第12話 超絶人気な声優様の名は……

俺「いいね! いいね! GOODでナイスなステータスだよ、とても強そーじゃん! これぞ主人公だよ!」


 ステータスを見ると俺より遥かに強かった、俺なんて腕力たったの15だよ、でもこの高さは素直に嬉しい。

 これから相棒になるのだから大切にしよう、なんたって原作漫画やアニメでは中学3年生だからな、下手に扱って反抗期にでもなったら大変だ。

 [ 聖剣トライフィード ]を天高く掲げたままの優樹を見つめ直す。

 何度見ても素晴らしい光景だ、これでコチラを見てニコッとしてくれたら120点なのだが……。

 ふと、思いついた事を[ バロン ]に言ってみる。


俺「バロンあのさ…、優樹の顔を笑ったり、怒ったり、口パクなんかして表情を出すなんて事…出来ないか…な?」


バロン「ふむ、また我が主よりのオーダーを頂いたな、娘子もやはり笑った顔が好いのであるか。

 我にお任せあれ、ではまず魔導書(祖は左の手に)のページ区分を細かく分けるのである。

 次に、魔導書と対になっている羽根ペンでこのようサラサラと………」


 バロンが魔導書[ 祖は左の手に ]に付属の羽根ペンで何かを書き始めた。


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…スキル一覧…

クリエイト ゴーレムLv1……MP12


[ ]顔に表情を付ける(喜怒哀楽)…………必要微小ジェム80

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バロン「ふむ、こんなものよな。

 さて我が主よ、この[ ]の中に了承のためのチェックをいれてくだされ、さすればこの娘子の笑顔が我が主に向けられるであろう。」 


 地獄の沙汰も金次第なのか? でもジェムがあれば色々出来るのは良いことだ。

 さっそくバロンに羽ペンを受け取り[ ]にチェックを入れる。   

 あと、他にも色々出来そうな事がありそうなのでそれも注文してみよう。


俺「それとさ、首や腕の関節や髪の毛なんかを、もっとこう…ナチュラルに見せる事は出来ないかな? 

 それに声を出せたら最高なんだけど、声の主、声優さんは[ 金澤 華 ]さん、て名前の人なんだが。」


 優樹の中の人、ウィスパー ボイスで超絶人気の声優様!…いや女神様である!


バロン「よし、ならばそれも以下ように!…では、サラサラサラ〜と。」


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…スキル一覧…

クリエイト ゴーレムLv1……MP12


喜怒哀楽


[ ]ナチュラル スキン……必要微小ジェム300

[ ]声を出す……必要微小ジェム100

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 バロンから受け取った羽ペンで次々にチェックを入れると優樹の身体全体が淡白く光り出し、一分位で収まった。

 見ると優樹の首周りや腕関節などのパーツの継ぎ目が綺麗に無くなり、髪の毛のポニー テールも自然に揺れている。


俺「すっげー! アニメそのものじゃん! いーよ! いーよ! 最高だよ!」


 思わず顔がニヤケてしまった、そこに居るのは本当に小人さんになった優樹そのものだ。

 さて、どうやったらアニメの様に喋ったり笑ったりしてくれるのだろうか?


バロン「前にも告げたが、この娘子はまだ生まれたばかり、何が怒りで何が悲しみであるのが、全くわかっておらぬ。

 いかに百獣の王とて子供の頃は親の狩りを観て育つもの、何か見本になる物はござらんか?」

 

 見本か? ここはやはりアニメを見せるのが良いのかな?

 優樹をベッドの上から持ち上げ、隣のヲタク部屋のゲーム デスクに立たせる。

 昔、仕事と趣味を一緒にしていたら鷲尾代表に見つかって、えらい怒られたので今は別々にしている。

 ディスプレイの電源を入れ、録画してある[ 異世界幻想伝 フレイリアーナ ]の第一話から再生する。


俺「今の所、第6話[ 5人目の仲間は鬼娘! ]までやってたよなぁ、原作漫画は確か…2巻の最初の話だったか?」


「いーくーよー、イッチ、ニー、サン、シー、GO!」

 

 画面横スピーカーからではなく、ベッドの上のスマホから曲が流れて来た。

 電話の呼び出しか? こんな時間に誰からだ? とりあえず相手を確認するか。

 優樹をその場に残し、俺は仕事部屋に戻った。


ーーーーーーーーーー

[ 天河 優樹 ]視点


自分はただ、そこに立っている。


自分を優樹と呼ぶ主は、今は側にいない。


自分の目の前には、動いている絵があり、声と音が聞こえて来る。


ふと、首を左に動かす。


そこには全身を写す鏡があって、剣を持った自分の姿が映っていた。


自分は首を戻す。


動く絵の中には優樹と呼ばれた自分に良く似た少女が居て、笑ったり、話したり、元気に駆け回ったりしていた。


静かに、ただ静かに、その自分と同じ名前と姿をした少女を、ただずっと見つめ続けた。








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