第2話『恵方巻きパーティー』①

 さて、その翌日だが。


 れいもだが、裕司ゆうじも休みが被ったので……節分本番と言うこともあり、お昼頃までしっかり休んでから仲良く料理に必要な買い出しをしていると。



「「お?」」


「「あ」」



 スーパーで出会ったのは、大学からの友人である皐月さつきだった。先輩で同棲相手の智也ともやも休みなのか一緒にいた。



「ちょっとぶり〜」


「ほんと。しばらく会えなかったもんねー」


「ご飯の買い出し?」


「そ。恵方巻きとかの買い出し」



 家事は続けているようだが、凝ったものは作れないようだから出来たもので補うつもりなのだろう。


 これは……と、怜は裕司と顔を合わせて頷いた。



「ねえ、さっちゃん」


「なに?」


「家で節分しない?」


「え?」


「つーと?」


「俺らも手伝うんで、恵方巻きとか手作りしませんって意味」


「「おお!」」



 とくれば……恵方巻きに必要な材料と福豆……後片付けが大変なので、今回は東北より上だと多い落花生にすることにした。


 それらを四人で手分けして運んで、怜らの家に。



「お邪魔しまーす」


「相変わらず、綺麗に片付いているわね?」


「そうかな?」



 帰宅時間はバラバラが多いが、朝は同じなので洗濯はともかく……掃除は出来るだけ一緒にすることにしている。と言っても、ほとんどが掃除機をかけるのとクイックルでサッとホコリや汚れを取るくらい。


 ゴミの選別は、職業の関係で特に怜が詳しいのでささっと分別するだけだ。



「んじゃ、手洗って……米は炊いてあるから、怜やんと皐月ちゃんは寿司では定番の酢飯作りから」


「ほーい」


「労働力一番使うとこね……」



 とは言え、生魚の切り分けは裕司もだが、意外と手先が器用そうな智也に任せた方がいいだろう。


 とりあえず、怜らは買い出しの時に購入した寿司桶を綺麗に洗い……軽く水気を拭ったら、裕司に指示を出してもらいつつも市販のすし酢をかけ、ゆっくり丁寧に酢飯を作ることにした。


 しゃもじは怜、皐月は途中からうちわで扇ぐ係。


 最初から一気にうちわで冷ますと固くなるのが欠点らしく。



「んー」



 すし酢をかけただけで、一気に回転寿司であるような酢飯のような香りが立つ。



「……子供の頃は、にぎりはともかく。ちらしとかの酢飯苦手だったわ」


「わかるー。匂いもだけど、家庭で作るのってべちゃってしてるし」


「けど、これは固めだわね?」


「ゆーくん、どしてだっけ?」


「ちらしとかじゃなくて、ちゃんと寿司にするからー」


「あら。ちゃんと呼び名定着してるわね?」


「えへへ」



 とにかく、一気にかき混ぜるのではなく……掬ってはひっくり返すなどを何度も繰り返していくのだった。


 少しずつ、酢飯が重く感じてくれば……皐月の出番なので一気にうちわで扇いでもらう。数分経つと、表面が心なしか輝いているように見えた。

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