第43話 優樹「将吾君! 行こうよ先へ!」
俺達はダンジョンの先へと進む。
決して焦らず驕らず警戒を怠らず(ほとんど索敵はフォン任せではあるが)一歩一歩、確実に前に進んで行く。
不意に俺の足が止まった、今まで一直線だったダンジョンの通路が初めて左に曲がっている!
フォン「ワッフ、敵いない。」
頭の上でフォンが狼耳をピコピコしながらアニメそのものなセリフを言って来た。
うん、今のフォンのリアクションの可愛さの感動は後回しに取っておけ、ここはダンジョン! 命のやり取りをする場所だ! 心を引き締めろ俺、優樹達を愛でて浮かれるのは帰ってからだ。
カトやん「フォン フォン……狼耳がピコ ピコで…狼尻尾がフッサ フッサで…何と言う可愛さ…僕は今、夢か幻でも見ているのだろうか?」
うん、もし俺が危なくなったら躊躇わずこの浮かれたメタボ男を囮に使おう。
警戒しながらカーブした道を少しづつ進む、道は大きく曲がりどうやらUターンしているようだ、後でカトやんに地図を見せてもらおう。
フォン「ワッフ! 敵いる!」
カーブの終わった辺りでスライム発見! 周囲に敵なし、左肩を前に出すとクラリッサが左肩からひらりと飛び降り、スライムに殴り掛かった、優樹は今回待機だ。
こうやって少しづつ意思疎通を測り俺達の連携度を上げて、いずれ[ 異世界幻想伝 フレイリアーナ ]の優樹達メンバー5人を揃え勝利のポーズを決めるんだ。
ドカッ! ビカーン!
クラリッサが二度の攻撃の末、スライムを倒した、クラリッサも少しづつ戦いに慣れてきたようだ。
赤いエフェクトが飛び跳ね光の粒子が俺の魔導書[ 祖は左の手に ]の中に入って来る。
やっぱりフォンに装着したスキル[ 索敵 ]は素晴らしい、敵に不意打ちされないだけでも心に余裕が出来るな。
フォン「ワッフ! 何かある!」
早速仕事をしてくれたなフォン、視線の先右側にダンジョン特有な、木製のボロボロでいかにも蹴破れと言わんばかりの扉があった。
いよいよダンジョンらしくなって来たな、どうする俺? 今日のテーマは盾の検証とフォンのスキル [ 索敵 ]のチェック、あとは3人の連携の確認だったよな、ミッションはコンプリートしたのだからここで引き返しても…。
優樹「将吾君! 行こうよ先へ!」
右肩の優樹が力強い声で、意志力強めの瞳で俺の背中を押す、クラリッサもフォンも同じように俺を見ていた。
俺「よし! 行こう! 皆気を引き締めて! 常に周りとの連携を考えてな!」
HPは減っていない、MPだってまだまだ残っている、ポーションもあるし、このシールドの性能も未知数だ! 大丈夫、折り返すにはまだ早い、俺には優樹達がいる!
恐る恐る壊れそうな扉を開けて中に入った。
フォン「ワッフ! ワッフ!」
フォンが慌ただしく騒ぎ出す、探すまでも無く目の前に一匹のゴブリン発見。
ただ何か可怪しい? 身体つきは変わらないが、ギャーギャー煩く喚かないし、いきなり襲って来る事も無い。
俺「あっ! 俺のバール!」
ゴブリンは右手に棍棒、左手に俺が昨日落としたバールを握っていた。
さてはゴブリン二刀流か? コイツとどう戦う? まずはディフェンスにクラリッサを行かせるか?
優樹「行くよ! 将吾君!」
優樹が勢い良く俺の右肩から飛び出して行った! そのままゴブリンを大上段からの袈裟斬りに…
ガキィッ! ドスン!
何ぃ? 優樹の斬撃をバールで受け止めて棍棒で胴体を打って来ただと? 優樹は剣技Lv3だぞ? それを防御して反撃までして来たのか?
優樹「うっ! 皆気をつけて! この敵強いよ!」
俺「全員出撃! 3人で周りを囲んで様子を見ながら空きを狙って攻撃! フォンは直ぐ逃げられる位置からゴブリンを挑発! 敵は手強いぞ! 3人のチーム ワークで戦ってくれ!」
優樹を助けるようにクラリッサとフォンが飛び出して二刀流ゴブリンと対峙した。
3人でゴブリンを囲む、多対一の戦いなのにゴブリンに焦りは見られない、自分からは仕掛けず交互に3人に視線を向けている。
優樹「はあっ!」
優樹が斬り込んだ! しかし、又バールで受け止められ棍棒で打たれようとしている。
クラリッサ「そこだっ!」
そこにクラリッサが撃ち込む! そこでも防御されてしまう。
フォン「ワッフ!」
フォンが攻撃フェイントを入れる! しかしゴブリンは全く反応をしなかった。
戦闘は優樹達が斬りかかり、ゴブリンが防御して打ち返す、そんな場面が何度か続いた。
でも何か可怪しい…明らかにゴブリンの動きが変だ? 何処か動きが機械的すぎる?
バロン「随分と単調な動きでありまするな…我が見るに多分あれは、何かディフェンスのスキルを使用していると思われまする。」
そうか! 剣豪なのではくスキルでディフェンスして、カウンターを返しているだけなのか。
しかしカラクリは理解したが、それを優樹たちは打ち破る事が出来ない。
何か…何か打開策は……優樹が俺を見ていた、とても力強い意志の目で俺に何かを伝えようとしていた!
俺「全員一度離れて! 次の合図でクラリッサ、フォンで同時に敵を攻撃してくれ、優樹は躊躇わずフェニックス シュートを使え!」
優樹の意志を感じて俺は叫んでいた!
優樹「うん! 行くよ将吾君! 行くよ皆!」
クラリッサ「任せろ優樹! 必ず敵の動きを止めてみせる!」
フォン「ワッフ ワッフ!」
ゴブリンは動かない、こちらの動きを見定めようとしているのか? だが、こちらのやる事は唯一つ!
俺「よし! 行けクラリッサ、フォン! ぶちかませ優樹ぃ! フェニックス シュートだ!」
俺は革の盾を投げ捨て右腕を真っ直ぐゴブリンに向けた!
クラリッサとフォンは同時にゴブリンに殴り掛かった!
優樹は俺の右肩に飛び乗り両手で聖剣を構えた!
優樹「行くよ! フェニックス シュート!」
右肩に強い衝撃が来ると同時に、白く光る羽が舞い散った!
クラリッサとフォンの攻撃を受け止めていたゴブリンは、フェニックス シュートをまともに受け思いっきり吹き飛んで動かなくなった、俺達の勝利だ!
俺「よっしゃー! 勝ったぞ皆ぁ! 俺達の勝利だ!」
喜び勇んで、皆に駆け寄ろうとした時、ゴブリンが白く光り、粒子が部屋中飛び散った!
白い光の粒子? 何だ、何が起こった?
バロン「これはフロア ボス、又は特別な敵を倒した時に起こる演出でありまする。
おそらくあの敵は、何か特殊個体( ユニーク エネミー )であったと考えられまするな。」
敵のいた場所を見ていると部屋中に飛び散った粒子が俺の魔導書とカトやんのスクロールに入って来た。
カトやん「おほっ! シバやん僕はどうやらレベル アップしたようです、これはすぐ帰って検証しませんか?」
落ちているバールを拾い上げベルトに差す、カトやんもレベル アップしたようだし今日はここまでにしよう。
勝利で喜び合っている3人を見ていると、何か数値的な経験値では無く、仲間と何かを成したような、何かを乗り越えたような…そんな気がした。
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