第19話
☆☆☆
「花が! 花がある!!」
夕方になって鐘の音が鳴ると同時に祖母の叫び声が玄関から聞こえてきた。
客間に戻っていた僕は慌てて部屋から飛び出して玄関へ走る。
そこにはすでにヒトミの両親が集まってきていて、祖母の手に握られた赤い花を見つめていた。
「やった、ヒトミが選ばれたんだ! みんな見てくれ! 花があったんだ!」
父親の言葉に葬儀の手伝いで来ていた村人たちも集まってくる。
僕はあっという間にその場から押しのけられてしまった。
「よかった! よかったねぇ奥さん」
「ヒトミちゃん戻ってくるよ!」
「あぁ……ヒトミ。ヒトミ……!」
母親の泣き崩れる声が人垣の向こうから聞こえてくる。
僕は自分の心臓が早鐘を打ち始めていることに気がついた。
空調のきいた室内にいるのに、背中を汗が流れていく。
これほど大喜びするなんて思っていなかった。
ただ、玄関に花が飾られただけなのに。
それとも、もしかして復活祭っていうのは本当に……?
そんな、まさかそんなことあるはずない。
死者が蘇るなんてそんなこと……。
それでも早鐘は止まらない。
もしかして自分はとんでもないことをしてしまったのではないかと思い、顔を上げていることもできなくなった。
そしてうつむいた時、後ろから肩を叩かれて飛び上がるほどに驚いた。
振り向くとユウジくんが立っていて、人差し指を立てて唇に当てている。
『なにも言うな。誰にも言うな』
そんな威圧感がひしひしと伝わってきたのだった。
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