第7話
というか、僕は今死体の上に立っている?
そう気がついて思わず片足を上げたり、下げたりを繰り返した。
「土葬の続けるのは、復活祭をするためなの」
「どういうこと?」
「復活祭は死者を蘇らせるためのお祭り。つまり、死んだ人の体が必要になるってことなの」
なるほど。
魂だけ呼び戻しても入れ物がなければどうにもならないということらしい。
「けど、とっくに腐ってると思うよ?」
この湿度の高さで腐敗していない死体なんてない。
ヒトミは肩をすくめて「私もそう思ってる。だけど復活するんだって信じてる人もいる」と、答えた。
一刻も早くここを立ち去りたい僕はヒトミを追い越して丘を下る。
丘の上から見る村の景色は最高だったけれど、立ち止まる気分にはなれなかった。
「それで、祭りはどうやって行われるの?」
丘を下って家の近くまできた時、ようやくその質問をした。
死者を復活させるために土葬をしているということは、その死体を掘り起こしたりするんだろうか?
それじゃまるでホラー映画だ。
「復活できるのは1人だけ。それを選ぶのは神主さんなの」
「そういえば丘の近くに鳥居があったね」
神社があるのだと思って興味を持ったけれど、墓地に行った後だったので立ち寄らなかったのだ。
「そう。この村にある唯一の神社よ」
「神主さんはどうやって蘇らせる人間を選ぶんだ? 生きていた頃の行いとか?」
ヒトミは左右に首を振った。
「それは誰も知らないの。祭りの日に神主さんは1人で儀式を行って決めているんだって。そしてそれは、誰も見てはいけないの」
「へぇ」
ますます怪しい。
一体どんな儀式なのか覗いてみてやろうと思う人はいないんだろうか。
それこそユウジくんのような若い男の子はそれくらいの悪さはしそうなものだ。
しかし、今までそういうことをした人はいないらしい。
最も祭りが100年に1度しかないのだから、その伝承も真実かどうか疑わしいけれど。
「それでね、神主さんは祭りの夕方までに選ばれた人の家に行って、玄関先に赤い花を飾るの。それが選ばれた証になる」
ちなにみ、選ばれるのは祭りのある年に死んだ人に限る。
ヒトミはそう説明を付け加えた。
「なるほどね。それで、選ばれた家の人はどうするの?」
「赤い花を置かれた家の人は、花を持って神社へ行くの。そこでお守りをもらう。その後、死んだ人を墓地から掘り起こしてお守りを握らせる。そして森の中にある湖に死んだ人の体をうかべるの。そうすればその人は蘇る」
「湖?」
ヒトミは頷く。
「その湖は復活の湖と呼ばれているの。特別な力を持つ水が蓄えられているんだって」
なるほど。
さっきの小川の水といい、この村では水を大切にしてきているみたいだ。
農作物を作るためにも、人が生きていくためにも必要なもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます