第49話

買い物へ行くにしても隣町へ行かなければならないのだから、迎えに来てくれた親戚と共に行けばいいだけだ。



嫌な予感に促されるようにして背中に汗が流れ出す。



それはとても冷たくて、自分でも身震いしてしまうものだった。



「じゃあ、ユウジくんは一体どこに……」



呟いた時、玄関チャイムがなって僕はビクリと体を震わせた。



電話の向こうで親戚がなにか言っているけれど、もう僕の耳には入ってこなかった。



僕は電話を滑り落とし、そのまま玄関に手をのばす。



もう1度チャイムが鳴る。



僕は唾を飲み込んでドアスコープへ顔を近づけていく。



苛立ったようにチャイムが連打され、僕は右目をドアスコープにひったりと貼り付ける。



と、ドスッ!



小さなガラスが割れる音はかき消されて、僕の右目にアイスピックが突き立てられた。



衝撃でその場から動くことができないまま、アイスピックが引き抜かれる。



真っ赤に染まった世界の中にヒトミが笑いながら立っていた。



泥にまみれたヒトミは右手にユウジくんの体を引きずっていて、それはすでに事切れていることが明白だった。



2、3歩後ずさりをした僕はそのまま尻もちをつく。



右目からボトボトと血が流れ出して止まらない。



電話はまだつながっているようで、いつまでも親戚の声が聞こえてくる。



僕は声を上げることもできず、四つん這いになって部屋へ逃げ戻ろうとした。



が、その背中を誰かが掴んだ。



誰が?



フーッという呼吸音と、腐敗臭、そして土臭さが鼻腔を刺激する。



ソレは鍵のかかっている部屋に入り込み、そして僕の背後にいる。



「ケイタ、アイシテル」



それは壊れた機械のようにガタガタとした声で言うと、後ろから僕の首に噛み付いたのだった。



END

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復活の村 西羽咲 花月 @katsuki03

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