第48話
☆☆☆
『まだ油断してはいけないよ。死者は無理やり蘇らせられたことを、怒っているかもしれないからね』
神主さんからの忠告を僕は忘れていなかった。
東京のアパートに戻ってきた僕はまっさきにヒトミのための場所を作った。
本棚の一角にヒトミの写真を飾り、線香立てを起き、ヒトミの好きだった花を飾った。
簡易的な仏壇だ。
「ごめんなヒトミ」
僕は毎日その仏壇へ手を合わせることに決めた。
だって、どれだけ謝罪してもし足りない。
悪夢はきっと何度も蘇って僕の睡眠を妨げるだろう。
仕事でもミスが多くなり、上司からの当たりがきつくなるかもしれない。
それでもそれは全部自分のせいだと受け入れるしかないだろう。
逃げることは許されない。
僕がしたことは、絶対に許されないことなんだから。
ギュッとキツク目を閉じて、そして開く。
一瞬目の前にヒトミが立っていて、こちらへ向けて微笑んでいるように見えた。
けれどそれは僕が飾ったヒトミの写真で、ホッと胸をなでおろす。
「さて、買い物に出ないとな」
長く留守をしていたから、冷蔵庫の中は空っぽだ。
食欲はなくても少しは食べないとやっていけない。
でかける準備をして玄関へ向かった時、スマホがなりだした。
番号を確認し、慌てて電話にでる。
「はい」
『もしもし、ケイタくん?』
相手はユウジくんの親戚だ。
なにかがあったときのためにと、一応連絡先を交換しておいたのだ。
「そうです。どうかしましたか?」
相手の切羽詰まったような雰囲気を感じ取って僕は聞いた。
『ユウジを迎えに行ったんだけど、家にいないみたいなの』
「え? ちゃんと今日の約束だったんですよね?」
『そうよ。電話をしても出ないし、玄関の鍵もかかっているし。なにか聞いてない?』
嫌な予感が胸をよぎる。
神主さんが言っていた言葉が、また胸の中に蘇ってきた。
『今日の午後には迎えに行くって伝えていたのに……』
もうすでに外は暗くなっている。
こんな時間まで家に戻ってこないということはないだろう。
あの村には本当になにもない。
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