第2話『Aセット、津餃子』①

 そして……油鍋の中から、通常の餃子よりも裕司ゆうじの拳よりももう少し大きいカラッと揚がった茶色の餃子が出てきた。


 ひとつではなく、ふたつも。


 皿に載せてから、味噌炒めのような茶が強い野菜炒めを少し添えて……サラダには業務用のポテトサラダに千切りキャベツ。


 これに普通より少し多めの白米に、合わせ味噌の味噌汁……完璧なセットと言えよう。



「ほい、れいやん。Aセット」


「さすがはこもやん! 専門学校行ってるだけでなく、ここでも修業してるだけあるよ!!」


「バイトだけどなー? ほいほい、冷めないうちに食べて?」


「はーい!」



 怜の後に、ひとりふたりとスタッフがやってきたので……裕司の仕事の邪魔をしないように、怜はトレーを受け取ってから空いている席に座ることにした。


 出来立ての揚げ餃子こと津餃子……。先に食べたいが、怜は食生活が不規則気味だと自負しているので、先にサラダから食べることにした。


 テーブルに常備してあるドレッシング……ポテトサラダがあるから、ノンオイルドレッシングの和風仕立てを掴む。


 ノンオイルでもかけ過ぎはいけないから、と少しにして。



「いただきます」



 キャベツとポテトサラダを一緒に食べれば……業務用のポテトサラダなので、予想通りのチープな味付けだから濃い目だった。


 キャベツはおそらく、裕司が刻んだだろうが……プロに匹敵するくらいの細さとシャキシャキ感は堪らない。まだメインに全然到達していないのに……添え物でこの丁寧な仕事はさすがは裕司だと思ってしまう。


 その次は、味噌炒め。色は餃子に合わせてだからか、回鍋肉のように見える。肉はほんの少しある程度。これは付け合わせくらいなので、少量でちょうど良い。


 なのに、



「うんまい!」



 先にピーマンを食べたが、ほろ苦さにちょっと甘い味噌味が堪らない。隠し味が何かあるかもしれないが、料理に関してはほぼほぼ素人の怜にはさっぱりだ。


 これは一気に食べるのがもったいない、と……メインの津餃子に行く前にご飯をひと口。


 この回鍋肉のような炒め物がメインになるなら、おかわり必須だが……ここは自宅じゃなくて勤務先。自宅のように好き勝手におかわり出来る場所ではないのだ。


 それにちょっぴり寂しくなったが、怜はいよいよ津餃子に箸を伸ばすことにした。



(……ああ。重んもい!)



 普通のひと口サイズにはない重量感に、箸からも伝わってくる揚げたての感触。


 一応、スタッフのまかないなのでニンニクとニラはないだろうに……油で揚げた香りが、怜の胃袋を刺激してくる。先に付け合わせなどを食べたのに、まだ空腹がこの餃子を食べたいと訴えているような。


 醤油とかをかけたいところだが、この餃子はしっかりと味付けしてあるので……怜は他のスタッフもしていたように、大口で津餃子にかぶりついた。

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