第3話 忘れていたこと

 なので、二限の講義が終わった後に……皐月さつきに報告したのだ。



「………………よ〜〜や、っくね!!」


「…………ご心配おかけしました?」


「別にれいに呆れているわけじゃないわよ?」


「違うの??」



 学食では、ほかの生徒に聞かせることになるのが嫌なので、今日も空き教室で皐月とランチも兼ねて報告会をしたのだ。



小森こもりさんの意気地なしとか思ってたのよ? 怜は人気高いし、さっさとものにしないと横取りされるわよとか……そろそろ言おうとしたけど、杞憂で終わって良かったわ」


「人気? 私が??」


「自覚がないところが怜らしいわ。指輪つけ出してから、何人の馬鹿どもが阿鼻叫喚絵図になったか知らないんだもの」


「えー?」



 そんなことは全く知らないので、皐月に言っても軽く小突かれただけだった。あと、昨日までの至れり尽くせりを話すと……何故か、テーブルに突っ伏してしまう。



「……そんな絵に描いたような彼氏様がいるぅ?」


「…………失礼だけど、智也ともやん先輩は??」


「……まったくないわけじゃないけど。そこまで過保護はなかった!!」


「や、やっぱり……過保護かなあ?」


「この幸せものめ!!」


「えへー」



 それだけ、裕司ゆうじに大事にされていることが嬉しくて……少し惚気そうになった。顔で十分に惚気ていると皐月に言われたことで、お互いのクリスマスプレゼントはどうだったか聞かれたが……なかったことを思い出した。



「は? やることはやったのに、プレゼント無しぃ??」


「……ご飯作ってくれるってのが嬉しくて。バイトも立て込んでたし」


「ふーん。まあ、仕方ないちゃないけど……せっかくなんだし、手軽なものでもなんか買って渡したら? あんたは料理からっきしなんだし」


「……そうする」



 ただ、出来れば素敵なプレゼントを贈りたいとネットサーフィンをしていた時に……これだ!! と怜はすぐに購入ボタンを押して、配達される日を待った。



眞島まとうさん、お届け物です」



 怜のバイトもなく、裕司はバイトがある日に……部屋に届いたものを開封していく。詰めてあるものは結構多いが、やると決めたからには……怜は頑張ることにしたのだ。



「簡単ピザセット!!」



 粉から麺棒。オーブンはないのでフライパンで焼けるタイプの材料を宅配で用意して。


 裕司には、バイトの時に出来るだけ夕飯は少なめでと伝えてはある。ピザ以外はデリバリーを注文済みなので、怜は生地の発酵時間を考えて急いで取り掛かることにした。



「……こんな感じかなあ??」



 料理を本当にほとんどして来なかったので、同封されていたレシピの紙どおりに粉を練ってみたがいまいちよく分からず。もう一度、ネットの動画で見直してからこねこねと生地を練っていく。


 発酵時間は、冬場だと常温では膨らみにくいので……こたつの中に。これも動画で得た知識だ。

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