第38話 明日への第一歩へ…なかなか踏み出せない今日このごろ。
???「グヒャア! ゲヒィ!」
なっ? 何だコイツは? いきなり襲って来やがって、身体が緑色だと? ぐっ! 棍棒なんか振り回して危ねーだろ…がっ!
俺は最初の一撃で転んだままだったので、両手に持ったバールで防御するのが精一杯だ。
???「ゲヒャア! ギャヒィ!」
くそ! こんな小学生位の奴に力負けすると…痛てっ! 腕に当って…。
ガッ! ガキッン!
カトやん「シ…シバやん!」
腕を殴られてバールを吹っ飛ばされた! おい…チョット待って…俺もう戦えないぞ…俺は……
???「ゲヒャアァアァー! 」
" 将吾君! ボクを! ボクを早く呼んで! "
俺は優樹の声が心の奥に聞こえた気がして思わず叫んだ。
俺「まっ、魔導書召喚! 優樹ぃ! クラリッサァー! 来てくれぇー!」
左手に魔導書が現れた瞬間、左右から優樹とクラリッサが飛び出して敵に切り掛かって行った。
優樹「将吾君から離れろぉーっ!」
クラリッサ「お前の相手は私だぁ!」
ガキッ! ズバッ!
クラリッサがシールドで攻撃を受け止めた! 優樹が腕ごと棍棒を切り落とした!
???「グヒィ?!」
敵がたじろいた隙を逃さず優樹は首筋に、クラリッサは胴体に必殺の一撃を打ち込んだ。
2人のコンビネーションが良かったのか、緑色の敵はアッサリと倒され赤い粒子となって魔導書に吸い込まれた。
優樹「将吾君! 大丈夫? 怪我して無い?」
クラリッサ「すまぬマスター! 御身を護ると誓ったばかりなのに!」
バロン「我が主! お怪我は御座らぬか?」
優樹達が側に来てくれたが、俺は感謝の言葉を伝える事も、立ち上がる事も出来ずに、ただ魔導書を両手に持って震えている事しか出来なくて…
何故か心臓の音がバクバク激しく鳴っていたのが気になった。
10分後 ダンジョン内
カトやん「シバやん大丈夫ですか? 申し訳ないです、僕が休憩なんて言ったばっかりに…。」
カトやんが顔を青くして近付いて来た、心なしか痩せてシャープになったような気がするぞ。
優樹とクラリッサに見守られつつ、俺は何とか身体を起こし深呼吸をする。
俺「……あれが…あれがジオO軍のザOか…?」
カトやん「緑色しか合って居ませんよシバやん、割と余裕ありますね。」
カトやんが、随分トーンが低い声で返してくる、ぬうっ! もっと何か面白いギャグをかませと言っているのか?
俺「そっ、そんな事無いぞ…あれがゴブリンだろ…だったらゴブリン、ゴフリンばっかり言っているスレイヤーさんや、女神官さんや、受付嬢さんや、牛飼娘さんや、妖精弓手さんなんかが居ても可怪しくないたろ…特に俺は牛飼娘さんが…」
カトやん「あ〜こりゃ駄目ですね、直ぐ帰りましょう。
そして暖かくして眠ってしまいうのが一番です。」
バロン「うむ! 先程の戦いで我が主はレベル アップしたようであるが、そのような話しは明日にでもするが宜しいかと。
今はまず、帰家して休息を取られるが良いかと具申いたしまする。
娘子達や、回りの警戒を怠らぬように。」
何だかイマイチ良く分からないが、優樹達に前と後ろを守られダンジョンを戻る俺達。
魔導書を両手で抱えるように歩いていたら途中2回転んだ。
プロテクターを着けていたので怪我はないが、お陰で自分を振り返る事が出来て少し落ち着いた。
どうやら俺はかなりテンパっていたらしい。
ーーーーーーーーーーー
柴崎家 玄関
カトやん「それじではシバやん、僕は車の中で今日の編集やってますんで、何があったら直ぐ呼んで下さい。」
カトやんは夕飯は食べに行かないのか?
カトやん「僕の車は車中泊仕様なので、車内に食料、水、寝袋、電源、パソコン、その他諸々積んでありますので、取り敢えずトイレだけ貸してくれればOKです。。
それでは今日はとにかくユックリ休んで、また明日会いましょう。
では、おやすみなさい。」
カトやんを見送った後、俺は重い身体を引きずる様にして、何とかベッドのある部屋まで辿り着いた。
回りを見渡すと、優樹達は俺の両肩には乗らず、左右を護ってくれていた。
う〜ん…今日はつくづく自分がヘタレである事が分かったなぁ、体力も心構えも咄嗟の判断も全然駄目だった。
まずは優樹達、特に初陣だったクラリッサに誤っておこう。
俺「今日は本当に有難うな…優樹、本当に助かったよ…クラリッサ、今日はお前の初陣だったのに、こんな事になって本当に御免な…。」
優樹「将吾君! ごめんね危ない目に合わせて…敵がすぐ近くに来てたのに…。」
クラリッサ「マスター私は貴方の守護者失格だ。」
2人共落ち込んでいる。
俺は何をどうすべきか、答えが出せないまま重い身体を布団とベッドの間に潜り込ませた。
ベッドの中でも魔導書を抱えて中々眠りに就けない俺。
もし、あの時ゴブリンが持っていたのが棍棒では無く剣だったら…棍棒では無く槍だったら…優樹達が間に合わなかったら…
そんな考えがグルグル頭の中を巡っている内に、いつの間にか俺は眠ってしまっていた。
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