第二部拾伍 怜の場合⑧

第1話 奮発するプレゼント①

 クリスマスも間近に迫ってきた。


 なので、いち社会人として一年目があと数ヶ月で迎える……眞島まとうれいは、悩みに悩んでいた。


 恋人で、ほぼほぼ将来の旦那になる予定である……同棲相手の小森こもり裕司ゆうじに、どんなクリスマスプレゼントを贈ろうか悩んでいるのだ。


 大学時代の、バイトでの資金は生活費と学費に充てていたので、好きなことにやりくりする費用は少なかった。だから、それなりに工夫していたが。


 だが今は、卒業したことで……貯蓄はしているものの、以前よりもはるかに使えるお金の額は増えていた。とは言っても、癖であまり使う機会がなかったが。


 最近だと、くだんの際どい下着セットくらいだった。



「んん〜〜……」



 けれども、社会人一年目のクリスマス。


 夏のボーナスもだが、冬のボーナスもきちんとあるホテル内の宴会サービスをメインとする会社なので……夏は大して使わなかったから、そのボーナスは結構あるのだ。なら、お互いの仕事が重なるクリスマスイブと本番を過ぎた辺りに……裕司の提案で、クリスマスパーティーをするのなら、その日に向けたプレゼントを渡したいと思ったのだ。



「……何にしよう」



 だが、突然の風邪と療養で少し期間が短くなってきたので……選ぶ期間も必然的に短くなってきた。そうなると、何をあげればいいのか悩むに悩むわけで。



「クリスマス……デスか?」



 同僚のワン苺鈴メイリンとグラス磨きをしている間に、相談してみることにした。



「ご飯とかはいいんだよ。こ……ゆーくんが準備してくれるって」


「小森さんらしいデス」



 まだ呼び名の定着は難しいが、徐々に慣らしていくようにはしている。



「時間もあんまりないし、何にしようかなって」


「んー? アクセサリー……は、指輪、してマスもんね?」


「そうなの」



 婚約指輪ではないが、ペアリングは相変わらずお互い身につけている。今も怜は業務中チェーンに通して身につけているのだ。それは裕司も同じだ。



「あ! じゃあ、キーケースとかは?」



 バイトの佐藤さとう優樹菜ゆきなもグラス磨きをしていたので、グラスを置いてから挙手してきた。



「「キーケース??」」


「同棲しているのであれば、ですよ。消耗品でもあるキーケース……しかも、革製品だったら立派なプレゼントです! あらかじめ出来ているのに、刻印だけお願いすれば間に合うと思いますよ?」


「おお!!」



 その発想はあまりなかった。


 いつも、家の鍵などはキーホルダーばかり付けていたのだが。


 車の購入も近いうちに考えていると言う裕司の提案も考慮すれば。


 怜のお金に余裕がある今なら、優樹菜の言うような革のキーケースはいいかもしれない。


 なので、休憩時間がちょうど彼女と同じだったので。


 まかない処で、今日選んだオムハヤシを食べながら……スマホで市内の雑貨店などを検索するのだった。

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