第19話 優樹! 今こそその聖剣を奮え!
優樹「セイヤァー!」
優樹が上段に構えた[ 聖剣 トライフィード ]をタンポポに思いっきり叩きつけた。
凄いぞ優樹! アニメ第二話でクラリッサと模擬戦をしている姿そっくりだ。
なぜ俺はデジカメを忘れて来たのだろう、なぜ優樹の勇姿を映像に残せないんだろう。
バサッ スカッ シュルシュル
しかし優樹の一撃をタンポポはキザギザの葉でヒラリ受け流し、残りの葉で優樹に絡み付いて来た。
タンポポの身長は優樹と同じ位だが、横に伸びたギザギザの葉は倍以上の長さだ。
根っこが有るので動けない分、攻撃を受け流して絡みつき相手を傷つける、完全な受けの戦いのようだ。
バロン「我が主、何ならその右手に持っておるバールで、娘子の加勢に入っても良いのですぞ。」
俺「優樹は必ず勝つ! 必ずだ! 俺は優樹の勝利を信じて見守っている!」
優樹の勝利を俺は信じている、決して戦闘に参加して怪我したくないからでは無い。
でも少しもどかしい、優樹の攻撃が全て受け流され本体に中々当たらない。
何度かタンポポに絡みつかれ擦り傷を負う優樹、俺は戦い方に何か違和感を感じて思わず叫んだ。
俺「いっ! いかん! ダメだぁ! このままでは…このままでは18歳未満禁止の触手プレイになってしまう! 少女漫画原作なんだから、戦いは全年齢対象でなければダメなんだ。」
バロン「我が主よ、何か斜め上の事を言っておるようじゃが、娘子の戦い方が気に入らぬのであれば魔導書の中にスキル剣技Lv2がまだ残っておる、それを娘子に装着してはどうじゃな?」
俺「剣技を装着?! そっ、そうだ! それを早く!」
魔導書の優樹のページが開き、バロンが羽根ペンで文字を書き加えた。
ーーーーーーーーーーー
天河 優樹
cv 金澤 華
HP………36/39
防御力……25
腕力………29
敏捷性……42
[ ]剣技Lv2
ーーーーーーーーーーー
バロン「これにチェックを。」
バールを放り出し、バロンから受け取った羽根ペンで躊躇わずチェックを入れた。
優樹「セイヤァー!」
掛け声と共に優樹は身体に絡み付いた葉っぱを切り払い、距離を取って剣を構え直した。
おや? 何か構えが変わったか? なんとなく肩の力が抜けて、剣士らしくなったように見えるぞ。
スキル剣技Lv2のお陰か? 優樹は一度コチラに振り向くニコリと微笑んだ、その表情はカワイイ+格好良かった。
(ありがとう将吾君。)
俺には、優樹からそんな言葉が聞こえた気がした。
そんな優樹に俺は声を張上げる。
俺「優樹行けー! 頑張れー! 俺はお前を信じているぞー!」
今の俺には優樹の勝利を信じるしか出来ない! だから全力で応援するぞ!
優樹は今までのように一直線に飛び出さず、左右にフェイントを使い葉っぱに絡みつかれないよう動き、先程の大振りで叩きつける剣技から流れる様な剣技で次々と葉っぱを切り落として行く。
優樹「これで終わり! セイヤァー!」
優樹の雄叫びと共に、体重の乗った上段からの一撃が、タンポポを斜めに切り裂いた。
倒されたのか、タンポポは一瞬光り赤い粒子となって空に飛び散った。
俺「いやったー! やったぞ優樹ぃー! 勝っぞー! うひょー!」
やったぞ! 初勝利だ! 俺は優樹の格好良い勇姿を、タヒするまで忘れる事は無いだろう!
飛び散った光の粒子が魔導書に吸い込まれて来た、何かアイテムをゲットしたようだ。
???「ぷっ、くすくすくす…、」
その時、優樹の素晴らし勝利に浮かれていた俺は、どこからか聴こえる笑い声に全く気が付いていなかった。
俺「よし! ここから撤収しよう!」
優樹 バロン「「え〜!」」
俺「ダンジョンだろうが運転免許だろうが、勝利に気を良くしたまま何も考えず突き進むのが一番危険なんだ。
ダンジョンは動かない、だから次からが本当のダンジョン アタックだ、取り敢えず今の勝利で色々アイテムをゲットしたようだから、まずはそれの検証をしよう。
そして今回の戦いの反省、今後必要になる物資の調達、今日の勝利に浮かれる事無く次の戦いに備え、堅実に進んで行くぞ。」
バロン「我が主? 本音は何処に?」
俺「デジカメ忘れた。」
2人? にブーブー文句を言われながら、帰り際お地蔵さんに無事の報告をして家まで帰った。
部屋に入り持ち忘れたスマホをチェックすると[ カトやん ]からラインが来ていた。
カトやん: 優樹のコマ撮り動画観ました! ソッチ方向で来ましたか!
シバやんチューバーズUPやって無いっしょ、これ載せてOK? 収支はハーフで?
俺「チューバーズUP? まあ、美少女フィギュアのコマ撮り動画なんて何処でもやってるからなぁ〜。
収入のハーフなら…おけ…と、送信。」
思い返すと勝利の余韻に浮かれていたんだと思う。
これが後々、アニメ制作会社、フィギュア工房、原作漫画家等を巻き込んだ超どえらい事になろうとは…。
バロン「我が主、これが此度の戦いの戦利品一覧である。」
ーーーーーーーーーーー
…戦利品…
毎日ダンジョン…微小ジェムx3
ガチャチケx1
絡み草……………微小ジェムx3
スキルで戦闘……スキル シード(ゴーレム)x1
[ ]一括受け取り
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バロンが魔導書を広げて戦利品のページを見せてくれた。
まるでソシャゲのデイリー ミッションだな…スキル シード?…何か初めてのアイテムが出たな。
バロン「スキル シード、それは装着したスキルをレベルアップさせたり、新たなスキルを作り出す事が出来るアイテムなのである。
今回、後にゴーレムとあるゆえ、我が主の持つクリエイト ゴーレムに関係するスキルのみ、創造が可能であるようじゃな。」
スキルを創る? それは思い付きでやると失敗するヤツだな。
ここは将来性を考え、優樹達と相談してから決めよう。
俺「新たなスキルか? う〜ん? 優樹何か欲しいスキルとかってある?」
優樹「そうだね、ボクは出来ればこの防具の傷を直したいかな…」
優樹はその場でクルリと回った。
何気ない会話であるが、俺は今可愛良い優樹と会話を楽しんでいる、と思うとメチャクチャ感動した。
優樹を見ると、身体のあちこちに傷を負っている。
そう言えば、さっきの戦闘で、HPも減っていたな、ならばヒール係のスキルが第一候補か? では定番の必殺技のスキルは第2候補で…
バロン「我が主、どうやらソチラにお客人がいるようじゃな。」
客人? 俺は振り返り入口を見た。
???「…将吾兄ぃ、また豚汁作って持って来たんだけど…」
そこには居たのは、一人暮らしの俺に差し入れを持ってきてくれる6歳年下の従兄弟。
[ 柴崎 春奈 ]が、両手で鍋(豚汁)を持って立っていた。
春奈さん、頼むから楽しげに美少女フィギュアとお話しをしている俺を、ドン引きした目で見るのは辞めてください。
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