第48話 最後の砦
048 最後の砦
芥川山城からの狼煙を発見し、敵の侵攻を確認した、三好三人衆の二人。
兵力は芥川山城に集中させているため、此方は、何もできない。
するならば籠城であろう、しかし、勝竜寺城の防御力はそれほどではない。
そうこうするうちに次の日には、八咫烏の幟旗が近づいてくるではないか!
たった一日で突破されたようだ。
「馬鹿な!」城内の者たちの心境はこうであろう。
まさに馬鹿馬鹿しいほどあっけなく勝負はついていた。
彼らは、一応、芥川山城の管理をするために一泊しただけで、そのまま前日にもここに到着することができた。
5000の兵がずらりと城をとり囲む。
もちろん全周は不可能である。
「三好日向守(長逸)殿は討ち死にされたぞ、降伏されよ」
物見櫓の上に登った同族の三好
「では、安全は保証するので退去されよ」
だが、現下の状況では、三好三人衆の退去できる場所は少ない。
四国(阿波、讃岐)が本願地であるが、そこには、鈴木重秀旗下の部隊が侵攻している。
阿波は攻略されつつあるという。
讃岐のみ残る形になるが、重秀部隊が迫ることは必定であった。
物見櫓の上に登った三好釣竿斎(政康)は「ふざけるな!」さらに怒鳴った。
「城の者たちよ、降伏せよ、我々は貴公らを死なせたくはない。生きてこそであるぞ」
「この城を枕に討ち死にしてやるわ!」
先ほどから、すでに準備OKのサインがちらちらと見えている。
「皆が迷惑しているぞ!釣竿斎」
「黙れ!」
ズド~ン、一発の銃声が響いて、釣竿斎の兜が揺れる。そして、ユラリと揺れたかと思うと、櫓の下に落下していった。ドサリと音がした。
櫓までは火縄銃の射程では、絶対に届かないと彼らは考えていたが、此方は、偽装網を被った霜達がひそかに櫓の周辺に近寄っていたのである。
「これで、降伏する準備が整ったであろう、これ以上やる気ならば、此方も全力で攻勢をかける。直ちに降伏せよ!」
・・・・・
陣幕の内に、一人の武将が引き据えられている。
「貴殿が岩成殿か」
「そうじゃ」この時代の武将は、兜を取ると河童頭になる、兜被っていると髪の毛(
河童頭が嫌だからではない、前世では角刈りだったので、河童頭は嫌とかそういうのはなのいだ、決してな・・・。
「はっきり言って、貴公らは、将軍殺しの罪がある故、許すことは難しい」
永禄の変(史実よりも早く起こった)で将軍暗殺の罪がある。
「どちらなりと行かれるが良い」
「行く場所などない、首を召されよ」すでに、死を覚悟しているのであろう。
しかし、降伏した者を殺すのは、あまり好きではない。
「では、出家されよ、興福寺は、義秋将軍の影響が強いから、根来寺で出家すれば良かろう、今日から貴殿は成真院友通(じょうしんいん ともみち)を名乗るが良かろう。」
「霜よ頼んだぞ」成真院は霜氏が入る根来寺の寺院の名称である。
「は」日頃は公家顔の霜は今、緑、黄緑、黒などに塗られている。
これで、森に潜まれると、忍びでないと発見できなくなるらしい。服装も迷彩服を着用している。
成真院友通は、八咫烏起請文にサインし、服従を誓った。
かくして、勝竜寺城の戦いは終わった。これで、上洛の準備が整ったのである。
後続部隊が、勝竜寺城に入り占領を完了させると同時に、要塞化事業に速やかに移るのであった。
情報は統制され、岩成友通も戦死したことになっている。
成真院友通は根来の僧兵ということになった。
金鵄城から上洛用の衣装と装備などが届くのを待つ。
それと、皇室、貴族用のお土産も必要である、非常に面倒だ。
簡単に、来てくれなどと言ってくれるなとも思うのであった。
第一種礼装(武者鎧姿)を身に着けて、京都市内を目指す。
「重くて、暑いな」これが第一種礼装に対する感想である。
頭には変な被り物を被っているのが自分でも滑稽だ、せめてグリンベレーとかにしてほしかった。前田慶次郎の騎馬武者隊を筆頭に、近衛兵(歩兵)、鉄砲隊(銃歩兵)が続く。
京の人々は、そんな行列を物珍しそうに眺めている。
ただし、馬の大きさが尋常でないので、皆驚くのはそこである。
