第4話『和風スイカポンチ』

 苺鈴メイリンと一緒に、ビュッフェをたらふく楽しんだ後に待っていたのは。



「お待たせ致しました! フルーツポンチです!」



 裕司ゆうじが若いシェフと台車でゆっくり運んできた。冷やしたガラスの器に、スプーンも用意されているのはさすがの気配りと言えよう。



「炭酸入りと、普通のジュースとあるんでお好きな方を選んでください」



 若いシェフの方が普通のジュースらしいため、苺鈴はそちらの列に並んだ。まったくではないが、あまり炭酸が得意じゃないそうで。


 れいはこの夏に克服出来たところてん以外は、あまり苦手な食べ物がなかったから、もちろん裕司が配膳している方に並んだ。



「ほい、怜やん」


「うわぁ……」



 裕司から渡されたフルーツポンチは、やはりホテルのシェフ達と手がけただけあって、とても綺麗だった。


 お客様にお出しするようなものよりも、シンプルな器だが……爆ぜるようにふつふつと気泡が浮かんでくる炭酸水はスイカ色。


 スイカもくり抜いて、小さな球体に。他のフルーツはコンポートらしきものが淡く色づいたスイカ色の炭酸水に、たくさん浮いていた。白い球体はなんだろうか、と思ったが、後がつっかえているので裕司から受け取ったらすぐに苺鈴と合流した。



「綺麗デス」


「ねー? この白いのなんだろう?」


「シラタマ?」


「に見えるけど、ちょっと黄色いよね?」



 しかし、せっかくの冷え冷えフルーツポンチを食べないわけにはいかないので、スプーンですくって食べてみた。



「……オダンゴ?」


「だよね??」



 シラタマのような、弾力の強い皮の内側は……白餡だった。こし餡仕立てで食べやすいが、フルーツポンチに合うとは思わず。


 シュワ、ピリっと口の中に刺激を与えた後に……舌を休ませてくれるようで優しい味わいのスイカ味とよく合う。


 裕司の提案だったが、団子の工夫も彼なのだろうか。



「うんま!?」


「え、これ白玉だけじゃなくて団子? 面白いし美味しい!!」


「ひとり三つくらい? もっと食べたい!!」



 と、他のスタッフもだが紫藤しどうも言い出したので、食べ終えた怜は彼の後に続くように追いかけた。



「む? 眞島まとうちゃんもお代わりか!!」


「こもやんのフルーツポンチは渡さないです!!」


「ふははは!! 俺が平らげる!!」


「すいません、お代わり終わりです」



 と、ふざけていたら裕司がそう宣言したので、宴会スタッフにもだが他のスタッフからも笑われてしまった。



「こ、小森こもり君! 追加は!?」


「冷やす工程考えると、もう無理です」


「そ、そんな……こもやん!!」


「諦めたまえ、怜やん」



 と、終止符打たれたため、他の料理もスイカ割りも終わったと言うことで束の間の宴会も終わりとなった。



「うう〜〜……あのお団子、美味しかったのに!!」


「また作ってあげるぜよ?」


「絶対絶対!!」



 そうして、怜もだが裕司も会場の後片付けと、翌日以降のセッティングの道具搬入だけしてから帰ることにした。


 またの約束をしてから、怜は気合を入れて週明けの大学も頑張ることにした。まだ一年近く先だけれど、今二年生の怜にも就活が近づいているからだ。

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