第27話 醜い眼鏡オークが現れた! 初登場その名もカトやん!
優樹と庭に出て来た。
5メートル位先にプラモデルの空箱を置き、優樹に向かって力強く声を掛ける。
俺「よ〜し優樹、今こそあの箱に描かれた敵に必殺技を繰り出し! 見事フェニックス シュートを会得するのじゃぁ〜!」
優樹「はい! 行くよ! フェニックス シュート! やぁー!」
ズバッ!
上段からの打ち下ろしで箱は見事に真っ二つになった…が、どう見てもアレはフェニックス シュートでは無いな。
アニメとポーズも何処か違うし、何より体を包み込む様な白い羽のエフェクトが無い。
俺「優樹! 的はいくらでもある、一回で出来ると思うな! マスターするまで何度でも何十回でもトライするのじゃ!」
優樹「うん! 分かったよ、将吾君! ボクは絶対にフェニックス シュートを自分の物にしてみせるよ!」
俺「そこは師匠じゃ! 師匠と呼べぃ!」
優樹「はい! 師匠!」
倉庫から壊れても良い、的になりそうな物を掻き集めて優樹の前に並べながら、優樹に向かって宣言にする。
俺「そうだ! どんどんガンガン行け! フェニックス シュートはお前の技であって、お前だけしか使えない、お前だけの必殺技なんだ! アニメの様に光の向こうに何かが見えてくるまで、ひたすら真っすぐ手を伸ばし続けるのじゃあ!」
飛んだり跳ねたり片手で突いたり、かなりな距離を取ったり俺と優樹は試行錯誤しながら特訓、特訓、猛特訓を続けた。
俺「まだまだぁー! ぶっ倒れるまでやるぞー! もう一度だぁ!」
優樹「うん! もう一度だ! もう一度行くよ!」
グラッ、ドテッ!
あれ? 右手に壁があるぞ? しかも景色が横になっている?
もしかして…また俺はMP切れで倒れたの…か? フェニックス シュート(仮)でもMPを消費するのか?
優樹…優樹はどうなった? 何とか目を動かすと…いた! すぐ近くに剣を持ったまま立ち尽くしている。
どうやら…無機質なフィギュアに戻っているよだな…大丈夫そう…か?
ーーーーーーーーーーー
俺「はっ!」
頭がぼーとする。
俺はいったい何をしていた…? 確か…スポ根で、フェニックスがシュートで…優樹が(仮)で……優樹! そうだ優樹はどこだ?
ふらつく頭を回すとすぐ右横に優樹がスリープ モードで立っていた、どこにも傷とかは無いようだ。
???「おっ! シバやん、ようやく目を覚ましましたね、危うく救急車呼んじゃう所でしたよ。」
声の方角を見上げるとそこには、かれこれ10年来のヲタク友達である[ カトやん ]が居た。
因みに10年以上の知り合いだが、職業も住所も年齢も知らない。
俺「うわっあー!、醜いメタボな眼鏡のオークが現れた! 優樹ぃ! 敵っ敵だ! 今すぐこの敵を3枚卸しにしてくれぇ。」
半分ジョークで言ったつもりだったが、倒れている間に魔力がチャージされたのか? 左手に魔導書[ 祖は左の手に ]が実現し優樹が俺の前に飛び出して剣を構えた!
優樹「将吾君を傷つけるのはボクが許さない! そこの豚さん、君の相手はボクだ!」
優樹はメタボな眼鏡オー…[ カトやん ]に一直線に突っ込んで行った。
カトやん「ひっくり返ってたシバやんをここま……えぇぇぁ?! 喋ったあぁ?! 動いたぁあぁ?! ほげぇ! あ痛ぁ! ひでぶぅ! あべしぃ! フジコふじこぉー!」
優樹の攻撃が2、3発[ カトやん ]に入ったが、これ位ならまあ大丈夫だろ。
むしろ優樹に攻撃されるなんてご褒美だ、ご褒美。
三十分後
カトやん「いや〜噂のダンジョンですかぁ〜? ゲットしたスキルでゴーレム マスターになったと…ほんでもって優っきーをゴーレムに…動画が送られて来た時はソッチ方面に行ったのかと思いましたが…シバやん貴方は天才か!?」
優樹をガン見しながらブヒブヒ言う醜い眼鏡オー…カトやん。
いや〜それ程でも…もっと褒めてくれ! 所でカトやん何でお前がここに居るんだ?
カトやん「シバやん、さては送ったメールまだ見て無いですね。
昨日送られて来た優っきーの動画、どうパソコン処理しても全体的に光量不足なんですよ。
セッティング ライトと高密度カメラお貸ししますんで、優っきーの勇姿を今一度! お願いいたしまするぅ〜。」
昨日、春奈が帰った後カトやんに優樹の戦闘動画を送ったが、もうチェックしたのか? しかもライトとカメラ貸してくれるとな、仕事が速いなカトやん。
ついでに送られて来たメール チェックを……ゲッ! 鷲尾代表から3件も来てやがっ…おりました。
鷲尾:おはよう柴崎君元気?
鷲尾:もう起きた?
鷲尾:出ろ!
ヤバイ! 本気でヤバイ! これ以上待たせると、本当に押し掛けて来るぞあの人!
とにかく土下座だ! 震えてなから全面降伏の謝罪メールを返した。
俺:誠に申し訳ありませんでした。
ちゃんと生きてます。
今、ドタバタやってますので、失礼します。
ふぅ、我らが鷲尾代表、普段は美人で有能で本当に頼れる上司なんだが、怒らせると地獄見るからなぁ。
時計を見ると正午を過ぎていた。
優樹の必殺技はまだマスターしていないが、そろそろダンジョンに行かないと[ 毎日ダンジョン ジェム3個 ガチャ チケ1枚 ]ゲット出来ないし、何より醜い眼鏡オークがブヒブヒ言出だしそうだ。
鷲尾代表には、後でもう一度フォロー入れとこう。
背向け地蔵 ダンジョン内
カトやん「うひょひょひょ〜! うっひょ〜!」
俺「カトやん、ロー アングルでは撮るなよ、原作は全年齢対象の少女漫画なんだからな。
それでさっきから声入ってねーか?」
カトやん「分かってますよーほほい。
原作をリスペクト出来ないヤツは、すぐにぶっ叩かれて炎上しますからね〜。
動画は戦闘シーンのみ使用しますから問題無いっすよー。」
左手にはセッティング ライト、右手には高密度カメラを持って優樹の周りをグルグル回りながら撮影するカトやん。
なんとも醜い絵面だ、やる気が削がれる。
昨日は綺麗になった従兄弟とダンジョンでチョットドギマギ! だったのに…なんで今日はハイテンションでメタボな眼鏡オークと一緒なんだよ。
だいたい、ここはリアル戦闘有りのダンジョンなんだぞ、そんなに不用意に前に出たら敵タンポポに…あっ!
敵タンポポが現れた。
メタボな眼鏡オークが敵タンポポを踏み潰した。
敵タンポポは赤い光の粒子になった。
メタボな眼鏡オークは最後まで敵タンポポに気が付事は無かった。
カトやん「うっひょ〜、ほっほ〜!」
俺「カトやん…、被写体に全力で取り組むその姿勢、俺はお前を尊敬するよ、でも次は優樹に戦わせてくれ。」
ズルッ、ズズッ
優樹「将吾君! 豚さん! ボクの後ろに下がって! 奥に何か居るよ!」
空気が急に冷えた気がした。
優樹が動く何かを捉えた。
此処はダンジョン、命のやり取りをする場所。
俺は突然の事に何も出来ず、ただそこに立っていただけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます