第14話 アニメ [ 異世界幻想伝 フレイリアーナ ]
第一話 [ その手に聖剣を! ]
前話からの続き
暗い部屋の隅、その床から浮かび上がって来た黒い影は人の形を作り出し最後には女性の姿となった。
その出で立ちは、漆黒の肌、アスリートの如くとても引き締まった肉体に胸と腰に黒い布を巻き付け、編み上げのブーツだけの姿。
右手に身長と同じ長さの槍を持ち、左手には拳と同じ位の大きさの赤黒く光るゴツゴツした石を持っていた。
髪の毛は黒く、頭の上で編込み一本に纏め上げ背中まで垂らしている。
顔は目の部分に穴を開けた甲羅のような仮面を付け、そこから強い意志を秘めた赤い目が優樹を睨みつけていた。
???「そこの小娘! お前に問う? お前が伝説の中に出てくる純白の勇者か?」
優樹「あなたがリリアにこんな酷い事したの?」
優樹は質問には答えず、逆に強い口調で聞き返した。
???「酷い? 何を言うこれは慈悲である。
星見達が見た滅びによる終焉、などと呼ばれる未来がこれから訪れる。
その未来を全力で回避するために、我らは偉大なるグレイル様と共に立ち上がったのだ!」
優樹「滅びによる終焉?」
???「空は光もどどかぬ黒雲に覆われ、清らかな水も灰色の毒水となり、草木も動物たちも、生きとし生けるものは全て死に絶え、このアースルージュ大陸の全てが滅亡する、星見達が見た未来。
これが滅びによる終焉。
30年前の星見達から告げられた、あの日の出来事を我々は昨日の事のように覚えている。
長老たちの中には滅びを受け入れよと言う者がいるが、若い我々は座して滅びを待つなと到底出来ぬ!」
優樹「え?…30年前? それじゃ…おばさ…」
???「私はまだ若い!」
優樹「ごっ…ごめんなさい。」
???「私はまだピチピチしている! 朝はタロンの汁で肌を清め、昼はルクロアの森で身体を鍛え、夜はグドアルの香を纏い、偉大なる我らが族長グレイル様より、来たるべき夜のお誘いに何時でもお応え出来る様、この私フェルドラは常に自分を磨き続けている!」
フェルドラと名乗ったおば……お姉様は[ 純白の勇者 ]や[ 滅びによる終焉 ]などの事より族長グレイル様? からの夜のお誘いの方が明らかに重要のようだ。
でも[ 来たるべき ]と言う事は、まだ一度もそのお誘いが来てはいないのでは…?
フェルドラ「そして結ばれた暁には、右手に赤イズナの花を一輪持ち、世界樹の木漏れ日に祝福され、夫となる族長グレイル様に永遠の愛を誓う若き幼妻と私はなるのだ!」
左手の赤黒く光る石を胸の前で力強く握りしめ、強い意志と共に部屋全体に響き渡る声で、フェルドラは若き幼妻となる宣言した。
所で…[ 滅びによる終焉 ]の話は?
優樹「えぇ〜と、あの…さっき言ってた、滅びの何とかってのは?」
フェルドラ「子供は3人くらい…いや! グレイル様が望まれるなら5人でも10人でも生んでみせよう!」
だから[ 滅びによる終焉 ]の話しは何処に行った? フェルドラおばさ…
フェルドラ「私とグレイル様の輝かしき未来のため! お前たちはこのフェルドラが倒させてもらう!
赤光の魔石よ! あれ狂え赤き暴風!」
突き出した左手に持った石が、赤黒く光り、そこから赤い竜巻が突然沸き上がってきた。
優樹は持ち前の運動神経で竜巻を横に飛んでかわそうとしたが、視界の端に氷に閉ざされたリリアの姿をとらえてしまった。
優樹「リリア!」
勇樹は氷に閉じ込められたリリアの前に、両手を広げ立ち塞がった。
優樹「うわっ!」
激しい暴風が優樹を襲い、白い台座に体を叩きつけられた。
フェルドラ「アーハッハッハッのハ! 思い知ったか純白の勇者! いや唯の小娘! 私の初々しい若い幼妻となる未来を邪魔をする奴は、誰であろうとその全てを粉砕してやるのだ!」
気を失ったのか、優樹は白い台座の前に倒れ込んだ。
キィン…
フェルドラは高笑いをして気付かなかったが、剣の突刺さった白い台座から光りが溢れ、それはやがて小さな白い鳥となって空へと羽ばたいた。
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