊が厳しい訓練を受けている。
そして、その中には、士官候補生も含まれている。
真田昌幸(47年生)、本多忠勝(48年生)、榊原康政(48年生)、吉弘鎮理(48年生)、服部正成(42年生)島 清興(40年生)九鬼嘉隆(42年生)鈴木マキシム(48年生)、筒井順慶(49年生)らである。
ほぼ売られたり、ほぼ人質、ほぼさらわれてきたりした子供たちである。
「次は、剣術である」柳生新次郎が先生役である。
島清興のみ実戦経験があるのだが、訓練不足であることを理由に、このキャンプに送りこまれた。
子供たちは、みな思想教育(洗脳)を受けながら、兵士として訓練を受けることを余儀なくされている。
小さいうちは、勉強が主になるが、体ができてくると、訓練も追加されてくる。
食については、肉を中心にバランスよく大量に食べることが推奨されているため、みな世間一般の子供より頭一つ分大きくなっている。
柳生新次郎は中条流、その師匠は、すでに奇跡的に視力が回復した戸田勢源である。
「次は、槍術である」宝蔵院胤栄はガチムチの親父である。
十文字槍を使う、そして、その弟子?に当たる前田慶次郎は自称方天画戟(ハルバート)をふるう。
「よしマーシャルアーツだ」と俺、合気道である。(前世で開祖から直伝されている)
「よーし、みんなよく頑張ったな、では、蛸壺ほりを始める」これは、百瀬甚五郎である。
建設師団お得意の訓練法、蛸壺堀である、自分用の塹壕をスコップで掘るのである。
これ以外にもカッター漕ぎと海軍兵学校と戦国が入り乱れる奇妙な修行風景であった。
休みの日は、牧場で馬の世話もさせられる(休みになっていない)。
牧場は、諏訪賀一族が取り仕切り、繁殖を担っている。
馬の世話ができないと、馬に乗ることが許されないため、騎馬武者希望の生徒はぜひともしておかなければならない必須の修行である。
馬は中国産の大型馬で日本の在来種と全く違う。
それと、戦闘用に音に対する訓練なども施されている。
蹄には蹄鉄が装蹄されている。(日本の在来種の馬には、蹄鉄は必要ないとされている)
一方、狙撃手志望は、狩猟を行う必要がある。
鉄砲自体は必修科目であるが、狙撃手は、狩猟経験のないものはなれないという不文律が存在する(鉄砲兵にはなれる)。
ただし、淡路島では難しいため、本土、紀伊や大和、伊賀の山脈で実地体験が必要となる。
狙撃手とは、一般の鉄砲兵とは違い独自に作戦を遂行する能力を必要とされる狙撃兵のことになる。
「みんな、よく頑張っているな」と俺。
俺の役割は、合気柔術を教えることと、
「みなのために、今日は、すき焼きを作ったぞ」近ごろはすき焼きやカツどんが流行りである。
牡丹鍋は近ごろ、
兵舎の食堂には、数百人の隊員が飯をがっついている。
俺は、味見だけをし最後の調整を行っただけであるが、なぜか、みなそれが非常に大事で、それだけで、まったく違う料理になるという、全員がだ・・・。
自分のテーブルには、先の子供たちが並んでいる。
自分の子供のようなものである(思想教育は鈴木家に忠誠を植え付けているとこの男は考えていた。しかし実際は鈴木九十九に忠誠を尽くすように洗脳されていた)鈴木マキシムは実子である。
「左近はみなの兄貴分だからな、弟たちの世話をよく見るようにな」
「はい、九十九様」
「ところで、源次郎、父上に紀州にくるように言ってはどうか?少なくとも、戦乱の具合は大分ましになるはずだぞ」
「はい、父に手紙を送りましょう、一万石という話は本当に良いのでしょうか」
一万石というのは、河内や大和、淡路に一万石の大名にならないかという誘いである。
鈴木家はすでに、100万石を達成しており、そのいくばくかは、俺に自由が許されている。
一万石で真田家が一家できてくれたら儲けものである。
「みな、儂の子も同じだから、万石の大名にしてやるからな、しかし、まだ戦の途中であるから、もう少ししてから場所を決めような」
「はい!」皆が答える。
「わたくしも入っているのでしょうか」とその中で一人暗い顔の筒井順慶である。
「もちろんじゃ、お前も儂の子じゃ、そう心せよ」
「はい!義父上」
「私も?」とかなり年のいった左近である。
