第17話 「こんにちは、将吾君!」 胸がキュン! と鳴った事を俺は忘れない。
「い〜く〜よ〜、イッチ、ニイー、サン、シー、GOー!」
何だ?…何かが鳴ってる…俺を呼んている…。
重い瞼を開けると仕事用パソコンが目の前にあった、右手には朝の8:00にモーニング コールをセットしておいたスマホ。
どうやら仕事をして寝落ちしたようだ。
頭が朦朧とする、身体が痛い、何か半年間位い寝ていた様な気がする。
とりあえずケトルでお湯を沸かし、珈琲と常備食のカロリー バーでエネルギーを入れないと頭も身体も動きそうにない。
俺「…え〜と、たしか…昨日…夜中に中村チーフから仕事で使うデータ不備の電話が来て…再チェックしたら俺の担当エリアじゃなくて…最後には鷲尾代表と夕飯に行ったとか行かないとか…ダラダラと……いったい何だったんだ?」
中村チーフ、話しが流れたが鷲尾代表と夕飯の事聞いたんだろうな。
我らが代表、鷲尾 美幸殿。
数年前、親会社である鷲尾家の小柄でロング ヘヤーのお嬢様が入社して来て俺が教育係に任命されたんだけど、最初の頃はちゃんと「先輩」と呼んでくれていたのに、半年で「あんた」呼ばわりになって、持前のバイタリティと能力で昇進に継ぐ昇進、数年で代表となり「柴崎君」と呼ばれる様になってそろそろ一年。
俺「考えて見ると、鷲尾代表とは随分長く一緒に仕事してるな。
いい加減、あの周りの人間をブン廻すパワフルさには慣れたが、ここ数年は激動の日々だったなぁ。」
いかなる時でも強気でガンガン行く人だから周りとのトラブルも多く、その度教育係の俺が頭を下げまくって、最後には彼女のマネージャー扱いされてたっけ。
俺「あれやそれやこんなで、28歳の誕生日……あっ! 思い出した!」
珈琲でカロリー バーを流し込み、隣のヲタク部屋に行く、そこにはスリープ モードになっているディスプレイと、その正面にポツンと立っている美少女フィギュアがいた。
どの角度から見ても優樹はやっぱり美少女だった、大事な事だから二回言う、やっぱり優樹は美少女だ!
俺「そうだよ! 28歳の誕生日に俺は、ダンジョンで魔法使いになったんだよ! 優樹ちょっと待たせたな! という事で魔導書召喚!」
俺の左手に魔導書[ 祖は左の手に ]が出現した。
飴色の革張りで真鍮の補強が付いた鍵付きの魔導書、これで殴られたらメッチャ痛そうな本だ。
バロン「ご機嫌いかがかな我が主、先日より随分と時間が過ぎた気がするが、心機一転これから前向きに生きようではないか。」
バロンもついでに出て来た、昨日ぶりに会うフット ワークの軽いタマゴ男爵なキャラクターだ。
俺「おはようバロン、今日はゴーレム日和だ、グッド モーニング優樹!」
魔力が優樹に流れて行く、くるりと頭を回し俺の方にかわいい顔を向けてくれた優樹、それでは今日はどんなポーズをしてもらおうか…?
優樹「やあ! こんにちは!」
俺「へっ?」
今、優樹が喋った? 上目遣いで俺を見上げて来た? アニメそのもの雰囲気で? メッチャかわいいぞ!
優樹「こんにちは、ボクは優樹、天河 優樹って言うんだよ。
それで貴方の名前は何て言うの?」
俺「おっ…俺は、その…柴崎 将吾と…名前を言いま…す。」
状況が理解出来ずにいたが、何とか自己紹介は出来たと思う。
優樹「将吾君?」
キュン!
嗚呼、人間感動するとキュン! て音が本当に胸から聞こえて来るんだなぁ。
声優さん、[ 金澤 華 ]さんの声で天河 優樹が今、俺の名前を呼んでくれちゃった! この喜びと感動を何と表現すれば良いのか!
バロン「これこれ娘子よ、此方の御方は我々のマスターであるぞよ。
もちっと敬意と礼節を持って接するべきであるな。」
俺「やかましい! この腐れ玉子が! 将吾君で良いんだ! 将吾君が良いんだ! 将吾君で決まりなんだ! 将吾君以外の呼び方なぞ絶対認めん!」
なんて事言いやがるんだこの腐った卵は、将吾君て呼ばれるのが最高で最強なんだ! これから俺はずっと将吾と呼ばれるぞ! でも…御主人様でも少し良いかも…。
優樹「うん! 分かったよ。
ところで将吾君、クラリッサやフォンは何処?」
チクリと何かが俺の胸を刺す、少女漫画原作、アニメ[ 異世界幻想伝 フレイリアーナ ]の純白の勇者、優樹と共に戦い助け合う4人の仲間。
[ クラリッサ メルベーレン フレイリアーナ ]
[ フォン リベリア ]
[ メーナ フォルテシモ ]
[ 戦場 紫鶴(いくさば しずる) ]
俺「クラリッサやフォンは…ゴメンまだ居ないんだ…」
優樹「メーナや紫鶴(しずる)も?」
俺「ゴメンな優樹、俺まだまだレベルが低くて全員を集められないんだ。
だけど約束する! これからダンジョンでガンガン レベル上げて、ジェム集めて絶対あと4人揃える! これは絶対の絶対だ!」
優樹「うん! 分かったよ将吾君! それでココはドコなの? フレイリアーナじゃないよね? それでどうして将吾君はそんなに身体が大きいの?」
優樹の問に俺はダンジョンの事、ゴーレムの事、アニメの事、優樹の事、説明が難しい所はバロンに色々フォローして貰いながら、今までの出来事を優樹に説明していった。
優樹「…う〜ん、そっかぁ…、ボクは…本当のボクじゃ無いんだね。」
ズキン!
下を向き寂しそうに言う優樹、どうしようも無い位胸が痛み、思わず言葉が口から出た。
俺「何言ってるんだよ! 俺にとって天河 優樹は、今目の前にいるお前なんだよ!
世界で誰か何と言おうと、お前は天河 優樹で! 天河 優樹はお前なんだ!
例え異世界に飛ばされたってそれは絶対違わない! 大事な事だからもう一度言うぞ! 俺にとって天河 優樹は今、目の前に居るお前なんだ!」
文法も表現も無茶苦茶だと思うが、お前は偽者なんかじゃ無いと、その気持ちをとにかく伝えたい。
優樹はキョトンとした表情をした後、少しうつむいて次に顔を上げた時には、花が咲いた様な笑顔がそこにあった。
やっぱり優樹は、笑顔がメッチャかわいいぞ!
優樹「ありがとう将吾君! ボクはボクのままで良いんだね! ボク、そのダンジョンで頑張るよ! そうすれば皆といつかきっと会えるんだね!」
俺「そうだ! 俺とお前で始めるんだ! そしてジェ厶貯めて、レベル上げて必ず5人揃えて勝利のポーズを決めるんだ! やるぞ優樹!」
優樹「うん! 頑張ろう将吾君!」
俺たちは、不滅の誓いを交わし、熱く盛り上がった! 絶対5人揃えるぞ!
バロン「ふむ! 我も微力ながら力になろうぞ。」
チョット忘れていたが、バロンも一緒に頑張ろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます