第2話 至れり尽くせり

 朝シャンまでしてくれた後……湯船から出すところとか、体を洗うところまできちんとしてくれて……お湯を吸ったバスタオルは重いだろうに、体を洗ってくれた後もしっかり巻いてまた湯船に入れてくれた。



「……こう言うことしたの、れいやんだけぜよ」



 裕司ゆうじは一旦、冷蔵庫に水を取りに行ってくると言って……戻ってきたら、怜にそう言ってくれた。そんなに、怜の顔に出ていたのだろうか。受け取った、水のコップがやけに冷たく感じた。



「……そうなのかい?」


「だから、昨夜も言ったっしょ? 俺結構ずぼらだったって」


「こもやんがねぇ?」


「怜やんだからぜよ? 君だから、ここまでしたい」


「……ども」



 怜だから……と言う言葉は狡い。


 嬉し過ぎて、顔が変にニヤケそうだ。冷たい水も嬉しくて、湯船で少し温まった後も……裕司に着替え諸々全部してもらえたのだ。


 また裕司のパジャマに着替えさせられた怜は、ベッドに逆戻り。怜が湯船に浸かっている間に、シーツも変えらえたのか綺麗に整っていた。



「俺も軽く浴びてくるから、ゆっくりしてて」


「ほいほーい」



 痛みはまだ伴うが、起きたてに比べればまだだいぶマシだった。


 今までの彼女達とは違う特権。


 怜だから、やってくれたリラクゼーションのような体験。


 わざわざ、怜のために……と何度も頭の中で反芻すると嬉しさ倍増だった。何かしてあげたくなったが、痛みは完全になくなったわけではないし……一部裂傷を受けたのだから大人しくしておいた方がいいらしいから……寝ることにした。


 今日はお互いバイトも何もないクリスマスの翌日なので……横になってぼんやりしていると……少しして、キッチンの方から包丁を使う音が聞こえてきた。



「おーい、怜やん?」



 裕司が風呂から戻ってきたにしては、何やら良い匂いがしてきた。



「う?」


「飯食お? もうほぼ昼だからブランチだけど」


「……寝てた?」


「ぐっすりいうか、うたた寝してる感じだったぜよ」



 だから、出来上がるまで起こさないようにしていたらしい。


 まだ万全ではないので、裕司に抱えて運んでもらい……テーブルの上には、ザ・洋食と言える朝ご飯が並んでいた。


 昨日の生春巻きはさすがにないが、ローストビーフなどはサラダのようにして器に盛り付けられれいたが。



「美味しそ!」


「ほとんど余り物だけど」


「そんなことないよ! いっただきまーす!!」


「動き難かったら、俺が食べさせようか?」


「そ……そこまでは大丈夫」



 本当に……怜には甘々過ぎる彼氏殿だ。


 ブランチを食べた後は、また睡眠を繰り返し……翌日もお互いが休みだったからと裕司の部屋で静養する形になり。


 週明けには万全な体調となったため、怜は大学へ元気よく出かけた。

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