第3話『オムレツ実演』①
それから……数日後。
「公式じゃ、ちゃんとあったけど」
「どこどこ? あ! あそこだ!」
宿泊客のひと組は、何かを探しているようだった。見つけた先には、このホテルでの朝食には珍しく……コックスーツ姿の従業員達が立っている簡易調理台があった。カセットコンロに、小ぶりのフライパンなどなど。
それらの道具の前に立っているのは……料理長の中尾と
「「おはようございます、いらっしゃいませ」」
中尾は、客の前に立つことが多いので営業スマイルは出来て当然だが、裕司まで出来るとは思わず。ちょっとだけ、悔しくなったが怜は自分が担当するお蕎麦とうどんコーナーで接客をしながら……そちらを観察することにした。
「おはようございます!」
「あ、あの! 今日からコックさんが実演でオムレツ作ってくれるって本当ですか!?」
「はい、その通りにございます。こちらの材料でご要望のオムレツを作らせていただきます」
仕事以外だと
「わ! いっぱい!!」
包む中身についてだが。
角切りトマト
角切りハム
角切りベーコン
刻んだパセリ
シュレッドしたチーズ
茹でたコーン
と言った具合に、ソースも少し多めに用意してある。
ケチャップ
ホワイトソース
ミートソース
デミグラスソース
高級ホテルばりに、中尾が吟味して用意したのだろうか。あとで食べられる怜も実は結構楽しみにしているのだ。
「どうぞ、お気に入りの材料をお選びください。ただ、ソース以外の材料は三つまでお願い致します」
裕司が接客サービスする機会が、まかない処以外だと初めて見るから。欲目を差し引いても……素敵な彼氏殿をお客に取られているような気分になった。しかし、今は仕事なので怜も全力で営業スマイルで対応している。
「じゃ、俺はチーズとハムとトマト」
「私はチーズとベーコンとパセリで」
「「かしこまりました」」
と、ふたつ注文が入ったので、中尾と裕司はそれぞれ目の前で作っていくのだったが。
早すぎて、料理初心者からまだまだ抜け出せない怜には、ちらっと見ただけではさっぱりわからなかった。
「「わぁ〜〜!!」」
「ソースはお好みのものを、お好きなだけおかけください」
と、裕司が客にそれぞれのオムレツのお皿を渡しながらそう告げたので。客は思い思いに小ぶりのレードルでかけていく。
その後へと続くように……オムレツ目当ての客が少しずつ増えていった。待たせる形になっても、スペースも限られているので今日は追加でコンロなどを増やすこともしない。
結果、朝食提供終了の10分前まで……オムレツ実演販売は大好評に終わることが出来たのだった。
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