第18話 いよいよダンジョンへ…と、その前に。
バロン「我が主、もし良ければこの娘子のステータスを確認して見ぬか? どうやら新たな力を得ておるぞ。」
優樹のステータス? 新たな力?
カチャン、と左手に持っていた魔導書(祖は左の手に)の鍵が開き、ページがめくれ優樹の項目で止まった。
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天河 優樹
cv 金澤 華(new!)
HP…………39/39(+8up!)
防御力………25(+3up!)
腕力…………29(+2up!)
敏捷性………42(+6up!)
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ステータスが軒並み上昇している、キャラクターボイス(cv)に[ 金澤 華 ]さんが付いたからか?
特にHPと敏捷性の上昇が凄い、売れっ子声優様の神通力はゴーレムすらパワー アップさせてしまった。
優樹「うん、こうしてると解るんだよ…マスター将吾君やボクに声をくれた金澤さん、そしてもっともっと沢山の人達の色々な想いがボクの中に感じるんだ。
それが形となって、今ボクがここに立っているんだって。」
ささやかな胸に右手を当て、目を瞑り大切そうに言葉にする優樹。
うん、メチャクチャかわいいぞ!
俺「そうだよ優樹、漫画家のラップ スクラップさんを始め、デザイナーさん、アニメーターさん、声優さん、フィギュア造形師さん、色々な人達がお前に力を貸してくれているんだ。
そうだ! これからダンジョンに行こう! でも、もう少しだけ待ってくれ俺も装備を整えるから。」
ガラクタをまとめて置いてある物置部屋に行き、そこから埃のかぶった箱を何年かぶりに引っ張り出した。
俺「またこれを着る事になるとはなぁ…、体重は変わってないけど果たしてまだ着られるかな?」
3年前まで趣味だったバイク ツーリングに使っていたバイク用品一式。
仕事が忙しくなってバイクは手放したが、着る機会が無くなっても捨てるに捨てられず、箱に仕舞込んでいた品だ。
引っ張り出して取り敢えず着てみる。
過酷なツーリングに耐える防刃擦り切れ防止加工に加え肩パット、肘パット、胸と脊髄に対衝撃プロテクターが入ったジャケット。
膝パット入りパンツ、ナックル ガード付きグローブ、脛ガード付きブーツ、フェイス シールド付きジェット ヘルメット、全て白とライム グリーンに統一したカラーリング。
久しぶりに着てみたが、どうやらまだ何とか着れた、これで上下ジャージにスニーカーより防御力は上がったはずだ。
左手には魔導書を持つので、右手には工具箱にあったバールを持った。
やっぱりダンジョンアタックの初期装備にはバールが基本だよなぁ。
ヘルメットにヘッド ライトを付けてこれで完璧だ。
ついでにトイレも済ませておこう。
俺「よし! お待たせ、行こう優樹! バロン! いざダンジョンへ!」
優樹「うん! ダンジョンへ一緒に行こう! 将吾君!」
バロン「それでは参ろうか我が主、いざダンジョンへ。」
家から飛び出し裏山のダンジョンの入口まで、ゆるい登りのあぜ道をほんの50メートルほど歩いて行く。
優樹が目の前を飛び跳ねる様に駆け上がって行く。
見ていてとても格好良いのだが優樹の身長は38センチなので、俺が木の根に躓いて蹴ってしまったら大変だ。
俺「優樹、よかったら俺の肩に乗ってくれ…ないか?」
優樹「うん? わかったよ!」
優樹は俺の右膝、右腕をジャンプして右肩に乗り、片膝を付いてコチラを向いた。
お互いの顔が良く見える、優樹の顔はやる気に満ちた輝かんばかりの笑顔だ、俺もきっと同じ顔をしていると思いたい。
ダンジョンとなった祠に辿り着くと、入る前に入り口に置いてある何故かコチラに背中を向けたお地蔵さん(見た目は不動明王)に頭を下げる。
俺「俺達、これからダンジョンを探索してきます。
どうか何事も無く……では無く、出来れはアイテムがガッポリと採れたり、ダンジョンに出会いとか遭ったりしますように。」
顔を上げると、怖い顔をしたお地蔵さんの顔が…やっぱり少し怖かった。
確か爺ちゃんがこのお地蔵さんを置いたのは、20年以上前だったよな? 爺ちゃんもしかして、ダンジョンが出来る事を知っていたのか?
俺「もしかして、爺ちゃん未来が視える実でも食ったか?」
取り敢えずひょうきん者だったが謎だらけの爺ちゃんとお地蔵さんの話は後だ、此処から先はダンジョン。
未知の世界にして何が起こるか解らないファンタジーの領域だ。
頭を切り替るために、一度深呼吸をして右肩に顔を向ける。
まだまだ幼い顔立ちだが、戦士の顔をした優樹がそこに居た。
優樹「絶対! 将吾君はボクが守るからね!」
俺「ああ! よろしく頼むぞ優樹!」
俺達は気合と共に、ダンジョンの中へと一歩を踏み入れる。
入ってすぐ右に曲がる通路を進むと中は全体が薄っすらと光りを帯び、真っ直ぐな通路がかなり先まで伸びているのが見える。
一歩進むごとに湿気とは違う、重苦しい何かが身体に伸し掛かかって来る。
息遣いが荒くなる、心臓のバクバクする音がハッキリ聞こえて来る、右手に持っているバールに力が籠もる。
俺「ふう、これが…これがダンジョンか…。」
バロン「我が主、残念じゃがダンジョンに入って、まだ5歩しか進んでおらんぞ。」
バロンが何か言っているが、喧嘩もした事無いヤツが、小説の主人公の様にノリノリでダンジョン アタックなんて出来るか。
ガサッ! ガサガサ!
何かが動く音がする!
何かが俺の近くに居る!
目を凝らすと5メートル先に、ギザギザの葉っぱが沢山付いたタンポポみたいな草が、風も吹いて無いのにユラユラ揺れている!
昨日、俺の足に絡み付いた草、あれはやっぱりダンジョンのモンスターなのか?!
バロン「敵が出現したぞ我が主! 今こそ娘子に、いざ戦いの合図を!」
俺「敵だ優樹! お前の剣であいつを倒してくれ!」
優樹「分かった! 行くよ! 将吾君!」
優樹は肩から放たれた一本の矢の様に、敵に一直線に飛び出して行った。
頑張れ優樹! 俺はお前の勝利を信じて見守っているぞ!
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