第24話 アニメ[ 異世界幻想伝 フレイリアーナ ]

第七話 [ 想いで貫け! フェニックス シュート! ]


前話からの続き


 5メートル近い身長の割にかなり素早い動きで優樹達に突進し、近くの木や岩を巻き込みながら腕をブンブン振り回し嵐の様な攻撃をしてくる老猿。


優樹「あの人強いよ! 皆、攻撃は受けずに躱わして!」


 優樹の言葉に全員回避行動を取る。

 

フォン「ワッフ! 紫鶴危ない!」


 老猿の攻撃を優樹達は躱そうとしたが、和服姿で草履を履いた紫鶴はジャングルでは思うような動きが出来ず、攻撃を受けそうになった所をフォンに抱えられて何とか脱出できた。


紫鶴「ふぉん殿! ありがとうございますなのです。」


 攻撃を躱された老猿は、首を廻しなから優樹達の位置を確かめようとした瞬間、目の前に黒い大鎌を振りかぶったメーナが飛び込んで来た!

 

メーナ「ドゴラちゃん! 分身お願い!」


 メーナの左の髪に普段は隠れている、頭にカラフルなハイビスカスの花を咲かせた魔法植物マンドゴラ[ ドゴラちゃん ]が、ハイビスカスの頭を振るとメーナが5人に分身した。

 老猿はいきなり増えたメーナに驚いて動きが一瞬止まったが、すぐ5人の真ん中に拳を振り上げた。


メーナ「ざ〜んねん! こっちだよ~!」


 ザシュ!


 殴られたメーナはフワッと消え、5人の一番右側のメーナが大鎌で老猿の腕を切りつけた。

 たが、切り傷を付けただけで切り落とすほどのダメージは与えられなかった。


メーナ「硬ったいな〜も〜!」


紫鶴「私がまず相手の動きを止めまする。

 五行正法! 水気による泥沼!」


 酒鬼族に伝わる呪符術[ 五行正方(火水土風木) ]を学んでいる紫鶴は、フォンに抱えられたまま、ささやかな胸から数枚の呪符を取り出し老猿の足元に放った。


 ずぼっ! どぶんっ!


 いきなり足元が泥沼に変わり両足が嵌ってしまった老猿、抜け出そうともがいている所に優樹、フォン、クラリッサ、メーナの攻撃が入る。


優樹「ハァ!」


クラリッサ「セイヤァ!」


フォン「ワッフ!」


メーナ「こんにゃろー!」 


 四方八方から優樹達に攻撃される老猿、しかし傷付けられるも致命的な一撃は受けておらず、紫鶴の作った泥沼から転げながら脱出して優樹達に再び向き直った。

 そんな戦いを少し離れた木の上から見ていたフェルドラ達。


フェルドラ「くそっ! あの老猿は本気でやっているのか?」


ティムト「フェルドラ姉ぇ、あの老猿は世界樹の門番であって、僕達や純白の勇者の敵ではないんだよ。

 世界樹の門を通して良い者か? 追い返すべき者か? それを見定めるのがあの老猿の役割さ。」


 ティムトは門番の老猿と優樹達の戦いを観ながらフェルドラと話す。


フェルドラ「たがティムト! あの老猿は我々を始めから潰しに来たではないか?」


ティムト「あはははっ! それはフェルドラ姉ぇがいつもの花嫁願望全開で、あの老猿に突っ掛かって行ったからじゃないか。

 己の欲望の為に門を通ろうとする者は拒まれて当然さ。

 でも…このままじゃ純白の勇者達にも門を通る事は出来ないかもね。

 純白の勇者として、もっともっと…強い星の輝きを見せないと。」

 

 ティムトの言葉どうり、優樹達と老猿と戦いは何方も決定打を撃つことが出来ず、膠着状態が続いていた。


老猿「どうした? 今代の純白の勇者よ、お前達の星の輝きはその程度か?

