第15話
声が震えた。
いつまでもここにいることはできない。
逃げだと言われればそれまでだ。
ヒトミの葬儀も終わっていないのに帰るなんて、とんでもない男だと思われるかもしれない。
だけど僕は一刻も早くこの家から出たかった。
この、重苦しい空気に包まれた家から。
「帰るなら復活祭が終わってからでもいいじゃないか」
またその話か。
いい加減にしてくれよ。
死者は蘇ったりしない。
100年に1度の祭りだろうが、1年に1度の祭りだろうが、それほど明確な事実など他にはない。
「死んだ人間は死んで終わりなんだ!」
つい、声を荒げてしまった。
ユウジくんがカッと目を見開く。
信じられないと行った様子で僕を見つめる。
「とにかく、僕はもう帰るよ」
左右に首を振りユウジくんの部屋を出ようとしたとき、ドアをノックする音が聞こえてきた。
視線を上げると祖母が立っている。
「ご飯の準備ができましたよ」
祖母は抑揚のない声でそう言ったのだった。
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