第41話 フォン! いざダンジョンに……行けたら良いな。
優樹「あははははっ!」
フォン「ワッフ ワッフ!」
ヲタク部屋のディスプレイの前で、フォンと優樹が手を繋いでクルクル回りながら踊っている。
2人共にとても、本当に楽しそうで時折、軽やかにステップを入れてまるでアニメのワンシーンのようだ。
優樹は翼アーマーが本当に羽ばたいているように見えるし、フォンはフッサ フッサ尻尾が右に左にフッサ フッサ躍動していた。
少し離れてクラリッサが二人を見ている、その表情は自国の民を見るようなとても穏やかで、優しそうな顔をしていた。
俺は今、クリエイト ゴーレムを選んだ過去の自分を心から褒めてやりたい。
この胸に暖かく伝わる感動と、微笑ましく素晴らしい光景を俺は一生忘れる事は無いだろう。
そしてもう少し離れて、カメラ片手に感動の余りむせび泣くカトやんの姿が今までの感動を全て台無しにしている気がするが、それですら今なら許せてしまえるような気がする。
カトやん「本当に…本当に今までシバやんを見捨てないで良かった。
何度この色素薄くて早死しそうなコロコロ意見を変える奴を海に放り投げてやろうかと思った事か…。
でも僕は、とうとう…とうとうフォン フォンの躍動するその姿を…」
前言撤回、いつかこのブヒブヒ言っている脂肪肝で、早死しそうなメタボ男を茨城の山に捨てて来てやる。
色々突っ込み所はあるが、取り敢えずフォンは俺の相棒だからな俺の。
優樹「あっ! 将吾君! フォンが今ボク達の仲間になったよ! フォン! ほらこの人がボク達のマスター将吾君だよ。」
優樹が嬉しそうにフォンの手を掴んで俺の前にやって来る。
フォンは少しモジモジしながら上目遣いで俺を見ている、ここは一つマスターとして第一印象を良くする為に、ダンディーでスマートでスウィートな挨拶を…。
優樹「大丈夫だよフォン、将吾君は優しいから、でもあんまり強く無いんだ。
だからボク達で守ってあげようよ!」
優樹のあまりに的確な、見事なほど身も蓋もない説明に、俺は泣くべきか悲しむべきか?
フォン「ワッフ…初めまして…フォン……リベリア…です、ワッフ。」
小麦色のウエスタン ブーツ、ショート パンツにGジャンとベストのウエスタン スタイルに[ 竜骨 ブーメラン ]を背中に背負ったフォンは、少し緊張ぎみに挨拶してくれた。
とても可愛くて、初々しいぞ! 優樹と二人並んでいる姿に、更に好感度アップだ!
大塚 小百合さんのふんわりした声でワッフ ワッフ言われると俺も心がワッフ ワッフしてくるぞ。
俺「うん、これから宜しくなフォン。
でも優樹の言う通り俺、あんまりとゆーか全然強く無いんだ、でも優樹やクラリッサ、あともうすぐ仲間になるメーナと紫鶴達と頑張って、皆で戦えば何とか道は開けると思うんだ。
フレイリアーナの戦士5人を揃えるために戦って、5人揃って戦う姿が見たいだなんて、何か言ってる事が無茶苦茶な気もしないでは無いけど、優樹と約束したし、俺も5人揃った所を見たいんだ。
だからフォン、俺達と一緒に戦ってくれないか…な?」
何か最後はお願いになってしまったが、いくら俺のゴーレムと言っても強要は絶対にしたく無い。
フォン「……はい、フォンも…一生懸命頑張ります、将吾…さん。」
今度は俺の目をしっかり見つめはっきりと言葉にしたフォン。
うん、一緒に戦って5人揃ったら皆で笑おう! それでは、フォンのステータスを見てみようかな?
ーーーーーーーーーー
フォン リベリア
cv 大塚 小百合
HP………53/53
防御力……17
腕力………19
敏捷性……48
…パッシブ スキル…
索敵Lv1
………………………
なかなか極端な数値だな…敏捷性が高いのは解るが、HPがクラリッサより高いのは何でだろうか? 月狼族の獣人設定だからか?
まあ良い、フォンにはまだ戦う術が無いから、カトやんから貰った索敵で頑張って貰おう。
俺「それでは、3人目の仲間が出来た所でいざ祠のダンジョンに…」
バロン「お待ち下され我が主、先程の御尊父殿の映像で少々気になる事が御座いまして。」
バロンが話しかけてきた、さっきのじいちゃんの話? バロンもヨーコさんが誰か気になるのか?
バロン「いえ、先程の映像の最後で魔力の揺らぎと申しますか、強烈な圧を感じました。
画面には出ておられませんが、みちる様…ですか? そのお方の関わっている物が気になります。
どうか我が主に屋根裏を調べる事を、このバロンめが具申いたしまする。」
みちるばあちゃんの土産…か、たしか二人で世界中まわったと言っていたな、少し屋根裏を調べて見るか?
もし、じいちゃんだけの土産ならば禄でも無いものばっかりだからなぁ…スフィンクスの鼻とか、モアイ像の目玉だとか、昭和65年発行の十円玉だとか。
俺「皆でチョット屋根裏を見て来てくれないか? 何かありそうらしいんだ。」
優樹「はーい!」
クラリッサ「うむ、私も見て来よう。」
フォン「ワッフ! ワッフ!」
ヲタク部屋の天井板を押すと直ぐ動いた、隙間から優樹達が滑り込むように入るとすぐ何か見つけたようだ。
優樹「将吾君! 何かあったよ!すぐ持って行くね!」
優樹の元気な声と共に、油紙で包まれて紐で縛られた何かが出て来たが、埃まみれなので優樹達にそのまま庭まで持って来てもらった。
俺は左手の魔導書を理由に、カトやんに開けてもらう。
カトやん「シバやん何か悪巧みしてますね。」
イヤイヤカトやん、俺はほら、魔導書持っているから紐解けないし、その包にはばあちゃんの字で[ 封魔 ]とか書いてある呪符が付いてるし、開封したら呪われたり、爆発なんてしたら痛いし…。
嫌そうな顔をしながらカトやんが紐を解き油紙から出した物は………縦60センチ横40センチの楕円形、細い木の骨組みに白っぽい動物の皮を貼り付けた、正面には茶色で血走った目が2つ、三日月に反った牙だらけの口が描かれた。
ハッキリ言ってアフリカ旅行の土産にしか見えない[ 革の盾 ]だった。
バロン「こっ! これは良いものでありまするな!」
えっ? それマジですか?
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