第30話 年下の美人上司はやっぱり強かった。
俺は今、死刑の宣告を受ける受刑者のような気分で自分の家の前に居る。
もうすぐ見た目は最高に良いが、中身はバーバリアンのフル スイングのような存在が襲来する。
もうここは初めから完全敗北で俺の必殺技、猛虎落地勢(傷を負った寅が体を丸め、傷を癒やす姿から編み出したと言われる技、別名 土下座)を炸裂させるしか無いようだ。
フッフフ…泣いて謝って土下座出来るヤツが真のタフガイで、最後まで生き残る奴なのだよ。
バロン「結局、戦いもせず最初から命乞いとは…我が主は真のヘタレであるな。」
何とでも言ってくれ! 俺は明日の事など気にする事無く、たった今この瞬間を生き抜く為、躊躇う事なく土下座を……車が来た!
黒塗りのベンツにスモーク シールド、運転手兼用心棒付の我らが鷲尾 美幸代表殿の襲来…では無く、我家に来られました。
鷲尾「柴崎君、土下座はいいから説明しなさい! 一体何があったの?」
うおっ! 俺の必殺の技、猛虎落地勢がいきなり封じられた! ならば次は何の必殺技を…
バロン「初にお目にかかります、私名をバロンと申します。
我が主、柴崎に成り代わりこのバロンがこれまでの経緯を全て余す事なく説明させて頂きます。」
バロンが助けを出してくれたぞ、鷲尾代表はかなり驚いている、ここは無駄に言い訳せずにバロンに頼んた方が理解し易いかも知れない。
30分後
鷲尾「ふ〜ん、ダンジョン…ねぇ、それって栃木県の日光に有るダンジョンと同じ物が柴崎君の土地に出来たって事?
そして柴崎君はその…冒険者? になって、ここ数日コソコソやっていたと。」
バロン「はい、我が主はこのダンジョンの最初の冒険者として、日々探索なされております。」
良いぞバロン! 俺では出来ない理路整然とした説明だ、見直したぜ、流石俺の出来るパートナーだ! でも、ヤッパリカトやんの妖精美少女マップルちゃんの方が良かったかな。
因みに、昨日鷲尾代表から電話があった後、カトやんはサッサと逃げた。
カトやん「色々大変そうですね、撮影した動画の編集作業も有りますので僕はこの辺で。」
ぬう、危険察知能力に長けるヤツだぜカトやん!
鷲尾「柴崎君、それじゃそのダンジョンに行くわよ。」
は? 今なんと? ダンジョン行くとですか? スーツ姿のその格好で? ハイ ヒールで山登りなさると? モンスターと戦闘バトルやっちゃうと?
俺「いやいや鷲尾代表、何言っているんですか? いま代表ビジネス スーツでスカートにハイ ヒール履いているじゃないですか。
ダンジョンはゴツゴツした足場にモンスターとの本気で戦闘あるんですよ、連れて行ける訳無いでしょ。」
ジャ! シュバ!
今、俺の左目すぐ横には鷲尾代表がハンドバッグから取り出した、三段伸縮式の特殊警棒(長さ50センチ)があった。
その武器、護身用に何時も持ち歩いていましたよね、入社して初めて挨拶されて見惚れてたら、今みたいに突きつけられたっけ。
鷲尾「柴崎君が行って大丈夫なら、私が行っても大丈夫でしょ。」
ニッコリ笑う鷲尾代表、とても美しい笑顔だが、その瞳は獲物を狙う鷲そのものであった。
ーーーーーーーーーーーーー
背向け地蔵 ダンジョン内
シュバ! パァッ!
鷲尾代表の振るう特殊警棒の一撃で光の粒子になるスライム、もう既にタンポポ3匹スライム2匹倒している、しかも全て一撃であった。
優樹「凄いよ! 美幸さん! 体の芯が全然ブレて無いよ!」
俺の右肩の優樹が、目をキラキラさせながら鷲尾代表を褒めている。
初めは俺を守る素振をしていたが、今では鷲尾代表に目が釘付けだ、同じ剣士として相通じる物があるのだろうか?
しかし鷲尾代表、特殊警棒を振り回す姿は本当に無駄が無く、舞っている様に美しいです、タイト スカート姿なのによくそんなに動けますね。
鷲尾「鷲尾家では毎年正月元旦に、刀と槍で寒稽古が当たり前だったのよ。
お祖父様なんか甲冑着て池を古式泳法で泳いでいたし、私も初日の出と共に振り袖着て薙刀を素振りしていたわ…高校行くまでそれが当たり前だと思っていたんだけどね。」
敵を倒しても気を緩める事無く周りを警戒する鷲尾代表。
喧嘩っ速いのは性格では無く、血筋でしたか…常在戦場を地で行く御家庭に生まれると貴方みたいに育つ訳ですね。
因みに、用心棒(名前は宮内さん)は、鷲尾代表の指示(2人が何か遭った場合に連絡)で車内に待機している。
鷲尾「さて、こんなものかしらね、戻りましょう柴崎君。」
やっとお帰りですか鷲尾代表? もうこんな危ない事は辞めて日常に戻りましょうよ、俺も今日は疲れました。
バロン「我が主、良い事に娘子が鷲尾殿の動作を学び、ステータスが上りましたぞ、後でご覧あれ。
そして娘子よ、鷲尾殿に感謝を。」
優樹のステータス上昇? なるほど…アニメでは剣術、体捌き、歩法、格闘術など無かったからな、優樹が鷲尾代表の動作を見てリアル戦闘の勉強になったと言う事か? それはとても嬉しいぞ。
優樹「うん! 鷲尾お姉さんのお陰でボクは、また1つ強くなれたよ。
これからボクは、まだまだ強くなって将吾君を護って戦っていくんだ!」
俺、優樹の言葉に感動して思わず涙が出そうになったよ。
俺も、もっとずっと頑張るから必ず後4人揃えような、そして5人で勝利のポーズを決めるんだ。
鷲尾「有難ね、小さい剣士さん。
これなら柴崎君を預けても大丈夫そうね、柴崎君、戻ったら話しがあるわ。」
はい、鷲尾代表の横でフワフワ浮いているスクロールを持って戻りますか。
…鷲尾代表の事だから、また凄いスキル引き当てるのだろーなぁ。
ーーーーーーーーーーーー
柴崎家 中庭
鷲尾「柴崎君! これから私の家族に合って貰うわよ。」
………はい? 鷲尾代表の御家族に俺が? 何故? そもそもお会いして何と申し上げれば? まさか…お嬢様を俺に下さい…とでも言えと?
…どうやら俺のマージナル(崖っぷち) オペレーションは、まだまだ続きがあるようだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます