第3話 ナンパにも負けない

 フードコートは、さながら夏祭りのような雰囲気が強かった。


 価格もさながら、だが屋台の作りからして……テレビなどで最近はよく放送にある『ビアガーデン』のような。


 れいは今日を楽しみにしていたのだ。裕司ゆうじと温水プールで遊べることもだが、上司の葛木くずきの提案のためにも。


 さらなる、裕司のまかないのレパートリーを増やせられるかもしれないため。


 お酒は一応飲める年齢にはなったが、まだまだ遊ぶのでここは却下しておいた。裕司も飲めるが、同じ理由で我慢してくれている。



「何買おう、何買おう!!」


「焦るな、怜やん。軍資金はたんまりではないがそこそこ用意してあるぜよ?」


「もちろんだとも、こもやん。私も用意してきたぞ!」


「っかし、多いね?」


「そーそー、めっちゃ悩む」



 唐揚げ、フライドポテト、お好み焼きに焼きそば。


 ざるそばにざるうどん、牛串に豚串。


 スパゲッティも種類が豊富だった……あとは、夏向けに冷やし中華とか冷やしつけ麺などと。


 肉系もだが、炭水化物も多い。


 運動した後とは言え、食べ過ぎてはまた遊ぶとリバースする可能性も高い。怜の消化器官は、運動についてはあまり強くないのだ。



「んー、とりあえず。唐揚げとポテトは絶対だねぇ?」


「ね! あ、変わった焼きそばある!!」



 まったく知らないわけではないが、卵を巻いた焼きそば……通称オムそば。


 値段は八百円と少し高めだが、彼氏とシェアするのならちょうどいい大きさだ。作り置きは焼きそばもかと思いきや、切った野菜達がスタンバイしてあるだけだった。



「ん、いいね? オムそばひとつください」


「はいよ! ちょっと作るのに時間かかるんで、こっちの番号札持っててください! 呼ぶので」


「ども」



 レジャー施設だからか、食堂とかと違って待つ間に他も選べる逃して楽しい。手分けして、怜は唐揚げとポテトを買いに行くことにした。こちらはちょうど出来立てだったからか、すぐに買えたのだが。



「彼女、ひとり? 俺らと遊ばない??」



 などと、今時珍しいナンパに遭ったわけである。


 水着は上からパーカーを着ているが、半乾きなのでラインがしっかり見えてしまっている。怜は平均よりそこそこ大きいので、そう言う相手にはかっこうの獲物対象なのかもしれない。



「……あの。私彼氏いるので」



 誕生日プレゼントに贈ってもらった、指輪を見せてもナンパ野郎達は気にしないのかケラケラ笑っていた。



「ひとりだからいいじゃん。遊ぼうぜ」



 ガタイだけなら裕司よりも凄い男はそう言うが、同じ男性でも好きでもない相手には興味がない。


 なので、空いている手で思いっきりあっかんべーをしてやった。



「結構でぇす! 彼氏の方が何倍もカッコいいんでー!」


「そう言ってもらえてなにより」


「おや、こもやん」



 いつのまにか隣に居たので、怜は買ったものを潰さないようにして腕に抱きついた。


 すると、ナンパ野郎達は興が冷めたのか……さっさと次のターゲットを見つけに行った。意気地なしと言うか、ああいう性格ではちゃんと彼女が出来ても飽きられそうだと怜は思った。

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