 お前達は滅びによる終焉を正す為にここまで来たのだろう?

 これからお前達の前に訪れる未来は、もっと険しくもっと厳しくもっと辛い事が訪れる。

 このままではお前達は時の流れに呑み込まれ只の星屑となるだけである。

 もっとだ! もっと己が想いを込めよ!

 想いこそが! 強い想いこそが力になり、この門をこじ開け己の求めし未来の道へと繋るのだ!」


 老猿はイタズラに暴れ回る事をやめ優樹達の前に立ち、鋭いが何処か温かみのある瞳で言葉を繋いだ。


老猿「さあ! 己の想いを貫こうとする者達。

 我に見せてみよ! 暗雲の空を切り裂くほどの星の輝きを! 深海を照らし出す想いの光を! 迫りくる混沌を吹き飛ばすほどの命の灯火を!」


 老猿は腰を落し両腕を広げ優樹達の全てを受け止めるポーズを取った。

 優樹達も今まで以上の、何か特別な一撃を放たなければ老猿を倒して世界樹の門の向こうに行くことは出来ないと解っている。

 たが、その一手が無い。


優樹「想いが力に…想いを貫く為に…貫く…どうしたら貫ける? ボクは…いったいどうしたら…?」


 優樹は右手に持った[ 聖剣 トライフィード ]を見る。 

 この聖剣を手にした時、リリアの最後の言葉を聞いた時。

 ふと、その時の記憶が蘇った。

 身体が凍り付いて行くのに国の民の事を想った少女、氷に閉じ込められるまで自分に微笑んでくれた少女。


リリア「優樹…ありがとう…これから沢山の幸せが…優樹の元に…届きます…ように…。」


 何かが! 確かに何かが優樹の身体を貫いた。


優樹「どうしたら貫ける…じゃなくて、貫けるだけの想いを込める…。

 皆! ボクに少しだけ時間を! ボク! 何かが、何かが見えそうな気がするんだ!」


 優樹は聖剣 トライフィードを両手に構え直し、少し顎を上げてゆっくり息を吸込み一度留め、ゆっくり履いた。

 老猿の正面に立ち、その巨体を見据える。


フォン「ワッフ! ワッフ! 分かったユーキ!」


クラリッサ「任せろ優樹! 指一本だってお前に触れさせはしない!」


メーナ「優っきー! やっちゃえー! あいつに凄いのぶちかましちゃえー!」


紫鶴「勇者殿! 時間は私達が作りますゆえ、その御力! 存分にお振り下され! 五行正方! 土気による護壁!」


 老猿の前に土壁が出来る、叩き壊そうと腕を振り上げた瞬間何も無い空間からメーナが飛び出し大鎌で斬りつけた。

 ドゴラちゃんの光の屈折魔法による姿隠しだ。


老猿「ごわぁ! ぶしゅるるぅ!」


 老猿はメーナの攻撃を喰らいつつも、紫鶴の創った土壁を何度も殴り続け、ついには大穴を開けた。

 

フォン「ワッフゥー!」


 首を出した老猿の顔に、フォンの投げた竜骨ブーメランが直撃した。

 それでも無理矢理飛び出した所に今度はクラリッサが立ち塞がる。


クラリッサ「まだまだぁ! ここは通しはしない! 我を守れエレナの聖盾ぇ!」


 正面からぶつかり合う老猿とエレナの聖盾を展開したクラリッサ、そこに駆け引きなどは無い、力と力の真っ向勝負!


優樹「…切り払うのでは無く…想いで貫く…突く!」


 優樹は一度バックジャンプして距離を取り、剣先を真っ直ぐ老猿に向け、ありったけの想いと力で飛翔した!

 どこらとも無く、白く光る羽が優樹を包み込むように集まって来る。


優樹「いくよ! フェニックス シュート!」


 光る羽を纏った優樹は、一本の矢となって一直線に老猿の額に向かい飛んで行った!

 

 


 

 


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る