洛中(京都市内)の焼失した場所に、兵を駐留させ、自分たちは、本能寺で宿泊するように命じられる。
「儂の命を狙っているのか!」と声には出さないが、少し緊張する。
山科言継卿がそのようにセットしてくれたのだがな。
「それにしても、三好を撃ち滅ぼして上洛するとは何とも・・・」
「え?そうじゃなかったんですか?」
「帝の上洛要請に、さすがの三好といえども邪魔だてはいたしますまいが・・・」
「そんなものなのですか」
「少なくとも、一声くれれば、麿が斡旋にいったのは間違いないでおじゃる」
そんな言葉づかいめんどくさくない?と思いつつ、つまり攻略なしで、上洛できたということでしょうか?と心の中で問いかける俺だった。
「殿、これで畿内を制覇しましたぞ、殿こそ将軍にふさわしいお方ですぞ」と戸次道雪。
「いや、まだ近江とか、丹波、丹後とかあるでしょう」
道雪は?という顔である。
因みに俺は、鈴木家の一部隊だからな。
後で知ったが畿内とは、大和国・山城国(山背国)・摂津国・河内国・和泉国の五カ国で現在の近畿2府4県とは違うらしい。
もちろん俺は、そんなこと知っていた。もちろん、うんうん。
我らの紀伊は何処か!近畿じゃないの?
紀伊国は南海道であり、構成は四国と和歌山である。
なるほど、いまでも、よその県の人は和歌山何処?の質問に四国とか、岡山とか言うものネ!
案外、四国で間違ってないじゃん!
そう、和歌山県は四国にあるのだった。
嘘です。
・・・・・
従五位下
五位にならないと、帝のいる宮殿に登ることができないらしい。
本当は、大名?の鈴木孫一重秀が来るべきところであったが、戦闘が必要だったため俺がきてしまったので、間違いらしい、しかし、京都の治安を考えれば、孫一に来させることは急には無理なのである。
お礼を言われるのも一苦労と言うところであった。
全てを山科氏に任せ、昇殿した俺は、案内されて帝の出てくる場所に案内される。
平伏して待っていると、はるか前方に御簾のかかった、一段高いところに帝が現れたようだ。
「こ度は上洛ご苦労であった」と帝でない人間が言う。おそらく身分の高い人であろう。
「ははあ」
「面を上げよ」
直接見たりしていては、不敬になるらしいので、少し顔を上げるだけ。
話の内容は、全て、帝以外の人間が述べた。
なかでも、真珠の首輪には大変感謝している。それと干し椎茸もとてもうれしい、ついでにいうと、金も寄進してくれるもっとうれしいということであった。
お礼に、お前には、従五位下蔵人をあげる。孫一にも従五位紀伊守を上げる。との事だった。
さすがに、それだけだと、つり合いが取れないから、他に何かいるものとかないか?しかしあげられるものは少ないけどね。という事であった。
「それでは、一つだけお願いしたい儀がございます。」
「言うてみよ」と身分の高い人。
「は、我らは、大坂に城を建てましたが、その際、本願寺殿から土地を譲っていただいた経緯がございますれば、その際の約定として、代わりの土地をぜひとも京にて用意すると言うものでございました。ぜひとも、京の街中に、本願寺の寺院を建てるお許しをいただきたくお願い申し上げます。」
「ふむ、我らは構わぬが・・・・」身分の高い人は何か言いたげだ。
「それでは、私が説明しておきますので」と山科が話を引き取った。
・・・・・
「
「はあ、山科殿」因みに山科氏は
もっと金よこせと言われそうだ。
「賀茂川の水、双六の賽、山法師。これぞ我が心にかなはぬもの。と白川院がおっしゃったように、比叡山の僧兵どもがどのように動くのかわかりません」
「つまり、本願寺を建てれば、叡山の僧兵が攻めてくるかも?と言うことですか」
「そうでおじゃる」
「参考にさせていただきます」
「うむ、それがよろしかろう」山科は俺があきらめたのだろうと思ったのだろうが、俺は現在ある西本願寺の場所に本願寺を作ることを決めていた。これは歴史の必然であろう。
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