第3話『色々ところてん料理』②
メインの冷麺風に仕立てた方も、実に美味しそうだった。
豚肉。
キムチ。
きゅうり。
それ以外は……ところてんが赤く染まっていた。ラー油のような色合いではなく、本当に赤い。
何を使ったのかは見ていないが、
失敗してもいいだろうけれど、それだけ怜に美味しいものを食べて欲しいと思ってくれるから……嬉しくないわけがない。
「冷麺って、ほとんど食べたことないなぁ?」
「普通は、糸こんにゃくくらいシコシコした麺を使うからねぇ?」
「こもやんのも、絶対美味しいよ!」
「絶対……ありがと」
赤ワインの方は半日近く冷蔵庫に入れておかなくてはいけないので、せっかくだからと冷麺風の方を食べることにした。
ところてんを箸で持ち上げても、やはり赤く……しかし、夏であるから嬉しい赤色だ。つるるん、と口に入れれば……ところてん特有の噛み応えに加え、しっかりとした辛味と少しの甘味が交互に来るのが堪らない。
調味料を絡めただけだろうに、こう言う冷やし中華とも違う麺料理……ところてんを何故嫌っていたのだろうか。春雨とも違う噛み応えが……好きになってからどんどん癖になっていく。
具材の豚肉やキムチとの組み合わせも抜群。
ふたり揃って、ところてんをそれぞれ1.5人前使ったのに……あっという間に平らげてしまった。
「……足りない」
「物足りんぜよ……」
キノコ王国に引き続き、寒天王国とまで言われる長野だからだろうか。美味し過ぎて、いくらでも食べられるのだ。
「こもやん……これ、賞味期限早いんだよね?」
「添加物の極力少ない保存液だからねぇ? ワインの食う前に……黒蜜いっちゃう?」
「行こう!!」
まだまだ若く、食べ盛りのふたりには……啓司が送ってくれたところてんの塊はあっという間に、と言う言葉通り。
少し満腹になる頃には、塊が残りわずかとなっていた。
「「食べた〜〜……!!」」
味変を可能な範囲で繰り広げたので、さすがのふたりでもほぼほぼ満腹になることが出来た。カロリーが控えめとは言うが食べ過ぎれば腹に溜まると言うものだ。
「え〜? 啓司さん達んとこ行ったくらい?」
「いや、じいちゃん……あん時以上に送ってきたと思う。怜やん、いい食べっぷりだったから」
「うん。めちゃくちゃ美味しかった」
「電話しとく」
スマホではあるが、LIMEなどがあまり使えないと言うのはご老人だから仕様がないのだ。SNS機能が浸透するようになって、まだ十年程度なのだから。
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