第28話 カトやん「デュフフフ、超素晴らしい映像が撮れました。」
優樹は両手で剣を構え、ずっと先に居るであろう相手を観る。
ズルッ、ズズッ!
何か引きずる音が聴こえる。
ようやく俺はダンジョンに遊びではなく戦いに来た事を思い出し、右手のバールと左手の魔導書[ 祖は左の手に ]を持ち直した。
ヘルメットに取り付けたヘッド ライトで前方の敵を照らす。
俺「あれはスライム…か?」
7メートル位先で動く直径50センチ位の丸い物体が見えた。
半透明の軟体生物、どうやらスライムの様だな。
一体だけか? 周りを照らしても何も見付からない、ならばアタックだ。
俺「優樹、新手だが敵は一匹だけのようだ、行ってやっつけてくれ!」
優樹「うん! ボク行ってくるよ!」
優樹は俺の肩から翔ぶように駆け出し、勢い良くスライムに切り付けた!
よし! ファースト アタックを取った! 格好良いぞ優樹!
優樹「セイ! ハァ! ヤァ!」
優樹は続けざまに斬り続けた。
でも何かおかしい? 優樹の攻撃は当たっている、しかし切った側からくっ付いてスライムにダメージらしき物は見られない。
優樹「うわぁっ!」
スライムから触手攻撃で優樹が傷ついてしまった! 左手のシールドが少し溶けた様だ。
スライムの攻撃は殴る様な物理ダメージでは無く、酸か何かの溶解係か?
俺「優樹ィ! いったん距離を取れ! リペアを使う、それから立て直してくれ!」
優樹「うん! わかった将吾君!」
俺「スキル! リペア ゴーレム!」
此方に下がってきた優樹が一瞬光り、シールドの傷が綺麗になった。
次にリペアが使えるのはクール タイムの3分後だな。
しかし、あのスライムは物理攻撃不可か? どう戦えばいい? どうしたらダメージを与えられる?
カトやん「う〜ん、スライムですか? どうやらあの真ん中に見える核を破壊しないと倒せないようですな〜。」
そっ、そうか? 俺も実はそうじゃないかなーと、頭の片隅で考えていた所だ。
俺「よし、カトやんチョット行って的になっ…気を引いてくれ! 似たような体型なんだから、もしかしたら仲間認定されるかもしれんぞ!」
カトやん「チョットォーシバやん! いま的って言いましたよね! 僕は生贄になんかならないですよ! だいたい攻撃されたら痛いじゃないですか! シバやんこそバール持ってるっしょ! それで戦えば良いじゃないですか!」
カトやん何を言っているんだ! 下手に反撃されて怪我でもしたら痛いじゃねーか!
バロン「醜い争いと言うべきか? 似た者同士と言うべきか…?」
スライムはズリズリ此方に近づいて来る、核を破壊すためには切るのでは駄目だ。
じゃあ何だ? 突くか? 突く…突く…フェニックス シュートか?
まだ(仮)だぞ、行けるか? 俺は左手の魔導書を見ながら少しだけ悩んだ。
バロン「我が主、あのアニメの娘子は技を放つ前に平坦な場所で助走を付けておりましたぞ、我が思うに技の発動には助走距離が必要かと?」
助走距離? 確かに庭でやった特訓は、38センチの優樹では地面がデコボコでスピードに乗れなかったのかもしれない。
どれくらいの距離があれは良いのか?
バロン「我が考えるに60センチ程の長さがあれば宜しいかと。」
60センチの平地かカタパルトが必要? 今からダンジョンを平らに耕すか? それとも一度撤退して60センチの長さのある物を…カタパルト?…60センチ?…そう言えば優樹は戦う時、俺の肩から飛び出して行ってるよな? 腕を伸ばせば長さは何とかなるか?
俺「優樹! 一度俺の右肩に乗ってくれ! フェニックス シュートを試したいんだ!」
優樹「わかった! フェニックス シュートを使うんだね!」
スライムの前に立ち塞がっていた優樹が、俺の右肩に飛び乗ってくる。
バールを捨て右手の指まで真っ直ぐスライムに向かって伸ばす、腕が下方向に下がってチョット角度か悪いか? 右膝を付いて高さを調整する、スライムとの距離は約3メートル。
俺「行けるか優樹?」
右肩の優樹を見る、返事は無いが直ぐ近くにいる優樹の瞳には、俺に対する信頼とヤル気に満ちていた。
ズルッ、ズズッ!
這い寄って来るスライムまで約2メートル、あと俺に出来る事は優樹を信じる事だけだ!
優樹の周りに白い羽が現れ[ 聖剣 トライフィード ]に集まって来る。
行けるぞ優樹! 今こそアニメのように、フェニックスをシュートするんだ!
優樹「…光の向こうに…手を伸ばし続けて…光の…行けるよ! フェニックス シュート!」
右肩にけっこう強い衝撃が来た。
いや! そんな事はどうでも良い、俺は今超間近で白い羽を纏った優樹の姿に目を奪われていた。
それは文字通り白く輝く一羽の鳥となってスライムを突き抜けて、そのまま空にヒラリと舞い上がった。
スライムは赤い光の粒子になり弾けとんだ、その中を白い羽と共にゆっくりと舞い降りる優樹。
その光景を俺は何と表現したら良いものか? 美しい…格好良い…アニメのようだ…何と伝えれば良い? 言葉に成らない思いを俺はどう言葉にしたら良いのだろう?
綺麗に着地した優樹と目があった、何か言葉を……
カトやん「うっひょぉ〜〜〜! 美しい〜! 格好良い〜! アニメのようだ〜〜〜! 優っきー最高ぉ〜、うっひょひょひょ〜〜い。」
優樹、この横でブヒブヒ言ってる眼鏡オークもついでに倒してくれ、そうすればダンジョンの肥やしにでもなるだろう。
カトやん「デュフフフ、いや〜超超超素晴らしい映像が撮れました!
絶対これバズりますよ! ミリオン行くんじゃないですか? 楽しみにして下さい。
所でシバやん? これ一体何ですか?」
カトやんの目の前に一枚のスクロールがフワフワ浮いていた。
そういえばカトやんもタンポポ倒していたな…。
全く気にせず煩悩全開で優樹に集中していたカトやん、そんなお前を俺は心から尊敬するよ。
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