第17話

「大丈夫だよ。こっち側は風呂場とトイレだから。真っ昼間から風呂に入る人はいないだろうし、トイレの窓にはカーテンがかかってる」



「それにしても無謀だと思うけど」



いくら今日の日は誰も家から出ないと言っても、裏口くらいは開け閉めしそうだ。



特にこの家には今沢山の村人が集まってきている。



誰もが家から出ないなんてこと、僕には考えられなかった。



「こっちに来て」



手招きされて逆側の窓へと向かう。



そこからは村の様子が見渡せるようになっていた。



昨日の嵐は過ぎ去って、今日は太陽がさしている。



雨に濡れた木々がキラキラと照らされてとてもキレイだ。



「どこに人がいるっていうの?」



聞かれて僕は首を伸ばして窓の外を確認した。



田んぼの畦道にも、大通りにも誰の姿もない。



それどころか、犬や猫の姿も見えなかった。



「僕たち2人が外へ出たことさえバレなければ大丈夫なんだよ」



ユウジくんの目が輝いている。



まるでオモチャを与えられた飼い犬のようだ。



「誰も外に出ていなことはわかった。でも……」



「お姉ちゃんが死んだままでいいの?」



ユウジくんの考えを改めさせようと思った言葉はかき消された。



代わりに心臓にズドンッと大砲を打ち込まれたような大きな衝撃を受ける。



『お姉ちゃんが死んだままでもいいの?』



それは生き返る可能性に期待を持っている言葉だった。



いや、生き返るのだと信じていると言ってもいいのかもしれない。



僕は生唾を飲み込んでユウジくんを見た。



「手伝ってくれるよね?」



その言葉に僕はもう頷かざるを得なかったのだった。



☆☆☆


静かな昼食が終わったあと僕は再びユウジくんの部屋を訪れた。



窓から外を確認してみても、まだ外へ出ている人の姿はない。



また、この家から出て行った人も1人のいないようだった。



どうやら僕が考えていたよりもずっと、この村の祭りに関して誰もが真剣に考えているのだということがわかってきた。



「そろそろ出よう」



ユウジくんが緊張した声色でそう言い、窓からロープのハシゴを垂らした。



「もしもバレたらどうなる?」



「……わからない。僕もこの祭りに参加するのは初めてなんだから」



そんな調子でよく家から出るつもりになれたな。



そう思ったが、今はユウジくんの言葉に従おうと考えているので黙っておいた。



ロープのハシゴは想像以上にグラグラと揺れて、今にも地面に落下してしまいそうな不安定感があった。



それでもどうにか地上に降り立った僕たちはすぐに敷地内の大きな木の陰に隠れた。



今の所気が付かれて誰から外へ出てくる気配はない。



2人で息を殺して門から外へ出る。



大きな建物もないこの村では身を隠しながら移動することは難しい。



ユウジくんは脇道へと入っていき、僕はその後を追いかけた。



道とも言えないような草の生い茂る歩道を歩いて行くと、見慣れた場所に出た。



そこは僕がこの村に来てから訪れたあの墓地だった。

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