第21話 春奈はやっぱり笑った顔が一番良い。

 ばたばたと俺と春奈は家に帰り着き、少し落ち着いた頃に話し始めた。


俺「それじゃあ、春奈のスリーサイ…では無く、ステータスは隠してスキルやアイテム欄だけを見せてくれ。」


 春奈の元に降りて来たスクロールは、開かないように握らせたのでまだ未開封だ。


春奈「…将吾兄ィ、開けたらビックリとか、おかしな物は出て来ないよね?」


 俺は魔導書[ 祖は左の手に ]とバロンを出して春奈に見せた。


俺「モチロンこーゆーおかしな物がビックリした感じで出てくるぞ。」


バロン「私は我が主、将吾様の持つ魔導書のサポートをさせていただいておりますバロンと申します。

 どうかお見知り置きを、美しき御婦人。」


 春奈は俺が出したバロンが紳士的な挨拶をしているのを見て、恐る恐るスクロールを開けてみた。

 ドロンと、白い煙が出て中から人形が飛び出て来た。


???「イーヒッヒッヒ、よぅ! 初めましてってヤツだな。

 俺っちの主はアンタかい? いやはや、これまた随分とまあ色々溜め込んでやがんなぁ。

 腹壊す前に、パーッと発散しちまった方が美容と健康ってヤツに良いぜ!」


 空色のジャケット、ピンクの喋ネクタイ、細身で背中にコウモリの羽を生やした赤いツンツン頭の、いかにも人をおちょくって喜ぶタイプのキャラ? が現れた。


 グシャ!


 春奈は無言でスクロールを握り潰した。 

 出て来た何かも一緒に消えた。

 顔を伏せ肩は小刻みに震えている、バロンの話しだと主人に最的確なキャラが出てくるんじゃ無いのか? なんでこんなズケズケ物言うヤツが出て来たんだ?

 

俺「あっ、あのさぁ春奈、とっても残念な事なんだけど…さっきのが春奈にとって最適なヤツらしくて、チェンジとかは出来ないんだって。

 俺の時もこんな感じだったからさ…優樹とはこれからいくらでも遊んで良いから、冒険者なんて危ない事は辞め…ない?」


 どうやらファーストコンタクトは最悪だったらしい。

 確かに春奈は口数が少なく、性格的に色々溜め込んでしまうタイプだ。

 優樹と楽しそうに話していて少しはストレス解消出来たかなぁと思っていたんだが…ちなみに、優樹は俺の魔力回復のためスリープモードにして、クリアケースに仕舞ってある。

 もう一度優樹を呼び出して相手してもらおうかな?


 ズイ!


 春奈がスクロールを持った手を俺の前に突き出して来た。

 見て良いと言う事だろうか? 恐る恐る受け取って開けてみる。

 

ーーーーーーーーーーー

…取得一覧…

二番目の冒険者……金宝箱x1

微小ジェムx3000

10連ガチャチケットx1

絡み草………………微小ジェムx3

毎日ダンジョン……微小ジェムx3


[ 一括受け取り ]

ーーーーーーーーーーー


俺「春奈、金宝箱とジェムと10連ガチャが出たぞ。

 受け取るのなら…ここをポチッとしてくれるか? それで…10連ガチャでも廻してみないか? 色々なアイテムとか出るから面白いぞ、開錠にはジェムが必要になるんだけど……」


 春奈は俺に言われるまま、無言でスクロールをタッチしている。

 赤ん坊の頃から知っているが、こんな落ち込んでいる時に、ただ側に居るだけしか出来ない自分が兎に角もどかしい。

 10連ガチャは9回目まで茶宝箱ばかりだったが、ラストに金宝箱を引き当てた!


俺「おお! 凄いぞ春奈! ガチャで金宝箱が出たぞ! 残りはノーマルか…それじゃジェムで開錠して見ような。」


ーーーーーーーーーーー

…所持品一覧…

微小ジェム……2679


…アイテム…

ポーションLv1x6


…アクティブ スキル…

剣技 投技 槍技 盾技


…パッシブスキル…

アイテム ドロップ率UP Lv1

眷属(白狐)Lv1

ーーーーーーーーーーー 


 金宝箱の中身は[ アイテム ドロップ率UP Lv1 ]と[ 眷属(白狐)Lv1 ]だった。


バロン「眷属とは常に付き従い主をお守りする者なり。

 こちら金宝箱より出たからには必ずや強き良き守護獣となられるであろう。」


俺「だそうだ、春奈さっきのと違って今度のはマシかもしれないぞ? 白狐で書いてあるから狐だろ? お前動物好きだったよな? 眷属なんだからエキノコックス症や抜け毛の心配なんかは無いんじゃないの…かな?」


 我ながら春奈を冒険者にしたいのかしたくないのか良く分からなくなって来たが、兎に角何か気晴らしになってくれれば良いや。

 

 春奈がスクロールを触るとすぐ目の間に光る物体が現れ、やがて白い子狐の姿となって春奈の両手の平に降りてきた。

 白く艶々としたとても美しい毛並み、クリクリッとした蒼い瞳。

 狐にしては丸っこい身体で、体長30センチ位だが同じ位尻尾が長く、しかも3尾もあった。

 

???「キュッ!」


春奈「か…かわいい!」


 産まれた小狐を春奈は優しく…無く力強く抱き締めた。

 動物好きは良いが、小狐がお前の胸に埋まってジタバタしているぞ。


春奈「う〜ん、君の名前は何にしようか? 白いから小雪? あっ、でもでも、大きくなったら小さいって名前も少し変かも?…なら小春も駄目だし…君は白くてとっても綺麗だから…雪……ノエル! うん! 君の名前はノエルでどうかな?」


ノエル「キュッキュッ!」


 どうやら名前を気に入ってくれたようだな。

 しかし本当に綺麗な毛並みだな、後で俺にもモフモフさせてください。


???「よう! 機嫌は治ったか? 気むずかし家のマスターを持つと、俺っちも気遣いってやつを覚えちまうぜ!」


 カブッ!


 ノエルが出て来た???を頭から噛み付いた。


???「ウキャー! 痛ってー! ちょっと待てぃ、霊体の俺っちに噛み付けるなんてお前どんだけ霊格高けーんだよ? 痛っ! 痛っ! ごめんなさい! コレから気を付けます。 

 ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

春奈「ぷっ、あはははっ」


 何かツボに入ったのか春奈が笑い出した。

 やっぱり春奈は笑ってる顔が一番良いと思う。

 何とも場が微笑ましい空気になったな、俺も釣られて笑いだしていた。





 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る