第3話『一から裕司のモンブラン』①
栗拾いの翌日。
完全に不器用ではないが、裕司の作る料理の方が断然に美味しいからと、基本的に口出しなどもしない。
それに、裕司の部屋が綺麗になっていくのは怜にとっても気持ちがいいのだ。
「……ふぅ。こんなとこかな?」
今日も燃えるゴミがふたつ出来るくらいの重労働。
キッチンでは、まだ裕司がかちゃかちゃと音を立てながら調理をしていた。マロングラッセ自体は昨日帰ってきてから作っていたので、今はモンブランの部分らしい。
即日で出来るものかと思っていたグラッセは、つけ置きしないと渋皮もだが内側に味が浸透しないそうだ。料理についてはさっぱりな怜には、とにかく手間暇かけているとしかわからなかった。
「怜やん。昼飯にするぜよ?」
「おやおや? モンブラン作ってたのに、一緒に作っていたのかい??」
「おー。こっちも栗尽くし」
用意してくれたのは、栗ご飯だった。
綺麗な黄金色にも見える黄色が鮮やかで、栗の匂いが一気に鼻に到達するくらいの強烈な香り。メインはそれだが、焼き魚やお澄ましも用意してくれるとはさすがだ。
「栗ご飯だなんて、数えるくらいしか食べたことないよ!!」
実家でも出てきたことがほとんどない。
それを作れる裕司も凄いが、味は期待通りだと思っている。お互いに手を合わせてから、箸を持った。
「長野も栗の名産地だからなあ? ばあちゃんがオカンに送ってくるのもあってね?」
「それで、こもやんも覚えたの?」
「鬼皮剥きは、中学からだけど。でも、うんまいんだよなあ……、オカンの栗ご飯」
「こもやんの力作も、いざ!」
大ぶり小ぶりの栗をご飯と一緒に口に入れれば……おこわなのだろうか。もちもちした食感と絶妙な甘さに塩加減が堪らなかった。
「どうぜよ?」
顔に出ているだろうに、緩く微笑む裕司の問いに答えることにした。
「美味し〜! 栗がほくほくしてて、甘過ぎなくて……ご飯ももちもちしてる!!」
「もち米入れたからだね」
「栗ご飯ってもち米入れるものなの?」
「家によるかもだけど、俺んちは入れてた」
「この方が美味しい!!」
あと乗せの、赤飯ではないが胡麻塩を乗せるのも正解だった。他の料理も合わせつつ、ゆっくり味わうように食べていくと……幸せの満腹感にお腹が落ち着いていく。
「さぁて。俺もひと休みするかね?」
一緒に皿洗いしながら、裕司がそう言い出した。
「ほとんど終わった?」
「スポンジも時間置いた方がしっとりして美味いし、クリームもなあ? ペーストは準備出来たから、昼寝した後に仕上げするよ」
「じゃ、お昼寝だーい」
「おー」
セミダブルのベッドの上で、ふたりでくっついて寝るのは昨夜もしたが……いつ何時も幸せに感じられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます