第10話 年下の美人上司とは距離感がわからない。

「い〜く〜よ〜、イッチ、ニイー、サン、シー、GOォー!」


 テレビアニメ[ 異世界幻想伝 フレイリアーナ ]のOPテーマ曲[ 未来を君と ]が聴こえる。

 ネットアニメTVか…? いや、この感じスマホから…か? スマホはドコだ…? アレ…? 身体が重い、頭が痛い、今何時だ……? 俺はいったい今まで何をして……?

 たしか…何かをやり遂げた満足感が胸にあるような……

 いや、それよりもスマホだ、相手は誰だ? おふくろか? それとも従兄弟の春菜か? とりあえずベッドの小物置きにあるスマホを手に取りの通話をポチッと………


鷲尾「柴崎君?! だいじょうぶ? 何かあった?」


俺「はい! 鷲尾代表、お疲れさまです。」


 思わず社会人的な挨拶が反射的にでて、その場で正座してしまった。

 一瞬で頭がクリアになる、頭のてっぺんから足のつま先まで雷に撃たれた気分だ。

 電話の相手は俺の人生で、絶対に敵に回してはいけない人物の一人。

 俺の会社の3年後輩であり、その持って生まれた血筋と才能で、あっという間に今も昇進しつづけている我らの美人上司。

 [ 鷲尾 美幸 ]代表様であった。

 

鷲尾「いつもすぐメール返してくれる柴崎君がいつまでたっても返してくれないから、流石に心配になって電話したのよ。

 身体は大丈夫? 何かトラブルでもあった?」


 どうやら俺を心配してくれているみたいだが、一体何と返すべきか?


俺「いえ…、体調は問題ないですし、トラブルでもないです。

 その…時間が出来たので思わず童心に還ったと言うか…大冒険に出たと言いますか……」


 まさか、いきなり裏庭の祠にダンジョンが出来ました。

 ついでに、美少女フィギュアをゴーレムにしました。

 ……なんて言えるはずがない。


鷲尾「ハア……全く男ってホントに……流石に心配したわよ!

 倒れてミイラにでもなっているんじゃないかって。

 柴崎君は一人暮らしなんだから、常に連絡は出来るようにしときなさいよね!」


俺「はい、申し訳ありませんでした、以降気を付けます。」


鷲尾「まー良いわ、今からソッチ行くから食事いくわよ!……あっ…チョット待って…」


 え?……今なんておっしゃりやがりましたか鷲尾代表?

 今からコッチ来る? 食事? 鷲尾代表は東京ですよね、ここ茨城なんですけど?

 ここまで電車で来るとしたら、2回は乗り換えが必要な場所なんですが?


鷲尾「……はい、何の用なの母さん? 明日は絶対休み入れるって……ハイ、すみません社長、それでご要件は?…え?……これから?……ダメよ今から私……チョット! 何でそうなって……いや、でも今日は……はい……はい…分かったわよ! 分かりました! 行きます、行けば良いんでしょ!……では、その時間までに……失礼します。」


 鷲尾代表って、スレンダーなその身体のドコに入るのってくらい、高い酒ガンガン飲むんだよなぁ…こんな田舎でドコ案内したら良いんだ?


鷲尾「ハァ……柴崎君、残念だけど仕事が入っちゃったわ。

 あのボンボンジュニアに予約差し込まれちゃったみたい。

 誕生日を二人で過ごそうと思っていたのにゴメンナサイね。

 今度ちゃんと時間作ってどっか行きましょ、それじゃね。」


俺「え、はい…お疲れ様です。」


 どうやら嵐は過ぎ去った…のか? いったい何だったんだ? わかってはいたが本当に嵐のような人だったな。

 二人でどっか? むかし貴方が後輩で入ってきて何度か飲みに付き合わされたが、必ず鷲尾家のボディガードが付いて来たよね、怖い目で睨まれて酒の味なんて分からなかったのですが。

 今回もあのボディガードが付いて来るのだろうか?

 スマホを見ると鷲尾代表から4件メールがあった、どうやら本当に心配させていたようだな、スミマセンでした。

 販売促進や広告メールを読み進めていると、知り合いからのメールが一つ来ていた。


俺「あれ? カトやんからメール来てる。」


 それは、かれこれ十年来のオタク友達(腐れ友達)からのメールだった。

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