第2話 男ら集結



「……ふーん? よかったじゃん」



 クリスマス間近という時期になった頃。


 少し相談事があるからと、双子の兄である秀司しゅうじが自宅にやってきたのだ。身内とは言え、こちらに来るのはまだ片手で数えられる程度だった。


 呼び名について、まずは報告すると裕司ゆうじの表情が緩みきっていたのか……少しじと目で見られた。



「うん。やっと」


「苦節何年……ってやつか?」


「そうだね。そろそろ六年」


「……地味に長いな」


「……まあ」



 以前の『こもやん』が決して嫌なわけではなかった。


 だが、れいなりに呼び方を考えてくれたのだ。そこに、メアリーや真尋まひろが加わってくれていても、裕司としては心底嬉しい。



「その勢いじゃ、お前らの方が先に結婚しそうだな?」


「……それは」


「……無理か?」


「……貯金額が」


「あー……」



 周囲にはいつ結婚してもいいだろうと囃し立てられるが、実際の貯蓄を考えるといくらか難しいのだ。式はともかく、披露宴費用はバカにならない。その表舞台がある場所が勤務先だから、なおのこと現実的な問題がすぐに見えるのだ。


 だが、急ぐ必要はない……とも言い切れなくなってきた。



「あんまり遅いと、怜やんに負担かけるだろうし」


「女の体はなあ?」



 結婚もだが、妊娠適齢期をいくらか過ぎてしまっているのだ。高齢出産が増えているとは言え、身体への負担は男には考えられないくらい大きいと言われている。


 だから、裕司も年々考えてはいるのだ。どのタイミングが怜と結婚するのに一番いいのかを。


 そう考えていると、インターフォンが鳴ったので玄関に向かえば。



「……ども」


「はじめまして……」



 ふたりの男性が、なぜかフルーツ盛り合わせのバスケットを持っていたのだ。まったく知らないのだが、雰囲気にどこか懐かしさを感じた。



「えっと……君達は?」


眞島まとう芽依めい……です」


りんです」



 その名前には聞き覚えがあった。双子ではないが、年の少し離れたお互い顔が少し似ている弟二人がいることを。



「あ、はじめまして。小森こもり裕司です」


「……姉がいつもお世話になっています」


「お見舞い来ました」


「あ。君らの姉さん、出社してるけど」


「「……えぇ?」」



 いない事を告げると、すぐに弟二人は落胆したような表情になった。とは言え、帰すわけにもいかないので上がってもらうことにした。


 秀司とも当然初対面なので、お互いに挨拶を交わしてからリビングに座ってもらったが。


 一気に人数が増えたので、結構スペースがキツくなってしまった。



「……双子? 年子??」


「年子でーす」


「凛の方が一応兄貴」


「落ち着いてんのは、芽依くんの方?」


「ちょっと緊張……してるだけ、です」


「なー?」



 そして、だんだんと打ち解けていくにつれ。


 秀司の職業について二人が興味を持ち、最終的にはタメ口をきくくらい意気投合してしまっていた。

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