第2話 嬉しいけれど
妹のお怒りなどをひと通り話した時は……
「えへへ〜〜……おねえちゃんかあ」
一応弟はふたりいるのに、妹や姉がいないから憧れているのだろう。
そう思うと、可愛くなってつい頭を撫でてしまう。
「まあ。兄貴としては、いつまでも可愛い妹だけど」
「前に一回会った切りだけど。可愛かったよねぇ……」
「怜やんに可愛い言ってもらえて嬉しいぜよ」
「そりゃ可愛いとも〜〜」
にこにこで、にまにまと微笑んでいく様子の怜の方も可愛い。つい、軽くキスすると……怜は何故かきょとんとした表情になった。
「……可愛い、怜やんが悪いぜよ?」
「……今のでスイッチ入ったかね?」
「入りかけたけど……明日はお互い早いからなあ?」
「ねー?」
社会人になると、会社員とは違ってふたりとも休日に仕事があるのが当たり前な職種だ。特に、
特に、早朝出勤は下っ端故に多い。
宴会ではなく、朝食バイキング。メニューのほとんどは決まりきったものでも。用意と提供はなかなかに大変。
バイト時代の時とは違い、シフトは融通がきくようでそうでもないらしい。そこは正社員と学業優先のバイトとの差が出てしまうものだとか。
だから、お互いに起床が5時よりも前になる時は……夜遅くの活動は我慢しているわけだ。
「しかも、三日連続ってかー?」
「まあ、しゃあない。我慢我慢〜〜。お風呂で洗いっこで我慢しようや?」
「……いいのかい?」
「それくらい良いとも〜?」
重ねる回数を増やしたことで、年々我慢が利かなくなってはくるが……多少なりとも触れ合いがあるだけ良いことか。
とりあえず、時間も時間なので……さっそくしようと言うことになり。
ひとり暮らしの時よりは、多少広い家族用の浴室でお互いを洗いっこ。浴槽もふたりだといくらか狭いが、チャポンと浸かれるので裕司も大満足だった。
「「あ〜〜生き返る〜〜」」
魂の洗濯……とか何とか、先人はいい格言を残したものだ。本当に、体だけでなく心までも洗われていくようだった。
それが、大好きな恋人と一緒なら尚更。
「いつも思うのだけどね……こもやん」
少し経ってから、怜が裕司に質問。
このトーンだと、何かの提案かもしれないと察知した。
「ん?」
「朝食バイキングを、朝ご飯代わりに食べるようになってから思うのだよ……ビジネスホテルでもあのオムレツはあんまりだ」
「……あー」
もう少し、ランクが高いホテルの朝食バイキングなどはともかく。
実際にオープンキッチンなどで料理をしないメニューについては……業務用か作り置きをする場合がある。それを温め直したり、湯煎を利用したホットウォーマーで温度管理をするのだが。
裕司らが勤めているホテルでは、主に作り置きが多い。
「妥協しなくてはいけない部分があるのは致し方ない。だが……あれでは、お客がそこまでだと納得してしまうのだよ」
「……それ、意見箱に入れたの?」
「今日入れてきた。総支配人らが読むかはわかんないけど」
「まあね?」
真面目と言うか、自分にも客にも美味しいものを食べてもらいたい。
その思いが、怜の場合人一倍強いのだ。
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