「左近は子供というよりは、家臣として、大名にしてやるから、心配するな」
「は」
皆、優秀な戦国武将か戦国大名であったのであるから当然なれるはずだがな。
「本日は、芝辻砲の勉強になります」教師は佐々木義国である。
彼は、鉄砲の技術を学ぶために、祖国を出奔し、紀州にきた
そして、その弟子になるために、稲富という男も同国から出奔してきたやはり数寄者である。
佐々木は鉄砲より青銅砲(芝辻砲)の射撃が気に言ったようで、このように布教しているのである。
火薬の量や弾道学らしき講義が進む。
「しかし!今や時代は九十九様の開発した遠心式信管ですぞ!」
これは、砲内に刻まれたライフルにより発生する、回転力により、ストッパーが外れ、着弾の衝撃で激発し内部の火薬を爆発させるのです、これはすごい発明ですぞ」
そのすごい発明を大声で連呼しないでほしいものだ。
「この南蛮船のすごいところは、衝角による、体当たりが可能なことにあります、従来の和船と構造が違うために可能となっているのです。
竜骨という骨材がここに存在し、人間の肋骨のように横の柱が設置され、区画が切られることにより、水密が図られます、より沈みにくい構造になります」九鬼澄隆は、南蛮船の当初からの設計もこなしてきた技術武将になっていた。
今やその南蛮船(ガレット船?似)にも青銅砲が数門積まれている。
「皆さんどうですか、十分体に気をつけて過ごしてくださいね」忍者望月である。
日頃、副官として俺の横にいることが多い男である。
しかし、火薬や新技術の革新部分などを取り仕切っている重要な男である。
「本日は、新兵器、手りゅう弾について説明します」
「従来の手りゅう弾は、まあ実戦で使われたことはありませんが、陶器製でしたが、これからは、鉄製となります」
「陶器製ですと、ものに当たれば割れます、それで思うような効果を得ることができないことがありました」爆発する前に割れてしまうとただ燃えるだけであったりする。
「しかし、鉄製ですとわれません。そして爆発すると、鉄片が飛び散りますので殺傷力が上がります、そして、つい最近になり、やはり殿が考案されました、火炎手りゅう弾が完成しました」
「内部に、油などが詰められていて、爆発し、燃料が燃える仕組みになっています、海兵の皆さんは敵船に対しては、この火炎手りゅう弾を使うことになるでしょう」
「もちろん、陸兵に転属される場合でも、攻城戦の時はこれを使うことになるでしょう」
望月が取り出したのは、いわゆるパイナップル型ではなく、ドイツ軍が使っていた柄付き手りゅう弾であった。
肩を壊さずにしかも遠くまで投げるために柄付きの方が優れているであろうと開発されたものである。
「狙撃兵諸君には、これのことをよく知っていてもらいたい」狙撃兵講師は霜兵衛である。
「これは、対人地雷えむ十八クレイモアである」小さい瓦のように曲がった板である。
「これは陶器製だが、いずれは望月講師もいわれていたように金属化する可能性もある、我々狙撃兵はこれのここ」クレイモアの頭頂部を触る。
「此処に信管が取り付けられる、それを遠距離から狙撃爆発させる手腕が必要とされる。それと、敵の侵攻ルートを読み取る洞察力も必用だ、ちなみにこのクレイモアは扇状に鉄の玉をばらまく設計になっている。
我々の仕事はいかにして敵をキルゾーンに誘い込み、このクレイモアで被害を与え、狙撃により残敵を殲滅するかを問われているので、常に、戦場での下見、調査を行い、予定戦場を想定する訓練をしておくことが重要だ」
「最後に、戦場では、雨の降る日に、火縄銃は使えないので、各自、短弓の訓練も自主的に行っておくように」(実際には、多少の雨のなかでは使えるらしい、火縄に火薬を混ぜておくと火が消えないらしい)
この訓練所はとてもブラック企業のように訓練につぐ訓練であるようだ。
もちろん、深夜に、『敵襲!迎撃せよ』などといってたたき起こされることなどは日常茶飯であるということだ。
私なら、こんなところで訓練は願い下げだな。
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