第4話『リベンジオムそば』
せっかく、
「…………いまいち」
「あ〜……まあ、店は店でも屋台だとなあ?」
コスパも色々考えているんだよ、と裕司は怜に教えてくれた。出来立てを提供出来るだけでも、客には好まれやすいが味が二の次なところもあるらしい。卵は流行りのふわふわなのに、実に残念に思ったのだ。
「これだったら、こもやんのお手製の方が断然に美味しい!」
「恐悦至極。んじゃ、食べ直しのために今日作るか? 俺ん家来る?」
「行くー!!」
とりあえずは、買ったものはお残ししないように食べて……食休みをしてから、夕飯前くらいの時間まで遊びに遊んだ。お陰で、お昼以上にぺこぺこな状態で怜の胃袋はスタンバイ出来た。
買い物については、どちらの部屋で過ごすにも折半するようにしている。お互いが食べるし、生活費などをバイトで稼いでも裕司だけに負担させたくないと怜が提案したからだ。
駅そばのスーパーで諸々の材料を購入し、裕司の部屋に着いたらまずは。
「では、怜やん頼んだ」
「お任せあれ!」
バイトとかの仕事はともかく、自宅だと汚部屋ほどではないにしてもぐちゃぐちゃになっている裕司の部屋を……怜が片づけるのだ。
これは、怜と付き合う前からも同じで。友達として遊びにきた時に、怜が言い出したのである。以来、付き合ってからも来た時は掃除するようになった。裕司がやろうにも、手の届く範囲に物があれば良い考え方なので……気づけばぐちゃぐちゃに。最低、煙草だけは換気扇の前で吸うようにしているらしく、キッチン周りは綺麗なのだ。
まずは、ゴミ袋をスタンバイ。オムそばを作っている裕司に聞きながらいるものといらないものを仕分けて……机の上にいるものを避難してから、掃除機で一気にほこりなどを吸いまくる。
その後には、怜が置いていった雑巾で水拭きと乾拭き。
最後には、怜のセンスでいる物を棚などに並べてから……ゴミ袋を廊下へ持って行く。女でも、パーティースタッフは専用のラックで瓶ビールを六本片手で持つくらいの重労働をする。多少重いゴミ袋でも、バイトで鍛えてきた怜の腕力なら大丈夫なのだ。
「ほーい、出来た」
「待ってました!!」
艶々、ふわとろが一目瞭然のオムそば。
見た目はずっしりしたオムライスにも見えるが、端に飛び出ている焼きそばが違うと主張している。
卵にはケチャップとマヨネーズのストライプ模様。洋風に見えて、鰹節が踊っている。怜が綺麗に片付けたひとり暮らし用のローテーブルに、裕司がふたり分置いてくれたので……もう待てなかった。
手を合わせてから、箸を手に取りいざ。
(……うわぁ!)
温水プールにところで食べた、一応、ふわふわの卵焼きとは違う。洋食屋で食べるようなふわとろの卵のヴェール。
それも口にしたいが、まずは焼きそばだと箸でつまみ上げ……勢いよく口に入れていく。
「ぼちぼちだな」
「めっちゃ美味しい!!」
裕司が自分なりに採点をつけていたが、怜はそれ以上に美味しいと主張した。
屋台よりも、コシが強くソースが絶妙に絡んだ麺。ぶつ切りではあるものの、シャキシャキとクタクタが混在している野菜は怜好みだ。屋台の方はキャベツももやしもクタクタだったのでイマイチだった。
そこに、鰹節を混ぜたケチャップ、マヨネーズをまとったふわとろの卵……焼きそばと食べれば、これ至高と言えよう。
焼きそばが濃いめなので、あまり味付けしていない卵焼きとの相性がいい。そこに、追いソース的なケチャップとマヨネーズも加わるとなお美味しい。屋台のはウスターソースだったからか、あの卵焼きには怜としては相性が悪かった。
「ん〜、でもまあ。怜やんが気に入ってくれたんなら、まかないで出せるか源さんに聞いてみるよ」
「絶対お願い! 出せたら、頼む!!」
「今日は入れなかったけど、天かすも入れると美味いんだよね? あとはイカ天」
「イカの天ぷら??」
「どっちかと言うと、駄菓子。スーパーでもそれが入った天かす売ってるぜよ?」
「う〜〜……めっちゃ食べたい!」
後日、食堂の料理長である源さんこと山越源二にオムそばは無事に採用され……具材には、裕司が推したイカ天入りの天かすが入り、従業員らを大いに喜ばせたのだった。
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